WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第5話.07)

第5話・ブリジット・ボードレール

**** 5-07 ****


「あぁ、瑠菜さん、古寺さん、悪いけどフェンスの応急処置、お願い出来る?」

「はい。じゃ、工具と、自転車取ってきます。行こう、佳奈。」

「は~い。」

 瑠菜と佳奈は取り敢えず、第三格納庫東側外階段の下に駐めてある、自転車を取りに走って行った。

「天野、どうしたって?」

 そして直美が緒美に近寄り、茜の様子を尋ねると、その場にいた一同の視線が緒美へと集まるのだった。

「顔に虫がぶつかって来たのにビックリして、Uターンし損ねたって。」

「何よそれ。」

「あぁ、結構スピードが出てたもんね~。」

「天野さん、怪我はしてないのね?緒美ちゃん。」

「矢っ張り、フェイス・シールドは必要だったって事だよなぁ。」

「あぁ、すみません。試作部(うち)の不手際で…。」

 そんな具合で、その日の稼働試験は中断したのだった。
 自転車に工具を積んだ瑠菜と佳奈が茜の元に合流し、破損したフェンスの具合を確認したのだが、ボルトで固定してあった部分が変形したり、ボルト自体が破損していたり、外れてしまったフェンス自体も湾曲している様子だっりで、簡単には修復出来そうもなかった。本社試作部の畑中も合流し、応急処置の方法に就いて検討したのだが、先ず、フェンス自体の湾曲に就いては、茜が HDG のマニピュレータで、湾曲したフェンスのフレームを矯正する事が出来た。固定に就いては、破損していない両サイドのフェンスに、外れたフェンスを針金で縛り付けると言う事で、応急の処置とされた。この固定作業の際、外れたフェンスを支えたり、位置を調整したり等の力仕事に、HDG が活用された事は言うまでもない。
 その作業の後、茜は先程失敗したホバー走行でのUターンに就いて、幾分か遅い速度での再挑戦を行い、その動作の確認を終えたのだった。

 さて、これは後日談ではあるが、この日に破損したフェンスに就いて、顧問の立花先生と部長の緒美は学校に対して提出する書類を、幾枚か書かされる事となる。そしてフェンスの修理費用に就いては「兵器開発部の予算から捻出」と言う事になったのだが、生徒会予算から獲得していた純粋な部の予算が潤沢な訳(わけ)ではなかったので、本社からの業務委託に対する報酬、要するに緒美を始め全員のバイト代から修理費を支払うと言う事で落着したのだった。

 

 そして翌日。2072年5月18日水曜日。
 朝、教室に入って来る茜の姿を認めると、寮で同室のブリジットが猛然と駆け寄って来た。その剣幕に驚いて身を固くする茜の両肩を、ブリジットは掴んで言った。

「茜、変な事に巻き込まれないように、気をつけてって言ったでしょ!」

「ちょっと、ブリジット、何の話?」

 茜にはブリジットが、どうしてそんなに興奮しているのかが分からず、ただ困惑するのみだった。そこへ、ブリジットと同じく女子バスケ部の西本さんが割って入る。因みに、西本さんは「普通課程」の生徒である。

「朝練で、昨日の天野さんの、飛行場での一件の話を聞いたのよ。先輩にね、寮で飛行機部の人が同室な人がいて、その人が見てたんだって。」

 西本さんの解説で、漸(ようや)く、茜はブリジットの様子がおかしい理由に見当が付いたのだった。

「あぁ、その話なら昨日の夜に話したでしょ。」

「だって、そんな危険な事してるなんて、言わなかったじゃない。」

「そもそも、危険な事なんてしてないし、危険だとも思ってないから、危険だって言う訳(わけ)もないでしょ。」

「何だか訳(わけ)の分からない機械の中に入って、壁にぶつかって行くなんて、危険に決まってるでしょ!」

 確かに、端(はた)から見ればそんな風に見えるのかも知れないとも思った茜だったが、ブリジットの聞いた話は、どうやら『又聞きの又聞き』らしいので、相当の『尾鰭(おひれ)』が付いている様に思われた。

「兎に角、落ち着いてよ、ブリジット。ちゃんと説明するから。」

「…。」

 ブリジットは無言で、両肩を掴んでいた手を放した。徒(ただ)ならぬ雰囲気の二人を、教室に居た他の生徒達も遠巻きに見ている視線にブリジットも気が付き、一度、大きく息を吸った。

「取り敢えず、わたしを見て。何処も怪我はしてないでしょう? だから、先(ま)ず、心配はしないで。それから、もうすぐ授業が始まるから、詳しいお話は、お昼休みにしましょう、いい?」

「…わかった。」

 ブリジットが渋々と言った具合に頷(うなず)くと、西本さんがブリジットの両肩を掴んで身体の向きを変え、背中を押した。

「ほら、取り敢えず、あなたも席へ着きなさい、ブリジット。」

 ブリジットはとぼとぼと言った様子で、自分の席へと戻って行った。その様子を見送りつつ、西本さんが茜に言う。

「彼女、あの話を聞いてから、あなたの心配ばかりしてて、朝練にも身が入ってない様子だったの。ちゃんとフォローしてあげてよね、天野さん。」

「うん、ありがとう、西本さん。」

 西本さんは、ブリジットの後ろの自席へと戻って行った。茜も自分の席に着き、授業の準備を始めたのだった。


 そんな事が有って、昼休み。何時(いつ)も通り、茜はブリジットと共に学食へと行き、そこで昨日の顛末に就いて、昼食を取り乍(なが)ら改めて説明したのだった。だが、相変わらず、茜の話だけではブリジットには兵器開発部の面々が行っている活動の意味が理解出来ず、結局、一度(ひとたび)芽生えたブリジットの心配が解消される事は無かった。
 最終的に、ブリジットは「今日の放課後、兵器開発部での活動を見に行く」と言って聞かず、茜は「先輩達が見学を許可してくれたなら」との条件を付けて、その場を納める事になったのだった。

 

- to be continued …-

 

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