WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第18話.12)

第18話・新島 直美(ニイジマ ナオミ)

**** 18-12 ****


 そして加納は、前方を飛行する F-9 改二号機に、何かを思った様に「ん?」と声を上げる。
 続いて「ああ。」と、納得した様に頷(うなず)くのだ。

「どうかしましたか?加納さん。」

 後席から直美が声を掛けると、加納は「ああ、ちょっと、ね。」と応えた後で、通信で F-9 改二号機を飛び出すのだ。

「ECM01 より、ECM02。少し流されてるけど、大丈夫ですか?」

 その呼び掛けに、慌てた様に樋口が応えるのだった。

「はい、すいません! 修正してます。」

 続いて、沢渡の声が聞こえる。

「今、ちょっと、トリムの当て方に就いて、講習をしてた所です。」

「そうですか。F-9 改(こいつ)は、横風の影響を受け易いですから。」

 加納は、笑って応じるのだった。そのコメントに、直美が付け加えて言うのだ。

「アンテナの分だけ、側面の面積が増えてますからね。」

「そう言う事です。」

 そう直美に応えて、加納は再(ふたた)び樋口に通信を送る。

「ECM02、先頭(リーダー)は成(な)る可(べ)く真っ直ぐ飛んでくださいよ。後続がビックリしますから。」

「ECM02 です。了解してます。」

 申し訳無さ気(げ)に、樋口は応えたのだった。
 そんな事も有りつつ、一行(いっこう)は天神ヶ﨑高校への帰路を進んだのである。


 そして全機が天神ヶ﨑高校に到着すると、HDG-C01、B01、AMF、F-9 改二号機、F-9 改一号機、そして随伴機を務めた社有機の順に着陸を実施したのだ。ブリジットのB号機に関しては着陸に滑走路は不要なので、クラウディアのC号機と同じタイミングで、直接、駐機場へと降り立ったのである。だから或る意味、最初に着陸したのはブリジットのB号機だったのだ。
 全機の着陸が終わり、格納庫へと戻って来た頃、時刻は午後四時を少し回っていたのである。
 HDG 各機は、格納庫に入るとB号機は飛行ユニットを専用のメンテナンス・リグに接続して本機と切り離すのだが、飛行ユニットが航空機の形態であるA号機とC号機は駐機作業を終えてから本機を切り離す。そして、それぞれが本機のメンテナンス・リグへと接続して、漸(ようや)くドライバーの接続が解除出来るのだ。
 一方で F-9 改二機は、格納庫の中まで自力で進むと、操縦席には地上から昇降用のタラップが架けられ、搭乗員はエンジンの停止作業が済めば直ぐに降りられるである。
 機上で駐機作業の終了を待っていた直美からは、F-9 改一号機の後方から天野理事長が歩いて来るのが見えた。その事を加納に告げようかとする前に、加納が直美に声を掛けたのである。

「どうぞ、新島さん。先に降りてください。」

 加納は前席で、整備担当者に渡す書類にチェックやら、サインやらを書き込んでいる。

「あ、はい。では、お先に。」

 直美は然(そ)う応えて、座席から立つと転落しない様に気を付けつつ、タラップに足を掛ける。

「お疲れさん。足元、気を付けてね。」

 タラップの脇から整備担当の平田が、直美に声を掛けたのだ。

「あ、はい。どうも。」

 直美は、そんな返事を返して床面へと降り、タラップの前から離れてヘルメットを外す。そして顔を上げると、眼前に立って居た天野理事長と目が合ってしまったので、直美は会釈をするのだった。

「ご苦労様、新島君。大層な活躍だったみたいじゃないか。」

「いえっ、わたしは大した事は…。」

 天野理事長に突然、声を掛けられて直美は恐縮しつつ、そう言葉を返したのだ。
 そこに、少し離れた場所から緒美の声が届くのだ。

「新島ちゃーん。ちょっと、いい?」

 その声を聞いて、直美は慌て気味に天野理事長に言うのである。

「すいません、鬼…部長が呼んでいるので。」

「ああ、構わんよ。行ってあげなさい。」

「失礼します。」

 直美はもう一度、小さく頭を下げてから、独(ひと)り笑いそうになるのを堪(こら)えつつ駆け足で緒美の方へと向かったのだ。
 それと同時に、加納が操縦席から降りて来るのだった。

「お疲れさん、加納君。」

 労(ねぎら)いの言葉を掛ける天野理事長に対して、タラップから降り立った加納は姿勢を正し、頭を下げて言うのだ。

「申し訳ありませんでした。生徒さんを、危険に曝(さら)してしまいました。」

 しかし天野理事長は、微笑んで言葉を返すのである。

「まあ、あの状況なら仕方無いかな。結果的に全員無事に帰って来た事だし、文句は何も無いよ。だから、気にしなくてもいい。頭を上げて呉れ、加納君。」

「そう言って頂けると、幾分、気は楽ですが。」

 顔を上げた加納は、神妙な表情ではある。
 天野理事長は加納の前に歩み寄ると、右手で向かい合った加納の左肩を横から叩き、言ったのだ。

「兎に角、無事で何よりだ。取り敢えず、装備を降ろして来なさい。又、後で話そう。」

「はい。」

 短く応えた加納に、大きく一度、頷(うなず)いて、天野理事長はその場を後にしたのである。一方で加納は、必要な書類を平田に渡して、装備を降ろす為に第二格納庫へと向かったのだった。


 さて、緒美達と合流した直美である。
 駆け足で近寄って来た直美は、何かニヤニヤとし乍(なが)ら緒美に声を掛けて来る。

「なあ~に~鬼部長~。」

「何よ、それ?」

 怪訝(けげん)な表情で聞き返す緒美だったが、直美は唯(ただ)、笑うのみで明確には答えないのだ。

「あははは~何でもない。」

 困惑顔の緒美を置いて、恵も直美に声を掛けるのである。

「取り敢えず、お疲れ様、副部長。」

「いえいえ。ともあれ、色々上手く行って、良かったわ。」

 そう応じる直美に、立花先生が言うのだ。

「まったく、加納さんが無茶な事、言い出した時は、どうなるかと肝を冷やしたけどね。」

 立花先生のコメントに苦笑いを返す直美に、緒美が問い掛ける。

「それよ。新島ちゃん、何(なん)て言って、加納さんを焚き付けたの?」

「『焚き付けた』って、人聞きが悪いなぁ。わたしは助言しただけよ、『合理的な提案なら、鬼塚は乗りますよ』って。」

 今度は恵が、不審気(げ)に聞き返すのだ。

「本当(ほんと)に?」

「本当(ほんと)、本当(ほんと)。 大体、鬼塚も同じ様な事、考えていたんでしょう?」

 直美に問われ、緒美は頷(うなず)いて言う。

「まあ、そうだけど。正直(しょうじき)、加納さんが職務に反して、冒険に乗って呉れるとは思ってなかったわ。」

「どうして? コマツ01 の人と知り合いだったの、最初の通信で分かってたでしょう?」

 不思議そうに、恵は緒美に問い掛けるのだ。緒美は、極めて真面目な顔で答える。

「そんな個人的な感情よりも、お仕事の方を優先しそうじゃない?大人なんだから。 ねえ、先生?」

 緒美から話を振られた立花先生は苦笑いで、言葉を返すのだ。

「どうしてわたしに聞くのよ、緒美ちゃん。」

「あー…いえ、何と無く。」

「わたしだって、人命と仕事を天秤に掛けられたら、そりゃあ人命の方を優先しますよ。」

 その答えを聞いて、クスクスと笑い乍(なが)ら、恵は言うのである。

「だから、天野さんが無茶やった時、怒ってたんですものね~。」

「そう言う事よ。 徒(ただ)、今回の場合(ケース)はね、防衛軍の人を助ける為に民間の未成年者を巻き込んだって一点で、どうかとは思うのだけれど…。」

 立花先生が途中まで言った所で、直美は自分を指して尋(たず)ねる。

「『民間の未成年者』って、わたし?」

 それには緒美が、直様(すぐさま)、言葉を返す。

「他に誰が居るのよ? あと、天野さんの事も、当てにしてたしね。」

 続いて立花先生が、発言を続けるのだ。

「…うん。とは言え、F-9 が不利なのを承知で盾の様に使う指揮管制の命令も、ね。まあ、救援は向かっていた訳(わけ)だけど…勿論、防衛軍の立場も理解は出来るけれど、それでも、F-9 のパイロットも人には変わりない訳(わけ)だし。」

「難しい所ですよね。」

 恵は立花先生が煩悶(はんもん)する様子に同情的なコメントを送るのだが、直美の方(ほう)は気楽な調子で結論を付けるのである。

「まあ、結果オーライって事で、いいじゃないですか。 それよりも、天野を当てにしてたにしても、結果、四機中の三機を加納さんが、あの F-9 改で撃墜したんだから、凄いじゃない?」

 その、直美の見解には、半(なか)ば呆(あき)れた様に緒美は同意するのだ。

「それに就いては、異論は無いわね。」

「鬼塚は、そこ迄(まで)、想定してたの?」

「まさか。 ECM01 の投入は、飽く迄(まで)、牽制(けんせい)が目的よ。距離を取って注意を引いて、防衛軍の救援が有効射程に入るか、AMF が戻って来る迄(まで)の時間稼ぎ。 中射程空対空ミサイルで二機撃墜ぐらい迄(まで)は、まあ、『上手く行けば』って考えもしたけど、距離が詰まってからの短射程空対空ミサイルの辺りは、もう、ね。」

「そうなんだー。」

 緒美の説明に、唯(ただ)、感心した様に恵が声を上げるのだった。それに続いて、直美が言う。

「まあ、加納さんも勝算が有っての事だから。もしもの場合にはアンテナを投棄する準備まで、やってたんだけどさ。」

「まあ、そうでしょうね。」

 緒美は微笑んで、一言を返したのである。

「高価な装備なんだから、そんな事態にならずに済んで良かったわ。」

 この立花先生のコメントは、半分、冗談である。それが分かっているから、直美は笑って言葉を返すのだ。

「あはは、先生なら然(そ)う言って呉れると思ってました~。」

 そして緒美と恵も、直美に釣られる様に笑うのだった。
 そんな中、思い出した様に直美が声を上げるのだ。

「あ、それで。そもそも何(なん)の用だったの?鬼塚。」

「え?」

「さっき、呼んでたでしょ。」

「ああ…。」

 急に問い掛けられて驚いた表情から一転し、緒美はくすりと笑い、答える。

「…その件なら、もう済んだわ。 デブリーフィングの前に、どうして加納さんが、あの局面で協力して呉れたのか、それを確認しておきたかったのよ。」

「ああ、そう言う事。」

「取り敢えず、デブリーフィングの前に着替えていらっしゃい、直美ちゃんも。」

 一段落が着いた所で、立花先生は直美に然(そ)う促(うなが)すのだ。F-9 改から降りたばかりの直美は、当然、戦闘機搭乗用に飛行服を着ていて、座席に接続する為のハーネスも着用しているし、ヘルメットも抱えた儘(まま)である。
 直美は周囲を見回して、恵に尋(たず)ねる。

「天野達は?」

「今(いま)し方(がた)、上がって行ったわよ。三人とも。」

「そう。それじゃ、着替えて来ますか。」

 そして直美は、二階通路に上がる階段へと、駆け足で向かったのである。

 

- to be continued …-

 

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