WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第8話.01)

第8話・城ノ内 樹里(ジョウノウチ ジュリ)

**** 8-01 ****


 2072年7月2日、土曜日。この日は、防衛軍の演習場を借用しての、HDG-A01 と LMF に因る火力運用試験が実施される日である。
 出力は抑えて実施するとは言え、荷電粒子砲の実射等、危険な項目が予定に組まれている為、天野重工本社からは少なくないスタッフが派遣される大掛かりな試験である。防衛軍からも関係者が視察に訪れる予定だと、緒美ら天神ヶ﨑高校『兵器開発部』の部員一同は聞かされていた。
 試験を行う陸上防衛軍の演習場は、天神ヶ﨑高校からだと自動車で一時間半程の、学校が所在するのとは別の山腹の、なだらかな斜面に造成されており、普段は近辺に展開する陸上防衛軍部隊が射撃・砲撃訓練に使用している。
 HDG-A01 と LMF 及び関連機材は、本社が手配したトランスポーターに前日の内に積載済みであり、午前中に試験場へと移動を開始していた。一方、兵器開発部の部員一同は、学校所有のマイクロバスにて、午前中の授業を終えて、午後十二時半頃に学校を出発した。因(ちな)みに彼女たちの昼食は、立花先生が手配した弁当を移動中の車内で、と言う段取りであった。

 天神ヶ﨑高校『兵器開発部』一行のマイクロバスが演習場のゲートを通過し、現地へと到着したのは、午後二時少し前だった。
 演習場には北端側管理棟の前に天幕が、二箇所に分けられて、合計四張り設営されていた。東側二張りの白い天幕には天野重工の社名が入っており、それらと少し離れて設営されている西側二張りの天幕は迷彩柄で、これらが防衛軍の物である事は一目瞭然である。
 天野重工の天幕の南側には、午前中に学校を出発していた二台のトランスポーター既に到着していた。HDG を積載した特製コンテナ式の一号車が天幕の前に、その後ろに開放式荷台の二号車が駐められている。二号車の荷台には LMF が積載されているのだが、出発時に機体に被せてあったシートは、既に取り外されていた。
 天神ヶ崎高校のマイクロバスが白い天幕の北側に停車すると、強い日差しの中、立花先生を先頭に白い夏制服の部員一同が降りて来る。彼女達はそれぞれが身分証となる入場証を、首から提(さ)げている。
 白い天幕の周囲では作業服姿の天野重工のスタッフが準備の為に行き交っているが、唯一、白シャツにネクタイと言う出で立ちの男性が『兵器開発部』一行がバスから降りて来るのを認めて、声を掛けて来た。

「おぉ、ご苦労さん。いい天気になって、良かったね。」

「何やってるんですか、こんな所で!飯田部長。」

 突然声を掛けて来た飯田部長の存在に驚き、挨拶も忘れて声を上げる立花先生であった。

「何やってる、とはご挨拶だねぇ。」

 飯田部長は、大きな声で笑った。

「すみません。飯田部長がいらっしゃってるとは、思ってなかったもので。」

「あはは、社長を始め開発部や試作部の部長連中も来たがってたんだが、結局、都合が付いたのが、わたしだけだったのさ。まぁ、わたしは防衛軍(あっち)側の対応をしなきゃならないって都合なんだが。」

 そう言って、飯田部長は親指で背後方向の、迷彩柄の天幕を指した。
 そんな飯田部長と立花先生との遣り取りを少し離れた場所で聞き乍(なが)ら、ブリジットは目の前に立っていた直美の耳元に顔を寄せ、小さな声で尋ねる。

「…どなたです?」

「飯田部長、事業統括部の。」

「事業統括部?」

「簡単に言えば、社長の次の次の次位に偉い人。」

「成る程。」

 直美の説明は、会社の組織構成を未(いま)だ把握していないブリジットには、非常に解り易かった。そんな具合にひそひそ話をしていたブリジットに向かって、飯田部長が声を掛ける。

「キミが、今日、LMF のドライブを担当してくれる、ボードレール君だね。」

「あ、はいっ。」

 ブリジットは少し背筋を伸ばす様に、飯田部長に返事をする。その様子に、ブリジットの右隣に居た茜が、くすっと笑った。

「それから、キミが HDG 担当の天野君、会長のお孫さん。」

 今度は、茜に飯田部長が声を掛けるので、茜は静かに会釈をする。

「うん。事故とか起きない様、呉呉(くれぐれ)も気を付けて。宜しく頼むよ。」

「はいっ。」

 茜がはっきりとした調子で返事をすると、飯田部長はにこりと笑うのだった。そして、その表情の儘(まま)、言った。

「さて、じゃ、立花君。それから鬼塚君も、取り敢えず、防衛軍関係者の方(ほう)へ挨拶に行っとこうか。」

「わたしは兎も角、鬼塚さんはいいんじゃないでしょうか?」

 怪訝(けげん)な顔付きで、立花先生はそう意見するのだが、飯田部長は意に介さない様子で答える。

「大丈夫、大丈夫。今日来てるのは HDG 推進派って言うか、こっちの理解者ばかりだから。まぁ、話はわたしがするから、君達はニッコリ笑って『宜しくお願いします』ってだけ、言っておけばいいよ。それよりも、鬼塚君に会って連中がどんな顔するか、それが見物だと思うよ。まぁ、何にせよ、あっちの関係者とも、ここらで一度顔合わせは、しといた方がいいと思うから。」

「分かりました。そう言う事でしたら。」

 緒美は一歩進み出て、微笑んで、そう飯田部長に答える。

「あはは、相変わらず、鬼塚君は度胸が有って、いいね。」

 そう言って上機嫌そうに笑うと、飯田部長は振り向いて、天幕の下で作業中の女性社員を呼ぶのだった。

「おーい、安藤君。」

 立花先生よりも少し年下風のその女性社員は、「はい」と返事をすると、少し間を置いて作業を中断し、小走りで飯田部長の方へと向かって来る。

「現場の音頭取りは、彼女に任せてあるから。細かい事は、彼女の指示に従ってね。じゃ、立花君、鬼塚君、行こうか。」

 飯田部長が防衛軍の天幕の方へ歩き出すと、入れ違う様に部員一同の前へとやって来た安藤に「あとは宜しく」と声を掛け、その儘(まま)、立花先生と緒美を伴ってその場を離れて行ったのである。

 

- to be continued …-

 

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