WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第6話.05)

第6話・クラウディア・カルテッリエリ

**** 6-05 ****


 翌日。2072年6月1日、水曜日。
 この日から制服は夏服へと切り替わり、季節は夏へと一歩近づいた感である。とは言え、中間試験を一週間後に控えているので、殆(ほとん)どの生徒達は浮かれた気分では居られない。

f:id:motokami_C:20180831012728j:plain

 部活もこの日から試験期間が終わる迄(まで)の間は活動休止となるので、全校的に生徒達は試験モードに突入していたのである。
 そしてこの日には、衣替えとは別にもう一つ、全校規模のイベントが予定されていた。『避難訓練』である。
 エイリアン・ドローンによる襲撃事件が頻発する様になって以来、防衛軍がエイリアン・ドローンの接近を察知すると、その侵攻予測を元に、政府から該当自治体に対し避難指示が発令されるのである。学校は自治体からの避難指示発令の連絡を受けると、在校生や教職員を所定の避難施設に速やかに移動させなければならず、その為の訓練を適宜(てきぎ)に行わなければならないのだ。
 四時限目の授業が始まって十五分程経った頃、その時は、唐突にやって来た。

「エイリアン・ドローンに関する避難指示が発令されました。全校生徒は自警部の誘導に従って、速やかに地下シェルターへ避難してください。これは訓練です。繰り返します…」

 同じ放送が三回繰り返されると、茜が授業を受けていた一年A組では、教壇に立っていた数学担当の大須先生が授業を中断して、生徒達に告げる。

「一年生は初めての避難訓練だが、みんな落ち着いて行動するように。直(じき)に担当の自警部が来るから…。」

 大須先生がそこ迄(まで)言った時、教室の上手側入り口が開き、紺色のヘルメットにベスト状のプロテクト・アーマーを着用した自警部部員が二名、教室に入って来た。それは男子生徒と女子生徒の一名ずつで、何方(どちら)も三年生の様子だった。その内の男子生徒の方が、大須先生に話し掛ける。

「一年A組の誘導を担当します。」

「はい。よろしくね。」

 大須先生の返事を聞いて、女子の自警部部員が、良く通る声で一年生達に指示を出す。

「男子と女子、二組に分かれて。男子は教室の前側へ、女子は後側へ集合。それぞれ、誰か代表者が人数を確認して、申告してください。」

 彼女は、そう指示をし終えると、一旦、A組の教室を出て隣のB組の教室へと向かった。B組にも別の自警部部員が行っており、男女グループ分けが指示されている。それを確認に行ったのだ。同様な事がC組、D組でも行われており、更に同じ事が、別の学年でも行われているのだった。
 B組の様子見を見に行った女子自警部部員は、直ぐにA組の教室に戻って来て、教室の後側に集合した女子グループに声を掛ける。

「A組女子、人数を教えて。」

「二十三人です。」

 たまたま、列の先頭付近に居た西本さんが、代表として人数を申告していた。

「では、B組の女子グループと一緒に地下のシェルターへ移動します。走る必要は、ありません。落ち着いて、付いて来てください。」

 女子自警部部員は無線機を口元に当て、本部に報告を入れる。

「一年AB、女子四十六名。移動開始します。」

 全学年の全生徒が一度にシェルターへと向かうと、廊下で渋滞が起きてしまい、却ってシェルターへの移動時間が余計に掛かる結果となるので、自警部と生徒会がルートやタイミングを管理しているのである。
 先ず、各教室の女子生徒がシェルターに向かい、適度な時間差を置いて男子生徒がシェルターへと向かう。全ての教室では教師と自警部部員とが教室に生徒が残っていない事を確認し、シェルター側での人数確認を行って集計に間違いが無ければ、教師と自警部部員がシェルターへと移動し、全員の避難が完了と言う流れなのだった。

 茜達、A組とB組の女子生徒、計四十六名は女子自警部部員の誘導で、校舎二階から地下階へと階段を降りて行った。A組に来た女子自警部部員が先頭で誘導し、B組に来た女子自警部部員が最後尾に付いて、集団から外れる者がいない事を確認しているのだった。
 普段は用が無いので降りる事の無い地下階には、シェルターへの通路に入る扉が有る。通常時は鍵が掛けられていて生徒が入る事は出来ないが、非常時や訓練の時は当然、解錠されるのだ。
 シェルターへと通じる長い通路は、それ程狭くはない。大人が二人並んで、余裕で歩ける位(くらい)の幅が有り、天井も極端に低くはない。しかし、地下だから当然だが校舎の廊下の様な窓は無く、電灯は最低限の数しか取り付けられていないので印象は薄暗く、それ故、息が詰まる様な狭苦しさを覚えるのだった。
 或いは「窓のない閉鎖された通路を大勢で歩いている所為(せい)で狭苦しく感じるのか?」とも、茜は思ったが、「でも、独りで、この通路を歩くのも嫌だな」と思うのだった。「そう言えば、中学の時も訓練や、本当の避難で地下道を歩いたっけ」と、突然、こんな事は去年迄(まで)は普通の事だったのを思い出した茜は、当たり前の様に隣を歩いていたブリジットに、囁(ささや)く様に言った。

「忘れてたね、こんな感じ。」

「そうね。」

 ブリジットは短く同意すると、左手で茜の右手を取り、ぎゅっと握った。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。