WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第9話.04)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-04 ****


「部長、準備は終わりました。皆さんは、早く避難して下さい。」

 茜は、まだメンテナンス・リグに接続された儘(まま)だったが、階段を降りて来る緒美に向かって、そう声を掛けた。すると、メンテナンス・リグの後方に居た瑠菜が茜の前側に歩み出て、HDG のスカート状の DFG(Defense Field Generator:ディフェンス・フィールド・ジェネレーター)を握った右手で軽く叩いて、言うのだった。

「馬鹿な事、言ってるんじゃないの。一年生に危ない真似させておいて、上級生だけ逃げられる訳(わけ)、無いでしょ。」

 瑠菜は、微笑んで言葉を続ける。

「それに、誰かが操作しないと、あなたは、このリグからも降りられないんだから。」

 その瑠菜の言葉を受けて、傍(そば)までやって来た緒美が言うのだった。

「そう言う事。あなたがやるって言うなら、わたし達はあなた達が無事に戻って来られる様に、最大限のサポートをするのよ。 城ノ内さん、HDG のデバッグ用コンソール、起動しておいてちょうだい。」

「やってま~す。貴重な実戦データを記録するんですよね?部長。」

 樹里は、既にデバック用コンソールの前に立っており、機材の起動作業を始めていた。そして、コマンド用のヘッド・セットを手に取ると、緒美に渡す。

「勿論、記録もして貰うけど、HDG と LMF 、Ruby が、正常に稼働しているかどうかモニターしてて。少しでも異常が有ったら直ぐに報告してね、城ノ内さん。」

「はい。心得てます。」

 緒美は渡されたヘッド・セットを装着し、話し始める。

Ruby、それからボードレールさんも、聞こえる?」

 少し離れた、LMF のコックピットに居るブリジットは身体を起こし、緒美に左手を上げて答えるのだった。緒美の耳には、ブリジットと Ruby の返事が音声でも聞こえていた。それは、ヘッド・ギアを装着した茜にも同様だった。
 ここで、Ruby が外部スピーカーを使用して返事をしなかったのは、二階通路へ出て来た自警部の長谷川と田宮の姿を認めていたからである。

「カルテッリエリさん、現在の敵の状況は?」

 作業台の上に愛用のモバイル PC を置いて、そのディスプレイを覗き込み、クラウディアが答える。

「今は、ちょっと進路を変えたみたいです。ここからだと南西方向を、西寄りに北上していますね。ここが目標じゃ無かったんでしょうか。時間的には、今の速度で十分位(ぐらい)の距離、です。」

「高度を下げると、対空迎撃を警戒して、目標でない市街地の上空は、飛行ルートとしては避けるはずよ。多分、山の上に来たら、又、こちら向きにコースを変えるんじゃないかしら。まぁ、遠ざかって行って呉れるのなら、それに越した事は無いけど。」

 状況の変化に対しても、緒美は冷静に最悪のケースを想定していた。

「確かに、高度は下がって来てますね…あ、コース、変わりました。矢っ張り、こっちに向かって来てます。大体、西南西方向から向かって来てますね。」

「分かった、引き続き、カルテッリエリさんは、防衛軍の動きも合わせて監視をお願い。 佳奈さん、この前、本社から受け取った観測装備、月曜に追加で届いた1セットも含めて、四機全部出せる?」

「はい、準備しま~す。」

 佳奈は直様(すぐさま)、観測装備の本体とコントローラーの一式が納められたコンテナを取りに、倉庫へと向かった。そして、瑠菜と直美が佳奈を手伝う為に、その後を追う。
 そんな折り、緒美の背後で樹里が、突然、声を上げるのだった。

「あぁ、田宮さん。あなたは、ダメ。ここに有る物は、見ない方がいいわ。」

 緒美が振り返ると、長谷川と田宮、自警部の二人が階段を降りて来ていたのだった。
 田宮が『普通科』の生徒なのを知っていたので、樹里が警告を発したのだ。
 田宮は階段の途中で立ち止まり、困惑気味に樹里に問い掛ける。

「どういう事?」

 それには、緒美が答えるのだった。

「ごめんなさいね、今、細かい説明をしている時間は無いんだけど。ここに有る物は、本社から業務委託の体裁(ていさい)で開発中の物件だから、企業秘密とかの都合で、秘密保持誓約の無い人は、知らない方がいい物なのよ。誓約が有っても、知らないのに越した事は無いから、長谷川君も引き上げて貰えるかしら?」

 緒美の説明では、田宮は直ぐには納得は出来なかったのだが、『特課』の生徒である長谷川には、直ぐに説明の意味に見当が付いたのだった。

「分かったよ、鬼塚さん。それで、さっき言ってた、立花先生への伝言って?」

 長谷川は田宮と共に立ち止まった階段の途中から、緒美に尋ねるのだった。

「あぁ、うん。先生には、『ごめんなさい』って、『みんなを止められませんでした』って伝えておいて。 あなた達は、早くシェルターへ。」

「分かったよ。 行こう、田宮君。」

 長谷川は田宮の肩を叩き、引き返す事を促(うなが)す。二人は階段を上がり、部室を経由して外階段へと向かった。

「部長、すみません。わたしの所為(せい)で…。」

 茜は、立花先生への伝言内容を聞き、何と無く申し訳(わけ)無い気持ちになって、緒美に詫(わ)びるのだった。

「いいのよ。わたしだって、この学校を壊されるのは嫌だもの。」

「怒るでしょうか?立花先生。」

「怒るでしょうね。」

 茜に聞かれて、そう答えた緒美は、ふっと笑うと、そこに居る一同に向かって、少し大きな声で言った。

「あとで、先生には謝りに行くわよ。全員揃(そろ)ってね。」

 緒美の、その言葉に「はい。」とは、誰も答えなかったが、その代わりに、一同はクスクスと笑うのだった。
 直美と佳奈が、手押しの台車に乗せて運んで来た観測装備一式を床に降ろし、その起動準備を始める一方で、瑠菜は HDG のメンテナンス・リグの操作パネルへと向かい、HDG との接続アームを降ろして接続を解除する一連の操作を行う。
 メンテナンス・リグから自由になった茜は、歩いて北側の壁際に置かれている、HDG の武装が納められたコンテナへと向かった。コンテナの扉を開くと、CPBL(Charge Particle Beam Launcher:荷電粒子ビームランチャー)を取り出し、腰部右側のジョイントに接続する。次に BES(Beam Edge Sword:ビーム・エッジ・ソード) をコンテナから引き抜き、腰部左側のジョイントに納めると、緒美の声がレシーバーから聞こえて来た。

「天野さん、向こうは斬撃を仕掛けて来るけど、相手に付き合って斬り合う必要は無いからね。基本は、距離を保ってランチャーで。」

「解ってます。」

 茜は短く答えると、左腕に DFS(Defense Field Shield:ディフェンス・フィールド・シールド)を接続した。左腕を前に構えて、茜はスライドする形で格納されている DFS の下半分を展開させ、もう一度、短縮状態に戻して、DFS の動作を確認するのだった。

「部長、準備出来ました。」

 観測装備のコントローラを二台並べて、佳奈が声を掛けて来る。緒美は直ぐに、指示を出した。

「じゃぁ、早速一機、飛ばしてちょうだい。レーダー基地に在る、ミサイル・ランチャーの様子を確認したいの。」

「は~い。行きま~す。」

 佳奈がコントローラを操作すると、上半分が開かれたコンテナに二つ並んで収められている球形観測機の一機が、すぅっと浮き上がる。球形観測機が南側へ向かってゆっくりと移動を始めると、それに先回りして、瑠菜が格納庫の大扉を、扉一枚分、押し開くのだった。

「瑠菜リン、ありがと~。」

 球形観測機は勢い良く外へと飛び出し、視界から消えた。

「ミサイルなんて有ったの?あそこ。」

 佳奈の後ろで操作の様子を見ていた直美が、振り向いて緒美に尋ねるのだった。

「ええ、レーダー基地自体は遠隔操作で無人なんだけど、防空用の発射機(ランチャー)が一機、設置されてるの。ある程度、エイリアン・ドローンが近付いて来れば、防衛軍は先ず、ミサイル・ランチャーを起動する筈(はず)だわ。だから、わたし達が動くのは、その後。」

「それじゃ、そのミサイル・ランチャーのコマンド状況を監視します。」

 緒美の発言を受けて、クラウディアが猛烈な勢いで、モバイル PC のキーをタイプし始める。その様子を後ろから覗(のぞ)き込んで、維月が聞くのだった。

「出来るの?そんな事迄(まで)。」

「まぁ、多分。」

 その一方で、球形観測機の操作を行っている佳奈が声を上げる。

「そのランチャーって、この、箱見たいのですか?」

 コントローラーに写される球形観測機からの映像を指差し、佳奈が振り向いて緒美に確認を求めた。緒美は画像を確認して、答える。

「そうよ、余り接近しないで。そのランチャーが動いたら教えてね、古寺さん。」

「は~い。」

「じゃぁ、部長。ひょっとしたら、そのミサイルで全部、方が付く可能性も?」

 大扉の方から戻って来た瑠菜が、緒美に尋ねた。

「そうね。可能性は有るけど、望み薄、かな。」

 瑠菜の問いに対する緒美の返事を聞いて、今度は、直美が尋ねる。

「ミサイル、あのタイプの命中率って?」

「さぁ、エイリアン・ドローンに対してだったら、30%位(くらい)だったかしら? 何かの資料で、そう読んだ記憶が有るけど。」

「ランチャーには何発、入ってるの?」

 そう聞いてきたのは、恵だった。

「六発。」

「こっちに向かって来てるのが六機で、撃ち落とすミサイルが六発。全部当たれば、それでいいけど、命中率を30%とすると、六掛ける 0.3 で 1.8 って事になるから、確率的には、命中するのは一機、良くて二機って事ね。」

「残りの方が、多いって事か。」

 恵の計算に、呆(あき)れ声を上げる直美だった。緒美は「気休めにもならない」と、そう思いつつも言うのだった。

「確率は確率よ。全弾命中する奇跡でも祈ってて。」

「生憎(あいにく)、わたしは神サマは信用してない。」

 直美が真面目な顔で言い返すので、緒美は微笑んで言葉を返した。

「奇遇ね、わたしもよ。」

 

- to be continued …-

 

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