WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第19話.02)

第19話・Ruby(ルビィ)と天野 茜(アマノ アカネ)

**** 19-02 ****


「おー、お疲れー皆(みんな)。放課後なのに、偉いね~。」

 呼び掛けに笑顔で返す、畑中である。
 兵器開発部の面々が畑中と立花先生の近くまで来ると、並べられた機体下部から格納庫の奥側を覗(のぞ)いて瑠菜が声を上げるのだ。

「ああ、クレーンの方は可成り形が出来てますねー。」

「あー、あっちの作業は危険だから、近付かないでね。」

 透(す)かさず、釘を刺しておく畑中である。
 続いて直美が、畑中に問い掛けるのだ。

「それで、わたし達は何をお手伝いしましょうか?先輩。」

「いやあ、待っては居たんだよ。」

 畑中は身体の向きを変えると、南側の大扉前に並べられている大量の木箱へ向かって、目の前の AMF 越しに声を掛けるのだ。

「おーい、新田さーん。人手が来たよー。」

 呼び掛けられて木箱の陰から新田と倉森が姿を見せ、新田が声を返して来る。

「はーい。皆(みんな)、こっちお願い。」

 兵器開発部のメンバー達に対して、新田は右手を振って見せる。直美達は機体の間を縫う様に、その二人の方へと駆け足で向かうのだ。
 そんな彼女達の背中へ、畑中は声を掛けるのである。

「それじゃ、そっちの応援、宜しくー。」

 そこで立花先生は、畑中に尋(たず)ねるのだ。

「彼方(あちら)は、資材の検品?」

「ええ、Ruby と Pearl の載せ換えで、ケーブルやらブラケットやら、大量に必要になるので。その他にも、交換用の予備パーツとかも持って来てますから。」

「それは、大変そうね。」

 立花先生は苦笑いを浮かべて、納得したのだ。

 一方、新田と倉森の元に到着した、兵器開発部のメンバー達である。
 最初に、直美が確認するのだ。

「検品ですか?」

 それには、倉森が答える。

「うん、そう。発送元でもチェック済みなんだけど、漏れが無いか、こっちでもチェックするのよ。それから、機体毎(ごと)、作業順に仕分けね。」

「取り敢えず、これ、箱毎(ごと)の発送リストね。」

 そう言って新田が差し出す紙片の束、二冊を直美と樹里が受け取るのだった。そこで、直美は恵が彼女達の方へと歩いて来るのを見付けるのだ。
 恵が合流するのを待って、新田が作業の説明を始める。

「それじゃ、説明するけど。取り敢えず、この箱から検品を始めます。梱包材を剥がすとポリ袋に入った加工済みのケーブルが入ってるけど、袋は破らないでね。で、袋に記載されてる物品コードを、発送リストと照合してちょうだい。照合が終わった物は、あっちとこっちの小箱へ分類します。向こうのが Pearl 用で、こっちのが Ruby 用。物品コードの先頭のアルファベット、Rが Ruby で、Pが Pearl です。その次のアルファベットが作業順で、AからFの記号に合わせて小箱へ入れてちょうだい。」

 その説明を聞き乍(なが)ら、直美から発送リストを受け取った恵は、紙片を次々と捲(めく)って居るのだ。それは、樹里も同様である。

「ここ迄(まで)、何か質問が有る?」

 そう新田が確認するので、恵が手を挙げて訊(き)くのである。

「あの、物品コードって、後半の番号が重複する物が有ります?」

 それには、倉森が答えるのだ。

「いえ、見ての通りRとPを合わせて、番号は連番だから重複する筈(はず)はないけど。どうして?」

 すると、今度は樹里が声を上げるである。

「ですよね。とすると、これはミスプリかな?八ページ目と十一ページ目。」

 続いて、恵。

「あと、二十三ページ目も。」

「え?嘘…。」

 慌てて、新田は手持ちのリストを捲(めく)って、確認を始めるのだ。それを横から、倉森も覗(のぞ)き込む。

「あ、ホントだ。同じ番号が並んでる。」

「あら、ホント。」

 新田が声を上げると、続いて倉森も確認して所感を漏らすのだ。

「みなみさん、これは誰に確認したらいいんでしょう?」

「取り敢えず、星野さん?かなあ、管理課の。」

「ちょっと、連絡してみます。」

 新田は自分の携帯端末を作業着のポケットから取り出して、試作工場へと通話依頼を送信する。会社の固定電話への通話なので、先方には直ぐに繋(つな)がるのだ。因(ちな)みに、この時代でも電話の存在自体は、特に変わりはない。但し、専用の電話回線と言うのは既に無くなっており、各種通信サービスの一種として回線は統合されている。

「あ、製作三課の新田です。工程管理課の星野さん、お願いします。」

 新田が掛けた番号は、試作工場の大代表である。先方で内線を回す間、暫(しばら)く待ってから、新田は話し始める。

「製作三課の新田です。天神ヶ﨑…はい、そうです。はい…それで、現地で検品を…ええ…いえ、リストがですね、物品コードに重複が、え?…いやいや、ホントに。…えーと、八ページと十一、二十三ページに…それで…はい?リストのリビジョンですか?」

 そこで透(す)かさず、倉森がリストの表紙の改訂(リビジョン)番号を、横から告げるのだ。

「1.7。」

 それを聞いて、新田は通話を続ける。

「1.7、です。…え、リビジョンが古い?んですか。最新が2.1…はい…はい…解りました。お願いします。…はい、失礼します。」

 そこで新田は通話を終えたのだ。傍(かたわ)らで状況を見守っていた倉森は、尋(たず)ねるのだ。

「何(なん)だって?星野さん。」

「間違って、古いリビジョンのリストをプリントアウトして入れちゃったらしいって。取り敢えず最終リビジョンのデータを、送って呉れるそうです。わたしの端末宛てで。」

 そこで恵は、新田と倉森に提案するのだ。

「それなら、此方(こちら)でプリントアウトしましょうか?」

「そうね、お願い出来る?」

 倉森が改めて依頼して来るので、恵は樹里に確認するのである。

「出来るよね?城ノ内さん。」

「はい、大丈夫ですよ。データさえ頂ければ。 それよりも、今迄(いままで)チェックしてた部分に、影響は無いですか?」

 樹里に問われて、新田は笑って答える。

「あははは、前の方はリストの記載は合ってたみたいだから、取り敢えず大丈夫だよ。 しかし、二人共、良く間違いに気が付いたよね。」

 樹里と恵は一度、顔を見合わせて、それから恵が言うのだ。

「連番になってる風(ふう)な所に、同じ番号が並んでたら気が付きますよ。ねえ、城ノ内さん。」

 樹里は、黙って唯(ただ)、頷(うなず)くのだった。
 その様子を見て、新田は言うのである

「まあ、確かに。それで出荷時に、何度もリストを改訂してた、って云ってましたけど。兎に角、番号がダブってる所からあとは、物品コードと品目がズレてるらしいから…。」

 そこで、新田が握っている彼女の携帯端末から、着信のメロディが流れる。新田は直ぐに、その内容を確認するのだ。

「ああ、来た来た。リストのデータは、表計算のファイルね。」

「それじゃ、わたしの端末に送って頂けますか?」

 樹里は制服のポケットから自分の携帯端末を取り出して、言う。

「あー、ゴメン。城ノ内さんのアドレス、知らないんだ、わたし。」

「それじゃ、一旦(いったん)、わたしに送って。わたしが転送するから。」

「お、みなみさん、何時(いつ)の間にアドレスをゲットしてたんですか…と。はい、送りました。」

 新田は倉森の提案に従って、素早く携帯端末を操作するのである。間も無く、今度は倉森の携帯端末が鳴り、引き続いて倉森も携帯端末を手早く操作するのだ。
 そして、最終的に樹里の携帯端末へとデータのファイルが転送され、樹里は其(そ)れを開いて確認するのだった。

「はい。確かに頂きました。リビジョンは 2.1、間違いないですね。それじゃ、部室でプリントアウト、やって来ます。」

 そこで突然、クラウディアが手を挙げて発言する。

「あの、リストがデータになってるのでしたら、チェックの集計アプリとか、作っちゃいましょうか? 紙でバラバラに管理するより、いいんじゃないかと。」

 その提案に就いて、倉森が問い返すのだ。

「え~と、具体的には、どんな感じに?」

「そうですね、物品コードと品目に有り無しのチェックを付けて、分類先の番号とか記録出来る程度でしょうか。学校の実習用サーバー上で走らせて、そこに各自の携帯端末でアクセスして使用する感じです。他の人がチェックした内容も一つのデータに反映されますから、各人が紙に記入するよりは便利かと。」

「確かに、大人数でバラバラに紙に記入したら、最後は全部付き合わせてダブリとか無いか、チェックしなきゃだし。」

 真面目な顔で言う新田に、クラウディアは微笑んで伝える。

「その手間は省けるかと。」

「どうします?みなみさん。」

「此方(こちら)は構わないけど、時間が掛かるんじゃない?」

 心配そうに言う倉森に対して、今度は維月が笑顔で発言するのだ。

「その程度なら、三人でやれば、デバッグも含めて三十分程度、かな。ねえ、樹里ちゃん。」

「そうねぇ…カルテッリエリさんは、何か使えそうなテンプレートとか、持ってるの?」

「勿論です。そうでなきゃ、提案してません。」

「そう。なら、問題無いと思うけど。 どうでしょう?新島先輩。」

 突然、判断を振られて、直美は慌てて口を開くのだ。

「え?何(なん)で、わたしに訊(き)くのよ。」

 くすりと笑い、説明したのは恵である。

「副部長、だからでしょ。」

「あー、そうか。うん、それじゃ、三人にはソフトの方、やって貰おうか。」

 直美の指示のあと、続いて恵が言う。

「アプリ作ってる間、こっちはこっちで作業進めたいから。リストのプリントアウトも、お願い出来る?城ノ内さん。」

「それは構いませんよ、プリントは十部位でいいですか?」

「いいですよね?倉森先輩。」

 樹里に訊(き)かれて、恵は倉森に確認するのだ。倉森は頷(うなず)いて、応える。

「それじゃ、そう言う事で、お願い。」

 以上の様に、月曜日の兵器開発部の活動は始まったのである。そして、その日の作業予定を消化して、活動は午後七時を過ぎた頃に終了したのだった。

 

- to be continued …-

 

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