WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第1話.06)

第1話・天野 茜(アマノ アカネ)

**** 1-06 ****


「えっと、それじゃ入部の手続きとか…。」

「あぁ、入部届の用紙を渡すから、明日にでも書いて、持って来てくれたらいいわ。」

「いえ、入部届の用紙、今日、配られたのを持ってますから。大丈夫です。」

 茜は制服のポケットに、四つに折って入れておいた用紙を取り出し、机の上に広げる。ペンを恵から借り、その場で必要事項を記入して、茜は借りたペンと共に入部届を恵に渡したのだった。

「はい、確かに。」

 恵は受け取った用紙の記述を確認し、背後の棚から一つのファイルを取り出すと、その中に茜の入部届を挟んだ。
 その時、部室のドアが開き、二人の女性が連れ立って入って来る。先に入って来たのが三年生の女子生徒で、その後ろが教師の様である。

「あれ、森村。その子は? まさか新入部員!?」

「そうよ~副部長。 立花先生も定例会議、お疲れ様でした。」

「はい、疲れましたよ。ごめん、恵ちゃん、悪いけどお茶、貰えるかな。」

 入ってきた二人は、部室中央に有る長机の一端の席に着き、恵は手に持っていたファイルを棚の元の位置に戻して、ポットの方(ほう)へ向かう。

「何時(いつ)もの紅茶でいいですか?先生。副部長も。」

「いいわよ。お願い。」

「あ、悪いね~森村。」

「それで、定例会議の方(ほう)はどんな感じだったの?新島ちゃん。」

 鬼塚部長も、長机のもう一端側の席に着き、茜にも席に着くように手振りで促す。

「どうもこうも、企画部も開発部も試作部もみんな、部長さんが参加して来る上に、本社統括部の部長さんまで登場よ。緊張した~。もう二度と、あなたの代役で会議になんて出ないからね、鬼塚。」

「新年度になって最初の定例会議だったから、彼方(あちら)も気合いが入ってたみたいよねぇ。」

 新島副部長と立花先生は顔を見合わせて、溜息を吐(つ)いた。

「一通り進捗の報告と、今後の計画の摺り合わせをしたけど、試作機の稼働データを早く見たいって、プレッシャーが、もう。あ、ありがと。」

 立花先生に続き、恵が新島副部長の前に紅茶の入ったティーカップを置いた。

「そのプレッシャー問題には方(かた)が付きそうよ、副部長。」

 そう言って、恵は掌(てのひら)を上にして茜の方へ指先を向ける。
 茜は新島副部長と立花先生に向かって、軽く会釈をするのだった。

「機械工学科一年の天野 茜です。よろしくお願いします。」

「大丈夫なの?行き成り一年生に任せちゃっても。ねぇ、鬼塚。」

 新島副部長は訝(いぶか)し気(げ)にそう言って、ティーカップを口元へ運んだ。

「勿論、大丈夫な様にやるわよ。厳正なる面接の上でやっと、協力を取り付けたんだから、彼女のやる気を削ぐような事は言わないでね。」

「はいはい、あなたと森村が二人とも了解なら、わたしは文句は言わないわ。取り敢えず、あなたが部活説明会に出た結果でいい人材が来たのなら、わたしが犠牲になった甲斐が有ったって事ね。」

 鬼塚部長と恵は顔を見合わせた後、クスクスと笑っているが、鬼塚部長が三十秒で説明を切り上げた事を、今、ここでは言わない方が良いのだろう、と茜は思った。

「天野さんについて、二つほど情報が有るけど、良いのと、そうでもないのと、どっちから聞きたい?」

 紅茶を飲みつつ、鬼塚部長と新島副部長の遣り取りを聞いていた立花先生が、突然、口を開いた。

「何ですか、立花先生。勿体振って。」

 鬼塚部長が怪訝(けげん)な顔付きで、立花先生を見詰める。

「じゃ、良い方から伺(うかが)います。」

「本人の前で言うのも、どうかなって思ったけど…まぁ、いいわ。先ず、天野さんが良い人材なのは間違い無いわね、今年の新入生で入試の成績は、天野さんがトップだったそうだから。」

「それは凄いけど…何で立花先生がそんな事、知ってるんですか?」

「う~ん、普通なら知らない事なんだけど、今回は、もう一つの情報に付随して職員の間で噂になってたのよね~。」

 今度は新島副部長も、表情を曇らせて尋ねる。

「何ですか?その噂って。」

「その噂って言うのが、そうでもない方の情報よ。天野さんは、理事長…『天野重工』会長のお孫さんですって。それは…事実なのよね?天野さん。」

 立花先生の発言を受けて、一同の視線が茜の方へ向けられる。

「あぁ、はい。会長がわたしの祖父なのは、間違い無いです。」

 

- to be continued …-

 

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