WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第19話.10)

第19話・Ruby(ルビィ)と天野 茜(アマノ アカネ)

**** 19-10 ****


 八日目、2072年12月5日、月曜日。
 前日の試験飛行にてハードウェア的な機能や機構の確認が終了した事に因り、畑中達、試作工場からの出張組は、この日の午前中に荷物の整理を済ませ、残されていたトランスポーターで陸路を移動…と、通常なら、そんな流れになる所なのだが、今回は何故か畑中達には現地で二日間の休暇が与えられていたのだ。それは土、日と、本来のカレンダーでは休日である所を、フルタイムでの勤務に加えて残業までして働いていたのだから、当然、代休が与えられる訳(わけ)なのだ。徒(ただ)、それならば彼等本来の勤務地である試作工場へ戻ってから代休を取ればいいのに、と兵器開発部の面々は訝(いぶか)しがったのだが、結局、彼女達に納得の行く説明は無かったのである。
 一方で、ソフト部隊である安藤達には辛うじて午前半休が与えられただけで、午後からは第三格納庫での作業が予定されていた。それは、兵器開発部の活動として、この日からは ADF の戦闘シミュレーション実施が予定されていたからで、生徒達が授業を受けている間に日比野が中心となって、シミュレーションの準備が進められたのだ。
 そうして午後三時を過ぎると、緒美や茜達が続々と第三格納庫へとやって来るのである。月曜日は茜達、特課の生徒も普通課程の生徒達と同様に、七時限目の授業は無いのだ。これは、金曜日も同様である。

「ご苦労様です。 準備作業、ありがとうございます。」

 格納庫フロアへ降りて来た緒美が、準備を進めていた日比野達へ声を掛けた。日比野は振り向き、声を返す。

「授業、お疲れ様。 相変わらず、皆(みんな)、真面目だよね~。授業終わって、真っ直ぐ、こっち来たの?」

 一(ひと)笑いして、直美が答えるのだ。

「あはは、三年生が遅れて来ると、示しが付かないじゃないですか。」

「日比野先輩、Ruby と Emerald の準備は、どうです?」

 緒美の問い掛けに、日比野が答える。

「出来てるよー。事前のチェックで、問題無し。何時(いつ)でも始められるよ。」

 そこに、階段を降りて来た樹里が、声を掛けて来る。

「お疲れ様でーす。」

「ああ、樹里ちゃん。 コンソールのバージョン、新しくなってるから、一応、説明しておこうかー。」

 日比野が然(そ)う声を返すので、樹里は駆け足でコンソールへと向かうのだ。

「はい、お願いします。」

 樹里の後ろに、維月とクラウディアが続く。
 一方では直美が、緒美に声を掛けるのだ。

「それじゃ、わたしはA号機の立ち上げ、やっておこうか。」

 それに緒美が答える前に、樹里達と一緒に階段を降りて来た瑠菜が、声を上げてA号機のメンテナンス・リグへと駆けて行く。

「新島先輩、わたし達がやっておきまーす。」

 そんな瑠菜の後ろを、佳奈が追い掛けて行くのだ。
 直美は、ちょっと苦笑いで、瑠菜達に声を返すのである。

「ああ、瑠菜、古寺、それじゃお願い。」

 そんな様子を微笑ましく眺(なが)めつつ、安藤が緒美に言う。

「それじゃ、あとは天野さん待ちね。」

 それには恵が、緒美の後方から答えるのである。

「天野さんなら、今、インナー・スーツに着替え中ですから、直(じき)に来ますよ。因(ちな)みに、ボードレールさんは、着替えの手伝いを。」

 それを聞いた風間が、呆(あき)れた様に言うのだ。

「何だ、もう皆(みんな)、揃(そろ)ってんじゃん。」

「ホント、皆(みんな)、真面目だよね~。」

 安藤は苦笑いで、そう言って笑ったのだった。
 そんな安藤に、直美が問い掛ける。

「そう言えば、畑中先輩達は、どうされてるんです?今日。」

「ああ、お昼前に皆(みんな)で出掛けたよね。大塚さんと新田さんに、近場の観光地、案内するって。」

 畑中と、その婚約者である倉森は、ここが地元と言う訳(わけ)ではないのだが、二人共に天神ヶ﨑高校の卒業生なので土地勘は有るのだ。
 そんな話を聞いて、恵が呆(あき)れた様に言うのである。

「折角の休日なんだから、二人っ切りにしてあげればいいのに。」

 その発言には、風間がフォローを入れるのだ。

「いや、大塚さんも新田さんも遠慮してたんだよ? お邪魔はしたくないから、二人で出掛けて来なって。」

「そうそう、でも倉森さんが大勢の方が楽しいから、ってね。まあ、お互いに気を遣ってたんだろうけど。」

「こう言う場合、どっちが正解なんですかね?」

 真面目に安藤に問い掛ける風間に、安藤は苦笑いで答える。

「知らない。ケース・バイ・ケースでしょ?」

 そこで樹里達にコンソールの説明をしていた日比野が、急に参加して来るのだ。

「それで、結局、飯田部長も参加したんでしょ? そのツアー。」

「え、そうなの?」

 安藤と風間は、飯田部長の動向までは把握していなかったらしい。

「うん、今度、奥様を連れて旅行に来たいって。温泉とかも有るらしいしさ。」

 日比野の説明に、安藤は「ああー。」と納得した様子で声を上げたのである。それを受けて、恵が尋(たず)ねるのだ。

「何ですか?『ああー』って、安藤さん。」

「ん? いや、飯田部長らしいなあ、って。皆(みんな)は知らなくて当然だと思うけど、飯田部長が愛妻家なのは、社内では有名なのよ。」

 そう答えて、安藤は微笑むのだ。一方で答えを聞いた恵は、一度、大きく頷(うなず)いて言う。

「成る程、そう言う事ですか。」

 続いて、日比野がニタリ顔でネタを追加するのだ。

「だから、秘書には男性の蒲田さんを指名してるって話だよね?」

「その噂の真偽の程は、定かじゃないから、日比野さん。」

 苦笑いで軌道修正を図る、安藤である。
 それに対して感心した様に、直美が発言するのだ。

「へえ~…って事は、女性の秘書さんも居るんですか?」

 そんな直美の所感には、風間がニヤリと笑って応える。

「居るよー、本社の秘書課には、綺麗所が揃(そろ)ってるよー。」

「あはは、風間さん、言い方ー。」

 日比野は笑って突っ込むのだが、安藤は風間の後頭部をピシャリと叩(はた)くのだ。

「下品なのよ、言い方が。」

 一方で恵は不思議そうに、直美に尋(たず)ねる。

「秘書って言ったら、女性のイメージじゃない?普通。」

「ああ、うん。ドラマとか映画じゃ、そうなんだけど。天野重工だと男性の秘書さんしか、見てないからさ。理事長の秘書の加納さんも、あの通りの『オジサン』じゃない。だから天野重工の秘書さんって、男性ばっかりな気が…。」

「あはは、加納さんの場合は、理事長の専属パイロット兼、用心棒だそうだから、ちょっと事情が特殊でしょ?」

 笑って言葉を返す恵に、少し驚いて安藤が聞き返すのだ。

「何、パイロットの件は兎も角、用心棒って?」

「え? 以前、立花先生から、そう聞いた覚えがありますけど…。」

 少し戸惑って答える恵に、直美が付け加える様に言う。

「確かに、加納さんって元は防衛軍の人で、ブリジットの話だと腕も立つらしいしねー。」

「へえ~、人は見掛けに依らないって、本当なのね。」

 感心気(げ)に、日比野は然(そ)う所感を述べるのだった。

「蒲田さんの場合、ボディガードって線は無さそうですよね。」

 風間が、そんな事を言い出すので、苦笑いで安藤が言葉を返すのである。

「会長と違って、あの飯田部長にボディガードは、要らないんじゃない?」

「あはは、学生時代は社長と一緒にラグビーの選手だったとか、柔道だか空手だかは今でもやってるって話だしね。」

 続いて日比野が、飯田部長に就いての怪し気(げ)な情報を開示するのだ。それを聞いて驚いたのは、風間である。

「ええっ、飯田部長って、そんな体育会系の人だったんですか?」

「そんなの、あの体格を見れば察しが付くでしょ。」

 そう言って安藤は笑うのだった。
 そんな話をしていると、インナー・スーツに着替えた茜と、それを手伝っていたブリジットが、格納庫フロアへと降りて来るのだ。

「お待たせしましたー。もう、準備出来てるんですか?」

「ああ、天野さん。出来てるよー、直ぐに始めちゃう?」

 日比野に訊(き)かれて、茜は緒美に確認するのだ。

「大丈夫ですよね?部長。」

「天野さんが良ければ。」

「それじゃ、始めちゃいましょう。」

 茜は、HDG-A01 へ向かって駆け出すのだ。

 何時(いつ)も通りの手順で HDG に自身を接続した茜は、メンテナンス・リグから離れると ADF への前へと歩いて行く。そして HDG を ADF に接続し、シミュレーターとして ADF を使用する準備を進めるのだ。
 準備が整うと、早速、シミュレーターが起動される。基本的には一昨日に実施した飛行シミュレーションと同じで、Emerald がシミュレーション環境の制御を行っているのだ。
 樹里が、茜に通信で伝達する。

「それじゃ、天野さん。スタートさせるけど、離陸操作とかはスキップして、飛行状態から始めるけど、いい?」

「はい、いいです。それで、お願いします。」

「じゃ、日本海上空、高度一万メートルから、スタート。」

 樹里が宣言すると、茜の視界がブルー・スクリーン状態から、空中の景色に切り替わる。レシーバーからは飛行中の効果音、エンジン音や機体から伝わって来る風切り音や振動音が聞こえて来るのだ。
 外部でコンソールを操作している樹里は、緒美に条件を確認する。

「敵機は、何機で設定します?部長。」

「取り敢えず、五十機からいってみましょうか。」

 何でもない風(ふう)に答えた緒美に、驚いて樹里が聞き返すのだ。

「行き成りですか?」

「一応、計算上では一航過での対応能力が最大で二百五十機までの筈(はず)なんだから、五十機程度は簡単にクリアー出来て貰わないと。」

 緒美は真面目な顔で、そう答えたのである。
 樹里は緒美に「分かりましたー。」と返事をした後、茜に向かって呼び掛けるのだ。

「天野さん、シミュレーション開始時の戦闘条件設定です。目標の数は五十、高度二万八千メートル、距離百八十キロを、西側から速度 11 で接近しています。」

 間を置かず、茜から確認の報告が返って来る。

「目標を、戦術情報で確認しました。交戦を開始します。」

 茜は ADF の仕様を十分(じゅうぶん)に理解しているので、敵機の設定数が五十である事に、特段、驚きはしないのだ。淡々と必要な指示を、Ruby に対して出していく。

Ruby、減速して外装を展開。速度を 4 に設定して敵編隊の中央へ直進、全レーザー砲を展開。」

「ハイ、外装を展開、全レーザー砲を展開します。」

 茜の指示通りに機体を制御する Ruby だが、現実の ADF は一切(いっさい)、動作してはいない。しかし、モニター用に接続されているディスプレイの中では、ADF は Ruby の制御通りに作動しているである。

「目標までの距離、百七十キロメートル。相対速度 15.8、レーザー砲の最大射程まで、あと一分です。」

 Ruby の落ち着いた合成音声が、茜と、外部でシミュレーションの状況をモニターしている緒美達にも、聞こえたのだ。

 

- to be continued …-

 

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