WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第20話.07)

第20話・鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)と森村 恵(モリムラ メグミ)

**** 20-07 ****


 一方で、桜井一佐達が出て行ったあとの、兵器開発部の部室内である。
 三人が外階段を降りて行く足音が聞こえなくなって、最初に聞こえて来たのが立花先生が吐(つ)いた溜息だった。

「どうしたんですか?先生。」

 そう問い掛けたのは、恵である。

「結局、又、こう言う事になって、自分の無力さを呪ってるのよ。溜息ぐらい、吐(つ)かせてよ、恵ちゃん。」

 立花先生の回答に、愛想笑いを返すしかない恵である。対して、緒美が言うのだ。

「御自分を呪うのも責めるのも溜息吐(つ)くのも、それは先生の勝手ですけれど、こう言う展開になったのは、別に先生の所為(せい)ではありませんよ。ねえ、天野さん。」

「えっ、あー…そうですね。強いて言えば、わたしの所為(せい)?ですか、ね?」

 突然に話を振られた茜は慌(あわ)てた挙句(あげく)に、自虐的な発言をしてしまうのだった。それに対しては、苦笑いしつつ緒美がフォローするのだ。

「ああ、ごめんなさい。話を振る相手を間違えたわね。でも、貴方(あなた)の所為(せい)でもないわよ、天野さん。この状況の一番の原因はエイリアンだし、二番目は協力を要請して来た防衛軍なんだから。」

「えーと、そう言う解釈でいいんですか?部長。」

 茜は自信無さ気(げ)に、苦笑いで言葉を返したのだ。実の所、自分の行動が部活のメンバーを巻き込んでしまったとの認識から、茜は自責の念を割と以前から抱えていたのである。
 そんな茜に間髪を入れず、直美が声を掛ける。

「他に、どう解釈しろって言うのよ。」

「其(そ)れは然(そ)うですけど。」

 ニヤリと笑っている直美に対して、茜は少したじろぐ様に言葉を返したのだ。
 続いて、緒美も言う。

「確かに、一番最初の切っ掛けは天野さんだったけど、その時だって最終的にはわたしが許可してるし。その後も、天野さんが単独で勝手な行動を取った事は無かった筈(はず)よ、わたしの覚えている限り。 貴方(あなた)は何時(いつ)も必ず、わたしや学校か、防衛軍の許可を受けてから行動してたから、その行動の責任は学校や防衛軍に有るの。必要な手順は、何時(いつ)でもキッチリ踏んでいたんだから、天野さんが心配する事は何も無いわ。 ですよね?先生。」

 同意を求められて、もう一度、深く溜息を吐(つ)き、立花先生は答える。

「まあ、そうね。緒美ちゃんの言う通りよ。 一番危険な現場仕事を押し付けておいて、その上で責任まで取れなんて、流石に恥ずかしくて言えないわよね。真面(まとも)な大人だったら。」

「あはは、大人が全部、真面(まとも)だとは限らないから心配なんだよな、天野。」

 茶化す様に直美が言うので、茜は苦笑いで答えるのだ。

「そこ迄(まで)は思ってません。」

 そこに、Ruby の合成音が部室内に響くのである。

「緒美、もう発言して宜しいですか?」

「ええ、いいわよ。 何かしら?Ruby。」

 緒美は即座に、Ruby に発言の許可を出す。そもそも今回、部室に上がって来る前に、Ruby 達に対して来客中の発言を、緒美が禁じておいたのである。

「ハイ、桜井一佐のお話だと、次の作戦には、わたしの役割は無いと言う事でしょうか?」

 Ruby の問い掛けに、緒美が即答する。

「そうね。 実戦が初めての Pearl(パール) が心配?」

 茜の HDG-A01 とドッキングする AMF の搭載 AI は、現在は Pearl なのである。

「イイエ、必要なデータは、全て渡してありますので。それに、わたしには『心配』する機能は有りませんので。 単純に ADF がフライトする予定が無いのか、確認したいだけです。」

「そう、それなら其(そ)の通りよ、Ruby。 ADF の飛行予定は有りません。」

 緒美が Ruby に然(そ)う告げた所で、茜が緒美に尋(たず)ねるのだ。

「そう言えば、部長。 防衛軍は ADF が学校(ここ)に有る事は、知ってるんですよね?」

「ですよね?先生。」

 茜の問い掛けを、その儘(まま)、緒美は立花先生へと流すのだ。そして立花先生は、短く答える。

「だと、思うけど。」

 それに口を挟(はさ)んできたのが、直美だった。

「でも先生、それにしては ADF を計算に入れて来ないのは不思議じゃないです? 何時(いつ)もなら、丁度いいから実戦で~みたいに言い出しそうな物ですけど。」

 その直美の疑問は尤(もっと)もだと、『緒美の予測』を聞いていない部員達はこの時、思ったのだ。そして『緒美の予測』を聞いていた、茜と樹里、立花先生、そして当人である緒美はそれぞれが、さりげなく互いに顔を見合わせる。
 『緒美の予測』を聞いた三名と予測した当人である緒美は、防衛軍が ADF を次の作戦に組み込まなかったのは、『ここでは Ruby を温存しておく方針だから』だろうと見当が付いていたのだ。勿論、そんな推測を公(おおやけ)に出来ないのは解っていたし、それを言い出すと『緒美の予測』を説明しなければならなくなる。だから咄嗟(とっさ)に、立花先生は声を上げたのである。

「まだ ADF はこっちで試験を始めて日が浅いし、そもそも防衛軍の考えなんて解らないでしょ。普通に考えたら、今迄(いままで)の方が異常なんだから。」

「あははは、其(そ)れも然(そ)うですよねー。」

 直美の疑問には深入りされたくないと言う立花先生の心情を何と無く察したのか、事情は解らない乍(なが)らも恵は朗(ほが)らかに笑って同意して見せたのだ。その恵の反応で、直美が呈した疑義に就いては、取り敢えず有耶無耶にされたのだった。
 それに続いて、茜が話題を変える可(べ)く立花先生に問い掛ける。

「所で先生、HDG の 0(ゼロ)号機の件は、防衛軍側には伝わってるんですか?」

「さあ? 少なくとも、わたしは飯田部長から何も聞いてないけど。多分、まだ報告はされてないんじゃない?」

 答えた立花先生は、茜には予想外な程、呑気(のんき)な口振りである。
 続いて笑い乍(なが)ら、直美が言うのだ。

「あはは、まあ、防衛軍の次の作戦には計算に入ってなかったんだから、そう言う事なんでしょうね。」

「0(ゼロ)号機は、今日やっと試運転したばっかりなのに。そんな行き成り戦力として当てにされても、ねえ、部長。」

 恵が困った様に然(そ)う言って、緒美に同意を求めるのだった。
 緒美の方は、少し申し訳無さそうに、恵に同意するのである。

「残念だけど、わたしが、まだ役に立つレベルじゃない事は、よく解ったわ。 無理をしても足を引っ張るだけだから、今度の作戦に就いては参加を見合わせるしかないわね。改めて、天野さん達の凄さが分かったって言うか…。」

 そう言い掛けた所で、茜が遮(さえぎ)る様に発言するのだ。

「わたし達が凄いんじゃなくて、凄いのは HDG 搭載の AI の方ですよ、部長。 Angela(アンジェラ) と、Betty(ベティ) と、Sapphire(サファイア)、皆(みんな)、優秀です。ねえ、ブリジット。」

 突然、話を振られたブリジットだったが、間髪を入れず茜に同意するのである。

「そうそう、部長も、HDG の慣熟を一週間も続ければ、 AI の方が合わせて呉れます。わたしと Betty もそんな感じでしたし。」

「そうねえ…来週の月曜から、試験前の部活休止期間に入るでしょ。取り敢えずは其(そ)の前に空中機動の体験を一度はやって置きたいのだけど。」

 緒美は然(そ)う言って、宙を見詰める。それに、直美が言葉を返すのだ。

「今度の日曜日は、飛行訓練の予定、入ってるでしょ?飛行機部の。」

「それを兼ねて、新島ちゃんに随伴(チェイス)やって貰おうかしら。」

「それは構わないけど。金子達とは、打ち合わせしといた方がいいんじゃない?」

 緒美と直美が話している所へ、茜が声を掛けるのである。

「部長、空中機動って単独で、ですか? それとも AMF?」

「両方、必要よねー。先ずは単独で、スラスター・ユニットの制御を体験しておかないと、AMF でのフライトした時の緊急対応が出来ないだろうし。」

 ここで緒美が言う『緊急対応』とは、飛行中に致命的なトラブルが発生した際の、HDG を AMF から切り離して HDG 単独でスラスター・ユニットでの飛行で帰還するシナリオの事だ。通常の戦闘機での『緊急脱出(ベイルアウト)』に相当する対応である。この為には第一に、HDG 単独で安全に飛行と着陸が実施可能である事が必要なのだ。

「HDG 単独での飛行は、わたしとブリジットのでデータ的には揃(そろ)っていると思いますから、制御は問題無いと思いますが。部長には飛行機部の機体での飛行経験も有りますし、空中感覚も大丈夫だと思います。 単独での飛行は、土曜日の昼間に一度、わたしとブリジットと一緒に飛んで体験すれば十分(じゅうぶん)じゃないでしょうか。そのあと、AMF でシミュレーター体験をやって、日曜日に AMF 実機でフライト、って感じで、どうでしょう?」

「まあ、そんな所かしらね。」

「それじゃ、その流れで明日以降の計画、立てておきましょうか。」

 茜と緒美の発言の流れで同意した直美は、そう言った直後に思い出した様に畑中に声を掛けるのだ。

「ああ、畑中先輩。先輩達は今日迄(まで)の予定でしたよね。何か、連絡事項とか有ります?」

 問い掛けられた畑中は、数秒、宙を見詰めた後に答える。

「いや、特には無いかな。HDG の追加分が無事に稼働したのを確認したし。ADF のメンテ事項とかの引き継ぎは済ませてあるから、あとは現場の片付けと、持ち込んだ工具類の梱包だけだな。予定通り、明日の朝には出発するよ。」

「そうですか、ご苦労様でした。」

「いやいや…。」

 緒美に声を掛けられ、席を立った畑中は部室奥の出口へ向かおうとして振り向き、言った。

「…ああ、そうだ。今日の HDG の稼働ログ、本社の開発へ送っておいて貰えるかな?」

 その要望には、樹里が直ぐに反応する。

「はい、承知してますよ。日比野さん宛で、いいんですよね?」

「うん、いいと思うよー。それじゃ、下に降りて、帰り支度してるから。」

「あ、畑中先輩…。」

 出口へ向かって歩き出した畑中を、今度は緒美が呼び止めたのだ。

「…下に居たら、金子さんと武東さんに、こっちへ上がって来るよう、伝えてください。」

「了解(りょーかい)。」

 一度立ち止まって返事をして、畑中は部室から出て行ったのだった。
 そのあと、茜が少々唐突に、緒美に提案するのである。

「所で部長、HDG 0(ゼロ)号機の AI に、名前は付けないんですか?」

「名前って、A号機やB号機みたいに? さあ、考えてなかったわね。」

 困惑気味に緒美が言葉を返す一方で、恵が言うのだ。

「A号機、B号機の流れで行くと、0(ゼロ)号機の場合は『O(オー)』で始まる名前かしら? 何か、思い付くのは無いの?部長。」

「だから考えてないってば。 何(なん)だったら、貴方(あなた)達で決めて呉れても…。」

 そこに、ブリジットが割り込んで来る。

「ええ~ダメですよ、ここは部長がアイデア出さないと。」

「何時(いつ)までも『0(ゼロ)号機の AI』じゃ、今後呼び辛いですからね。別に、頭文字が『O(オー)』に拘(こだわ)る事もないんじゃないですか?」

 その茜の提案には、恵が抵抗するのだ。

「え~、ここは拘(こだわ)る所でしょう?天野さん。」

「そうですか?」

 そこで緒美は、茜とブリジットに尋(たず)ねるのである。

「そもそも貴方(あなた)達は、どうやって決めたの?名前。」

「いえ、特に理由は無くて。強いて言えば、何と無く?」

 そう言って茜がブリジットに視線を送るので、ブリジットが続けて言うのだ。

「そうです、徒(ただ)の思い付きですよ。 何か無いですか?部長。」

「そう言われてもね…う~ん…。」

 緒美は暫(しば)し宙を見詰め、そしてポツリと言うのである。

「…オフィーリア…って、何だっけ?」

 緒美の言葉に真っ先に反応したのは、それ迄(まで)、黙って様子を見ていた佳奈である。

「『ハムレット』ですよねー、シェイクスピアの。」

「あーそう、だっけ? 昔、読んだのかな…。」

 名前を出した緒美自身は、自身無さ気(げ)でなのある。そんな緒美に、佳奈は進言するのだ。

「お姫様の名前ですけど、ちょっと不吉ですよーその名前。」

「何(なん)でよ?」

 隣の席から瑠菜が尋(たず)ねるので、佳奈は普段と変わらないトーンで答える。

「うん、最後に発狂して自殺しちゃうのー。」

「え。」

 瑠菜が言葉を失う一方で、恵が説明を補足するのだ。

「ああ、発狂は演技だったとか、自殺じゃなくて事故だったとか、解釈は幾つか有るみたいだけどね。まあ、死んじゃうって所は変わらないわね。わたしも読んだのは随分と前だから、細かい所はよく覚えてないんだけど。」

「まあ、『シェイクスピアの四大悲劇』の一つですからね、『ハムレット』って。」

 そんな蘊蓄(うんちく)らしき事をクラウディアが言い出すので、ブリジットが問い質(ただ)すのである。

「貴方(あなた)は読んだ事、有るの?『ハムレット』。」

「いいえ。タイトルと粗筋(あらすじ)を一般常識程度に知ってるってレベルだけど。そもそも、古典は趣味じゃないのよ、わたしは。」

「だと思った。」

 少し呆(あき)れた様に、ブリジットは言葉を返すのだった。そんなブリジットに、茜が声を掛ける。

「ブリジットは古典…って程でも無いけど、古めの文学作品好きだもんね。シェイクスピアとかも、読んだでしょ?」

「小学生の時だから、もう覚えてないわ。『ハムレット』は難しくて何か嫌な感じがした事しか覚えてない。」

 そう言って苦笑いするブリジットに、恵が尋(たず)ねるのだ。

ボードレールさんは、最近、どんなの読んでるの?」

「ああ、最近は漱石、ですねー。」

 その答えを聞いて、感心気(げ)な直美である。

「へえ、意外だねー。」

「あはは、元は、うちの親の趣味なんですけどねー。」

「ブリジットの御両親は、筋金(すじがね)入りの日本マニアですから。」

 茜のフォローを受け、恵は、ふとした疑問に就いてブリジットに訊(き)くのだ。

「あれ? ボードレールさんが読んだ『ハムレット』って原語版?だよね。」

「まさか。日本語訳のですよ。 うちの親は海外の作品でも、先(ま)ず日本語版を買って来るんです。時々、後で英語版やフランス語版を買って読み比べたりしますけど、基本は日本語版なんですよね。」

「うわあ…。」

 絶句する恵に対し、茜は「ね、筋金(すじがね)、入ってるでしょ?」と言って、クスクスと笑ったのだ。
 そこで直美が、横道に逸(そ)れた話題の軌道を修正するのである。

「それで、結局、名前の方はどうするのよ?鬼塚。」

「そうねー…もう、最初の思い付きでいいかしら?オフィーリアで。 縁起とか気にしないし、語感は好きだわ。 いいよね?森村ちゃん。」

 同意を求められ、恵は微笑んで応える。

「部長が宜しければ、いいんじゃないですか?」

「それじゃ、そう言う事で。 Ruby、貴方(あなた)もいいかしら? 今後、『Ophelia(オフィーリア)』の呼称は、HDG 0(ゼロ)号機の AI、又は 0(ゼロ)号機自体を指す場合が有ります。」

 緒美の宣言を受け、Ruby の合成音声が返って来る。

「ハイ、呼称『Ophelia』を登録しました。 Sapphire、Emerald、Pearl へも呼称指定を展開します。」

「はい、お願いね。」

 そんな遣り取りをしている最中、部室奥のドアから金子と武東が入って来るのだ。

「何、何? 何(なん)の話?」

 早足で緒美に近付き乍(なが)ら、金子が声を掛けて来る。

「0(ゼロ)号機の呼称を、決めてたのよ。」

「へえ、何(なん)て?」

 その金子の問い掛けに、いち早く答えたのは直美である。

「Ophelia、だって。」

「へー、『ハムレット』かあ、いいじゃん。鬼塚が使う機体になら、お似合いだと思うよ。」

 金子の評に対して、微笑んで緒美は「どう言う意味かしら?」と問い掛ける。
 一方で、直美が金子に対して言うのだ。

「金子が『ハムレット』とか知ってるとは、意外だったわー。」

シェイクスピアだったら『ハムレット』とか『ロミ・ジュリ』辺りなら、一般常識でしょ? わたしの事、どう思ってたのよ?新島。」

「それは失礼したわ。それじゃ、読んだ事は有るのね?」

「あははは、それは無い。言ったでしょ、『一般常識』だって。」

 ニヤリと笑う金子に対して、直美は呆(あき)れた様に「なんだ。」と、一言のみを返すのだった。
 その事には特に反応せず、金子は緒美に問い掛ける。

「それで?わたし達が呼ばれたのは?」

「明日からの、作業予定の調整。土日で、0(ゼロ)号機の空中機動確認とかやりたいから、飛行機部の予定とか摺(す)り合わせが必要でしょ?」

「あー、了解、了解。」

 そう声を上げ乍(なが)ら金子は、武東と共に空いている席へと移動するのだ。

「所で、お二人は下で何をしてたの?」

 席に着く二人に、恵が問い掛ける。それに答えたのは、武東である。

「主に試作部の皆さんの、帰り支度のお手伝い。序(つい)でに、世間話的に、試作工場の様子とか聞かせて貰ってたの。卒業後の配属先希望とか出さなきゃだしねー。情報収集よ。」

「山梨の試作工場は、天野重工じゃ航空機試作開発試験の中心地だからねー。」

 武東に続いて、声を上げたのは金子である。それには、感心気(げ)に直美が言うのだ。

「流石、卒業後を睨(にら)んで動いている訳(わけ)だね。わたしらも考えとかないとねー、ねえ、森村。」

「あはは、そうだねー。」

 直美に同意する恵に対して、金子は言うのだ。

「貴方(あなた)達は、大丈夫でしょ? 既に十分(じゅうぶん)、会社に貢献してるんだから。二年、一年含めて、兵器開発部のメンバー達の先先(さきざき)は安泰(あんたい)でしょ。対してわたし達、一般生徒は、頑張って会社にアピールしとかないと、さ。希望の配属先、ゲットしたいじゃない?」

「大丈夫じゃない? 少なくとも金子ちゃんは、十分(じゅうぶん)、目立ってるから。」

 緒美は然(そ)う金子に告げると、くすりと笑うのである。

「ええ~そうかなあ…。」

 何故か照(て)れた様に反応する金子の肩をポンと叩き、武東がニヤリと笑って言うのだ。

「博美、鬼塚さんは『悪目立ちしてる』って言ってるのよ。」

「えっ、そうなの?鬼塚。」

 驚いた様に聞き返す金子に、緒美は真面目な顔で、普通の調子で言葉を返す。

「そんな事は無いわ。 思ってても言わないから、安心して。」

「思ってんじゃん!」

 金子のツッコミに、一笑いした緒美は真面目な顔に戻って宣言する。

「それじゃ、打ち合わせ、始めましょうか。」

 その日の部活は、それから一時間ほど続いたのだった。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。