WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第19話.03)

第19話・Ruby(ルビィ)と天野 茜(アマノ アカネ)

**** 19-03 ****


 二日目、火曜日。この日も第三格納庫での作業は、予定通りに継続している。
 お昼前には、本社から飛来した社有機で、開発部ソフト部隊からの人員、乃(すなわ)ち安藤、日比野、風間の三名が移動して来ていた。風間は安藤と同じく Ruby 開発チームの一員で、安藤とは大学時代の後輩なのだ。年齢的には安藤の三歳下で、「沙織(サオリ)」との名前から井上主任に「サオちゃん」と呼ばれているのが彼女である。今回派遣されて来た三名が揃(そろ)って女性なのは、兵器開発部のメンバー達に配慮した結果なのだった。因(ちな)みに、風間が天神ヶ﨑高校に来校したのは今回が初めてである。
 さて、格納庫内部での動きとしては、第三格納庫に格納されていた F-9 改二機が、この日の午前中に第二格納庫へと移動となった。これは、Ruby と Pearl の換装作業スペースを確保する意味も有るが、翌日に到着する『空中撃破装備』を格納するには、既に第三格納庫が手狭になっていたからだ。
 第三格納庫には F-9 戦闘機を横に三機並べて格納が可能なのだが、HDG-A01、B01、C01、及び、B01 用の飛行ユニットがそれぞれのメンテナンス・リグに接続されて格納されており、その分だけスペースが圧迫されているのだ。従って、F-9 型機を横に並べて入れられるのは二機が限界なのである。
 AMF とC号機用の飛行ユニットは両機共、機体規模は F-9 戦闘機とほぼ同じなので、これらを F-9 改と共に格納するには、F-9 型四機を格納する事と同等になるのだった。そこで、F-9 改二機を格納庫奥側から北側に寄せて並べて駐機して、C号機用の飛行ユニットは F-9 改二機の間(あいだ)前方、つまり南側に、AMF はC号機用飛行ユニットの東側に駐機していたのだった。
 この状態で、大きな門形クレーンの組み立てと、搬入した資材を広げての検品と仕分けを続けるのは、流石に困難が予想されたので、火曜日の午前中から F-9 改の二機を第三格納庫より引き出す事が予定されていたのである。その為に、組立中のクレーンや、パレットに載せられた資材の木箱、AMF やC号機用飛行ユニット迄(まで)も、一旦(いったん)、庫外へ移動させる等、手間としては無駄な作業の発生となったのだった。これは、F-9 改を移す第二格納庫側の、受け入れ準備の都合でもあり、月曜日に第二格納庫側の整理が行われていたのである。これらに就いては、事前にやっておけば良さそうなものだったのだが、そうは出来なかったのは第二格納庫で社有機の整備を行う藤元等(ら)の、純粋に作業スケジュールが原因である。
 そんな流れで前日から滞在していた畑中達が、この日の第三格納庫での作業が再開出来たのは午後になってから、なのであった。とは言え、彼等が午前中に暇だった訳(わけ)ではなく、藤元達の F-9 改移動に関連しては、第三格納庫内へ前日に運び込んだ資材を移動して F-9 改の移動経路を確保する等の、相応の作業が発生していたのだった。

 そして放課後である。
 第三格納庫には続々と、その日の授業を終えた兵器開発部のメンバー達がやって来るのだ。緒美と茜の二人は、昨日に続いて部室で仕様書と取扱説明書の読み込みを続行し、その他の部員達は格納庫フロアへと降りて来るのだった。
 その中でも、ソフト担当の三名、樹里、維月、そしてクラウディアは、AMF の下で Ruby のバックアップ作業を実施している安藤達の所へと向かったのである。
 AMF は機首部が開放状態になっていて、勿論、HDG は接続されてはいない。安藤と風間の二人は、格納庫フロアに胡座(あぐら)を掻(か)いて座っており、膝の上にはそれぞれがモバイル PC を乗せているのだ。その PC はケーブルで、AMF を介して Ruby に接続されているのである。
 日比野はと言うと、安藤と風間の背後に立って居るのだった。これは、日比野が Ruby の担当ではないからである。

「安藤さん、お疲れ様で~す。」

 安藤に対して樹里が、友達の様に声を掛けるのだ。

「はい、お疲れ。授業、ご苦労様。」

 樹里の態度が当然の様に、安藤も声を返す。
 一方で維月は、少し気を遣って安藤に尋(たず)ねる。

「其方(そちら)は? 初めてお目に掛かります、よね?」

 維月に言われて気付き、安藤は同僚の風間を紹介するのだ。

「ああ、ウチの風間とは初めてだったよね。Ruby 開発チームの風間 沙織、仲良くしてあげてね、皆(みんな)。今年、三年目?だから、まだ新人ちゃん扱いなんだけど、ウチの課では。」

 続いて、風間が声を上げる。

「どうも、風間 沙織です。安藤先輩とは、大学時代の同じ学部の後輩です。皆(みんな)、宜しくね。」

「ほら、先輩って言わない。」

 安藤は風間の後頭部を、軽く押して注意するのだ。

「解ってますよぉ、安藤さん。今のは、説明の為、敢えて、です。」

 そこで日比野が、説明の為に口を挟(はさ)む。

「あ、社内では男女問わず、基本は『さん』付け、だからね。 ま、上司とかは、例外的に『ちゃん』や『君』で呼ぶ人が多いけどね。」

 続いて、安藤が兵器開発部の三人を風間に紹介する。

「で、こっちから城ノ内さん、維月ちゃん、クラウディアさん。」

「ええ、皆さんの、お噂は予予(かねがね)。画像とかでも何度か見たから、分かりますよー。」

 その風間の応答を聞いて、微笑んで樹里が言うのだ。

「それは光栄ですけど。因(ちな)みに、噂って、どんなです?」

「いや、そんな悪い噂じゃなくて。城ノ内さんに就いては、五島さんが何時(いつ)も感心してるとか。 維月さんは、井上主任の妹さん、ですよね? クラウディアさんに就いては、凄いハッ…。」

 風間が『ハッカー』と言い掛けた所で、安藤が風間の後頭部を掌(てのひら)で叩(はた)いたのである。風間は透(す)かさず、言い直すのだ。

「…あー、いや、武勇伝は色々と。」

 クラウディアは苦笑いし乍(なが)ら、コメントを返すのである。

「まあ、御存知でしたら、色々と説明の手間が省けて結構ですけど。」

「ゴメンね~こいつ、学生時代から色々と、がさつでさ。」

 そう言って安藤がクラウディアに詫(わ)びるので、風間が抗議するのだ。

「がさつって、酷いなあ…。」

 そんな遣り取りを、日比野は笑って見ているのだ。

「あははは、ホント、お二人を見てると飽きないわー、漫才みたいで。」

「それは、どうも。」

 安藤は不服そうに、そう言葉を返したのである。
 そこで、維月が日比野に尋(たず)ねるのだ。

「あの、日比野先輩。年齢的には、安藤さんの方が年上ですよね?」

「そうよ。安藤さんは、二個上、ですよね?」

「そう、そう。で、こっちの風間は日比野さんの一個下。会社的には日比野さんが、わたしの二年先輩で、風間は日比野さんの五年後輩。ホント、天神ヶ﨑の卒業生が羨(うらや)ましいわ。」

「そうかー、もしもわたしが天神ヶ﨑を卒(で)てたら、会社的には安藤さんの先輩になれたのかー。」

 そんな風間の思い付きに対し、安藤は心底嫌そうにコメントを返すのである。

「何よそれ、屈辱的。」

「何(なん)でですかー。」

「そもそも、貴方(あなた)が受験しなかった時点で、可能性はゼロだったのよ。」

「だって、天神ヶ﨑なんて学校、知らなかったし。知ってれば、受験してたかもですよ?」

「いや、当時の先生が勧めなかったんでしょ?それは無理だって判断されたからじゃない。」

「そうかなぁ。」

「そうよ。悔しかったら、会社でわたしよりも出世して見せる事ね。」

「ううっ、頑張りマス。」

「うん、ガンバレ、ガンバレ。」

 安藤と風間はそれぞれがモバイル PC のディスプレイを見詰めつつ、時折、キーボードをタイプし乍(なが)ら、そんな会話を繰り返しているのだった。
 日比野は小さな声で、隣に立つ樹里に語り掛けるのである。

「ね、漫才みたいで面白いでしょ?」

「あははは~。」

 樹里は少し反応に困って、愛想笑いを返したのだった。そして、樹里は安藤に尋(たず)ねるのだ。

「それで安藤さん、現在の進捗状況は?」

「ああ、Pearl へ移動するライブラリ・データのコピーは、これで、ほぼ終わりかな。今は、コピーが間違ってないか検証(ベリファイ)ツールの実行中。これが終わったら、いよいよ、Ruby のシャットダウン作業ね。」

 その安藤の言葉を受けて、維月が Ruby に話し掛ける。

「それじゃ、少しの間、お別れね、Ruby。」

 その呼び掛けに、Ruby は直ぐに反応するのだ。

「ハイ、維月。でも、三日後には再起動する予定ですよ。」

 今度は樹里が、Ruby に問い掛ける。

「今度、目が覚めたら、新しい機体よ。楽しみ?」

「そうですね、樹里。しかし、慣れた機体から離れるのは、少し残念にも思います。」

「寂しい?」

「どうでしょう? これが『寂しい』と形容される感覚に該当するのか、検討の余地は有ります。」

「そう。難しいね。」

「ハイ、樹里。」

 そこで風間が、口を挟(はさ)むのである

「おお、何だか Ruby が大人みたいな事言ってる。」

「そう言うコメントしか出来ない貴方(あなた)は、子供みたいよねぇ…。」

「何(なん)ですか、安藤さん。何か、わたしに恨みでも有るんですか?」

「恨みは無いけど、残念だとは思ってるの。」

 溜息混じりに安藤が然(そ)う言うので、風間は日比野に泣き付く様に声を上げるのだ。

「日比野さーん、安藤さんが酷いんですよー。」

「あはは、まあ、安藤さんも皆(みんな)の前で照れてるだけだから。風間さんは、もっと毅然としてればいいのよ。」

「そうそう、わたしに突っ込み所を見せるのが悪い。」

「何(なん)ですかー、小さな事まで探し出して突っ込むくせにー。」

「それが、わたしの仕事だもの。会社の先輩として、指導するのが役割なんだから。ほら、黙って作業続ける。」

「はーい。」

 そんな二人の遣り取りを見て、維月が苦笑いし乍(なが)ら日比野に訊(き)くのだ。

「何時(いつ)も、こんな感じなんですか?」

「あはは、まあ、今日はちょっと、風間さんが浮かれてるのかな? 社内で話題の天神ヶ﨑に来たのが初めてだし、大好きな先輩と一緒に出張だし、で。」

 その日比野の見解を、風間は笑顔で否定するのである。

「え~、そんなんじゃないですよー。」

「いいから、黙って作業してなさい。」

「はーい。」

 安藤は自分のモバイル PC を床面に置いて腰を上げると、日比野と維月達の方へと移動するのだ。

「もう、この子と居るとノリが学生時代に戻っちゃって、調子が狂うわ。」

「まあまあ、仕事はちゃんと出来てるんだから、いいじゃない?」

 ニヤリと笑って日比野が言うので、安藤が抗議するのである。

「そうやって皆(みんな)が甘やかすから、わたし位は厳しくしてるのよ。」

「あら、貴方(あなた)が厳し過ぎだから、主任を始め、皆(みんな)が優しくしてるんじゃない?」

「あはは、卵が先か、鶏が先か、みたいですねー。」

 樹里が笑ってコメントする一方で、維月は申し訳無さそうに安藤に言うのだ。

「何(なん)だか、姉がご迷惑を掛けているみたいで…。」

 安藤は、慌てて否定する。

「違う違う、井上主任は悪くないから、維月ちゃん。 もう、日比野さんが変な事、言うから。」

「あははは、ゴメンね~でも維月ちゃん、職場の雰囲気がギスギスしてないのはホントだから。その辺り、主任の影響力とか大きいのよね。 三人には一度、本社の見学とか、そんな機会が有ればいいのにね。」

「まあ、三人共が、ウチの課への配属されるのは、ほぼ決定事項だからさ。楽しみにしてるといいわ。」

 安藤の見解に、苦笑いで樹里は言うのである。

「いえいえ、まだ卒業しませんよ、わたし。」

 樹里の言(げん)に対して、日比野が微笑んで安藤に声を掛ける。

「そう言えば確か、井上主任が、卒業して無くていいからウチの課に樹里ちゃんを寄越(よこ)してって、上に掛け合ってたよね。」

 今度は維月が、呆(あき)れ顔でコメントするのである。

「又、無茶苦茶な事を…。」

 すると安藤が、その人事上の要望に関する結末を語るのだ。

「ああ、その件なら流石に学校側が NG 出したらしいわ。」

「あー、だよねー。あの校長先生が許可する訳(わけ)無いよねー。」

 気の抜けた様な返事をした日比野は、天神ヶ﨑高校の卒業生である。だから、塚元校長がどんな人物なのかを、よく理解しているのだった。

 

- to be continued …-

 

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