WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第2話.02)

第2話・鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)と新島 直美(ニイジマ ナオミ)

**** 2-02 ****


 翌日の事である。
 直美と恵が登校して来ると、教室が何時(いつ)に無くざわめいていた。幾つかのグループが何かの話題に就いて、盛んに話し合っている様子だった。
 恵は、何時(いつ)もの様に先に来て、一人、席に着いている緒美を見付け、近寄って行った。直美は隣の席だったから、当然、恵と共に緒美の席へと歩み寄って行く。

「何か有ったの?」

 恵が緒美に話し掛けた。そう言えば、机の上には何時(いつ)もの様に資料を出していたが、珍しい事に、今日の緒美は資料を閉じた儘(まま)で、読んでいる風では無かった事に直美は気が付いた。

「B組の長谷川君、実家が昨日の襲撃事件で被害に遭ったらしいの。」

「家族も?」

「いいえ、避難してて建物だけ、らしいけど…。」

 天神ヶ崎高校の周辺には大きな都市が無いので、この辺りでは『エイリアン』に因る襲撃被害は、今まで皆無だった。それだけに、近場から通って来る『普通課程』の生徒や、『特別課程』の中でも被害の少ない地域から来ている生徒達には、身近にエイリアンの襲撃に因る被害者が出た事が話題になっていたのだ。
 直美も又、そう言った事件とは縁遠い地域から来ていたので、未だ、『エイリアン』による襲撃被害に就いての実感は無かった。

「昨日の事件って、東京と埼玉の間、位(ぐらい)の所だっけ?」

 直美は朝のニュースで、そんな事を言っていたな、と思い出し、恵に聞いてみた。

「確か。」

「あなた達の実家も、その辺りじゃなかった?」

「そうよ。」

 意外にも、答えたのは緒美だった。

「あなた達は、落ち着いてるのね。」

「そうね。あっちの中学の時には、月に一度位(ぐらい)、こんな事が有ったわね。」

「何も思わない訳(わけ)じゃないけど…わたし達が騒いでみても、どうしようもないものね、緒美ちゃん。」

 恵はそう言うと、少し離れた場所に在る自分の席へと向かった。
 直美もそれ以上、その話題を続ける気にもならなかったので、一時限目の授業の準備を始めたのだった。

 その日の授業が全て終わると、何時(いつ)も通り、緒美は何も言わずにスッと立ち上がり、後ろの側の出入り口から教室を出て行った。何時(いつ)もと違ったのは、その後を恵が追って行った事だったのだが、恵が緒美と放課後の行動を共にする事は、昨夜の内に聞かされていたので、直美は特に気に留めなかった。


 そんな日が一週間ほど続いた頃、寮に帰って来た恵に、直美は聞いてみた。帰ってきた恵は、何時(いつ)もより上機嫌に見えたからだ。

「何か、いい事でも有ったの?森村さん。」

「別に、何時(いつ)も通りよ。どうして?」

「毎日、放課後、どんな事をしてるの?」

「う~ん、緒美ちゃんは相変わらず、資料を読んで、考えて、レポート見たいのを書いてて…。わたしは最初は特に手伝える事が無かったから、お茶を淹(い)れたり、出しっ放しのファイルを整理したり。あ、最近はレポートの誤字脱字のチェックとかも出来る様になったのよ。」

「なによそれ、雑用じゃない。」

「だって、部外者だもん。」

「あなたは、それで楽しいの?」

「うん、意外と退屈はしないの。変かもだけど。」

そう言って、制服から部屋着に着替え乍(なが)ら、楽しそうに笑っている恵の気持ちが、直美には理解出来なかった。

「新島さんは、夕食、食べた?」

「いえ、あなたを待っていたのよ。一応。」

「そう。じゃ、食堂へ行きましょう。」

 恵はベッドに凭(もた)れる様にして座っている直美へ、手を差し出す。
 直美はその手を取り、引っ張られる様に立ち上がった。

「夕食…いや、お風呂の後で数学の宿題、また教えて貰えるかな?」

「新島さん、数学苦手だものね。」

「あなたは得意そうで、羨ましいわ。」

「そうね…教えてあげる代わりに、条件。」

「なによ。」

「そろそろ、名前で呼んで良いかしら?出来れば、わたしも名前で呼んで欲しいんだけど。」

「嫌よ。わたしはそう言う、女子っぽいの苦手。」

「何時(いつ)迄(まで)も『さん』付けなのも変だし、ねぇ、直ちゃん。」

「止めて~。」

「いいじゃない。だったら、数学教えないぞ、直ちゃん。」

「分かった。人前では、名前で呼ぶのは止めて。だったら我慢するから。」

「ふ~ん…まぁ、いいか。じゃ、わたしの事は名前で呼んでくれる?」

「それも嫌。『さん』を付けなきゃいいんでしょ、森村。」

「あ~、直ちゃんだったら、それも有りな気がする。うん。」

「えぇっ、いいの?それで?」

「いい、いい。やっと直ちゃんと友達になれた気がするわ~さぁ、ご飯、ご飯。」

 直美は恵に引っ張られる様に、部屋を出て行ったのだった。

 

- to be continued …-


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