WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第3話.07)

第3話・Ruby(ルビィ)・1

**** 3-07 ****


「どうしたの?天野さん。」

 茜の方へ目をやると、HDG の動きが止まった儘(まま)、身動きが出来なくなっている様だった。緒美の問い掛けに、茜の状況報告がヘッド・セットから聞こえて来る。

「えぇっと…バッテリー・エラーが出てます。動力系がダウンしたみたいで、身動きが取れません。…でも、通信は生きてるし、表示とかのシステム系も生きてるので、単純なバッテリー切れでは無さそうなんですが。変ですよね?」

「バッテリーは、二時間は持つ筈だから…城ノ内さん、そっちのモニターで状態が判る?」

 緒美は振り向いて、コンソールを操作している樹里に問い掛けた。樹里はキーボードに装備されている小型のトラックボールを操作して、画面を幾つも切り替え乍(なが)ら状況の分析をしていた。

「HDG からはバッテリー容量エラーのコードが帰って来てますね。FSU をドライブするのには電圧が不足していると判断して、動力系が一時停止になってるみたいですが…そもそも電圧の検出値が…あれ?…おかしいですね…」

 懸命にトラブルの原因を探る樹里の元に、一同が集まって来る。しかし、樹里は中々にトラブルの要因を切り分ける事が出来ずにいた。

「ちょっと、整理しましょう。HDG が動けないのは、動力系が一時停止状態になっているから、と言うのは確か?」

「はい。システムが電圧不足と判断したんだと思います。」

 緒美の質問に、樹里は即答した。すると、直美が次の質問をする。

「システムが生きているのは?」

「システム系は動力系よりも低い電圧で動作してますから、システム系が動けるだけの電圧は有る筈(はず)です。でも、電圧の検出値が、システム系が動作する電圧よりも低いんです。変ですよね?」

 樹里の回答と問題提起を受けて、今度は瑠菜が口を開いた。

「バッテリーの電圧が下がってるんじゃなくて、電圧の検出回路が故障してるんじゃない?」

「或いは、ソフトの電圧値演算部分にバグが有るのかも。」

 樹里はハード起因の問題ではなく、ソフト起因である可能性を考えていた。そこで、恵が対応策を提案する。

「取り敢えず、予備のバッテリーに交換してみたら?」

「あの~…。」

 一同の背後から声を上げたのは、佳奈だった。

「今、使用中のが、予備のバッテリーです。」

 佳奈の、その発言で、瑠菜と緒美は忘れていた、ある事実を思い出した。

「先日、チェックした時もバッテリー容量エラーが出ていて、それで予備のバッテリーと交換してましたね、部長。」

「そうだったわね…。」

 それを聞いた直美が、緒美に問い掛けるのだった。

「その、外したバッテリーは充電してあるの?」

「今、ここには無いわね。」

「バッテリー本体をチェックして貰う為、本社へ送り返しました、二日前。あの時は、バッテリー側の問題だと思ってたので…」

 瑠菜はそう言って、大きく息を吐(は)いた。

「ともあれ、バッテリーの電圧がどれだけ出ているのかは、バッテリーを外してテスターで計れば判る事だけど。それで、バッテリーに問題が無ければ、原因は HDG 本体側って事よね。」

 そう言うと、緒美は瑠菜の肩をポンと軽く叩き、再び樹里に意見を求める。

「ソフト問題だとして、修正は出来そう?」

「怪しい箇所は、二つ三つ、見付けましたから~小一時間も有ればソフトの修正は出来ると思いますけど…。」

「けど?」

「問題は、どうやって HDG へ書き込むか、ですよ。メンテナンス・リグ経由でないとソフトのアップデートが出来ませんが、彼処(あそこ)迄(まで)メンテナンス・リグは持って行けないですよね。」

 一同、格納庫の外、駐機場のほぼ真ん中に立ち竦(すく)む HDG に、空しく視線を送った。
 そして、瑠菜が力(ちから)無く言ったのだった。

「メンテナンス・リグは移動出来るけど…彼処(あそこ)まで届く電源ケーブルなんて、用意してない…ですね。」

 そこで、妙案を思い付いたのか、佳奈が手を挙げて発言する。

「それなら部長、今、 HDG に付いてるバッテリーを外してフル充電すれば、また暫(しばら)くは動けるんじゃないですか? さっき迄(まで)は動けてたんだし。」

「…そうね…現在のバッテリー残量次第だけど、二~三時間くらいでフル充電出来るかしら?」

 緒美は腕組みをして、佳奈のアイデアは考慮の余地有りかな、と考えていた。

「その間、天野さんは、あのまんま?」

 恵が心配そうに、緒美に尋ねた時だった。緒美のヘッド・セットに、茜の声が聞こえて来た。

「あの…部長…。」

「あぁ、ごめんなさい、天野さん。今、みんなで対策を検討中だったんだけど…。」

「それは、大体、聞こえてたんですが。まだ、時間が掛かりそうですか?」

「そうねぇ…。」

「…あの…。」

「何?」

「…トイレ、行きたいです。」

 茜の言葉を聞いて、暫(しば)し固まる緒美だった。

 

- to be continued …-

 

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