WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第5話.09)

第5話・ブリジット・ボードレール

**** 5-09 ****


「さっき、鬼塚…うちの部長が、秘密とか守秘義務とか言ってたでしょう?」

「あ、はい。」

「多分、天野はあなたに説明するのに、秘密事項に関する内容を省いて話したんじゃない? でも、それだと、どう言葉を選んでも説明不足になるだろうから、だから、あなたには伝わらなかったんでしょ、多分。」

「そうまでして、隠さないといけない事なんですか?」

「そうじゃなくて。 あなたを、守秘義務とかに巻き込みたくなかったんでしょ。知りさえしなければ、秘密も守秘義務も関係無い話だから。」

 直美にそう言われて初めて、茜の今迄(まで)の説明が、どこか要領を得ない物だった事に、ブリジットは気が付いたのだった。考えてみれば、あの利発な茜にしては、それは酷(ひど)く不自然な事だったのだ。

パワード・スーツを開発している事自体は、秘密事項じゃないんですよね?」

「そうね。でも、それが対エイリアン・ドローン用の兵器だ、とかは、わざわざ言って回る事でもないでしょう? そんなの高校生に出来る訳(わけ)無いって、鼻で笑われるのが落ちだし。」

「そうですね。わたしだって、そう思います。」

「よね。でも、大人の知恵を借りれば、高校生にだって出来る事は有るのよ。わたし達…主に部長の鬼塚が、だけど、彼女がアイデアを本社に提供して、本社は技術と資金を提供して、それで対エイリアン・ドローン用のパワード・スーツの試作機が出来上がってる。そこに、本社のどんな特許技術とかが使われているかってのは秘密だし、そのパワード・スーツの仕様や性能とかも秘密事項なのよ。 この話をこれ以上続けると、あなたの守秘義務がどんどん増えるけど、覚悟はいい?ブリジット。」

 再び、真っ直ぐと瞳を見詰めて、直美はニヤリと笑うのだった。思わず、ブリジットは息を呑んだ。

「毒食らわば皿まで、って言うでしょう? あぁ、乗り掛かった船、の方が合ってますか。」

 そう言い返して、ブリジットはクスリと笑った。

「いい度胸ね。わたし、そういうの、嫌いじゃないわ。」

「それは、どうも。…それで、先輩達は茜をどうする積もりなんですか?」

 朗らかな表情の直美に対して、厳しい顔付きでブリジットが問い掛けた。それは、彼女の一番聞きたかった事だった。

「どうって…取り敢えず、今は HDG …あ、パワード・スーツの事ね。その HDG のテスト・ドライバーをやって貰ってるけど。それは、別に先輩風吹かして押しつけた訳(わけ)じゃないの。」

「そうだとしても、何も知らない一年生にやらせる事じゃないのでは?」

「それは誤解よ。天野はこの活動に参加してまだ一ヶ月位(くらい)だけど、今じゃ、発案者の鬼塚の次に、HDG の仕様に就いて理解しているのが、彼女よ。勿論、専門的な内容になると、城ノ内や瑠菜には敵わないけど、それは、まぁ、役割分担ってものだから。 今迄(まで)の様子を見る限り、天野は HDG のテスト・ドライバーとして最適の人材だし、彼女はやるべき事をちゃんと理解した上でやっているわ。」

 ブリジットは直美に返す言葉が、咄嗟に見付からなかった。それは、確かに思い当たる節が、幾つか有ったからだ。そして押し黙るブリジットに、その思い当たる事柄に就いて直美が尋ねて来たので、ブリジットは聊(いささ)か狼狽した。

「天野は可成りのパワード・スーツ・オタクの様だけど、その事をあなたは知ってた?」

 ブリジットは、少し間を置いて、答える。

「…はい。確かに、そう言った SF 物に興味を持っていたのは、知ってました。徒(ただ)、その手の話を聞いても、わたしの方が理解出来ないので、余り突っ込んだ話はした事は有りませんけど…あぁ、茜の家に泊まりに行った時なんかに、その手の映画とかアニメとか、見せて貰った事が有る、その位(くらい)です。」

「そう。因(ちな)みに、あなたと天野、付き合いは長いの?」

「中一の時からです。」

「あぁ…もっと、長いのかと思った。ふぅん…あなた、天野が心配で様子を見に来たのよね? どうして、そんなに心配してるのか、理由を聞いてもいい?」

「…それは…。」

 再び、口籠(くちご)もるブリジット。視線を逸らし、両手を合わせて指先を唇に当てる仕草で、暫(しばら)く考えている様子だったので、直美は声を掛けるのだった。

「言いたくない事なら、無理に答えなくてもいいわ。ごめんなさい。」

「いえ…そうですね。中一の時、わたしが茜に迷惑を掛けたので…今度は茜が変な事に巻き込まれないように、わたしが何とかしてあげたいなって、思っていたから…ですね。」

「変な事って?」

「…あまり面白い話じゃ、ないですよ?」

「構わないわ、聞かせて。」

 もう一度、直美と視線を合わせたブリジットは、一呼吸置いてから話し始めたのだった。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。