WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第20話.05)

第20話・鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)と森村 恵(モリムラ メグミ)

**** 20-05 ****


「先生の様子は?森村ちゃん。」

 緒美の問い掛けに、恵は表情を変えずに答える。

「明らかに、善(い)いお話じゃなさそうなの。お客さんも、来てるし。」

 そう言うと、恵は緒美にタオルを手渡すのだ。そのタオルで額の汗を拭(ぬぐ)う緒美に代わって、直美が恵に尋(たず)ねる。

「お客さん、って?」

「防衛軍の桜井さん。あと、理事長と校長も。」

「うえー…。」

 直美が感想を素直な声にするので、緒美はくすりと笑って其(そ)の場の一同に声を掛けるのだ。

「それじゃ、お待たせしちゃ悪いから。皆(みんな)、急いで部室へ戻りましょうか。」

「あ、それなら道具の片付けとか、わたし、やっておきますから。先輩達、お先にどうぞ。 そもそも、わたしは部員じゃないですし。」

 九堂が然(そ)う申し出るので、維月が続く。

「だったら手伝うよ、九堂さん。わたしも部員じゃないし。」

「あれ?井上さん、そうだっけ。」

「そうだよ。」

 意外そうな顔の九堂に、維月は微笑んで答える。一方で其(そ)の二人に、緒美が声を掛けるのである。

「じゃ、申し訳無いけど、お願いするわね。九堂さん、井上さん。」

 そうして、緒美、直美、恵、茜、ブリジット、そしてクラウディアは、その場を離れて部室へと向かったのだった。

 緒美達は部室に向かう途中で、瑠菜と佳奈、そして畑中と合流し、階段を上がって二階通路を抜けて部室奥側のドアから中へと入る。樹里は本社開発部へ今日のデータを送る為に一足(ひとあし)先に部室に戻って来ており、その隣には立花先生の姿があった。そして、普段は茜やブリジットが座って居る入口側の席には、防衛軍の桜井一佐と、その両サイドに塚元校長と天野理事長が着席していたのだ。
 防衛軍の制服姿で着席している桜井一佐の存在は、兵器開発部のメンバーには見慣れた部室に於(お)いて、一種異様に見えたのである。

「皆さん、こんな所迄(まで)、ご苦労様です。」

 先(ま)ず、緒美が然(そ)う挨拶をすると、桜井一佐がニッコリと笑い言葉を返すのだ。

「いえ、急に押し掛けて、ごめんなさいね。」

「取り敢えず、挨拶は抜きでいい。早早(そうそう)に本題に入るから、皆(みんな)、適当に座って呉れ。」

 天野理事長が穏(おだ)やかに着席を促(うなが)すので、緒美から順々に空いた席にと座っていく。唯(ただ)、一人、恵は部室奥側のシンクの方へと進み乍(なが)ら言うのだ。

「兎も角、お茶位(くらい)は、お出しましょうか。」

「いいのよ、用が済んだら直ぐに帰るから、どうぞ御構(おかま)い無く。」

 桜井一佐が声を掛けるが、恵は意に介さない。

「お話の方、始めてください。わたしの事は、気になさらず。」

「あ、お手伝いします。」

 そう言って茜が席を立とうとするのだが、茜の右隣に席から瑠菜が、立ち上がる茜の右袖を引っ張って、言うのだ。

「天野、貴方(あなた)は座って聞いてなさい。どうせ、ドライバー担当の一年生が、一番聞いてなきゃいけない、お話だろうから。」

「ああ…はい。解りました。」

 茜は席に、座り直す。恵は、そんな茜に声を掛けるのだ。

「お茶を淹(い)れるのは、手が足りてるから大丈夫よ。ありがとうね、天野さん。」

「そう言う事ですので、始めてください。」

 続いて、緒美も言うので、桜井一佐は天野理事長の方へ視線を送るのだ。それに対して天野理事長は小さく頷(うなず)いて見せるので、桜井一佐は其(そ)れを確認して正面側に座って居る緒美の方へと向き、話し始める。

「では。 皆さんは察しが良さそうなので、わたしがここに来ている時点で、用件の向きに関しては見当が付いている事と思いますが。」

「と、言う事は、矢っ張り、ご用件は次の作戦への協力要請でしょうか。」

 間髪を入れず、緒美は桜井一佐に確認するのだ。桜井一佐は一瞬だけ苦い表情をしたが、冷静に答えるのだ。

「まあ、そう言う事です。」

 続いて、直美が朗(ほが)らかに発言する。

「そう言う事でしたら、理事長や先生方(がた)に伝えて頂ければ。わざわざ、ここ迄(まで)いらっしゃらなくても。」

「今回は、少し事情が違うので。その辺り、直接、説明しておかなければ、と。 民間の、しかも未成年者である貴方(あなた)達に協力を要請するのに当たって、100パーセントの安全を約束は出来ませんので。事が事だけに、ですね。」

「事情、と言われますと?」

 厳しい表情で話す桜井一佐に、真面目な顔で緒美が問い返した。桜井一佐は、落ち着いた様子で説明を続ける。

「今回、一番、様子が違うのは、観測された『ヘプタゴン』の数が、十二機と、過去最多である事です。これ迄(まで)で最多だった前回が八機でしたから、一気に 1.5倍です。」

「すると、エイリアン・ドローン…『トライアングル』の数で、百四十四機、ですね。」

 そう計算して見せたのは、緒美である。それを聞いたメンバー達は、少し騒(ざわ)めくのだが、それには構わず桜井一佐が言葉を続けるのだ。

「勿論、その全機が一箇所に殺到する訳(わけ)ではないと思っていますが、しかし、前回は降下して来た『トライアングル』の凡(およ)そ半数が九州西部から此方(こちら)へと向かって飛来しました。だとすれば、今回も七十機を超える数に対処しなければならない事は、覚悟しておく必要が有るでしょう。我々としては、常に最悪のシナリオを見据えて、準備をしておかなければなりません。」

 厳しい表情の桜井一佐に、今度は真面目に直美が尋(たず)ねる。

「それは、何時(いつ)ぐらいだと、見込まれているんですか?」

「予測では13日、来週の火曜日には地球軌道に到達する計算ですから、早ければ翌、水曜日。まあ、気象条件次第で三日位の幅は有るのでしょう。」

 それを聞いて指折り数えているクラウディアが、ポツリと言うのだ。

「なら、後期中間試験の前には終わる予定ね。」

 クラウディアの発言を聞いた塚元校長が失笑するので、天野理事長が苦言を呈するのである。

「校長、真面目な話をしているのだが。」

「失礼しました。」

 澄ました顔で、一言を返す塚元校長に、クラウディアが少しだけ申し訳無さそうに謝意を伝えるのだ。

「すみません、不謹慎でしたでしょうか?」

「いいえ、学生として、至極、真っ当な感想ですよ。」

 クラウディアは塚元校長の回答を得て、小さく頭を下げて見せるのだった。
 続いて、桜井一佐は一度、咳払(せきばら)いをして、仕切り直すのだ。

「では、続けますけど。よろしいですか?」

「どうぞ。お願いします。」

 その、緒美の返事を受けて、桜井一佐は説明を再開するのである。

「さて、先述の通り、記録的な数のエイリアン・ドローンに依る襲撃が予測されるので、天野重工さんには前回と同じ編成での電子戦支援を依頼したい訳(わけ)です。これも前回と同様に、参加各機への護衛態勢を準備して、民間協力者の安全には最大限の配慮を、お約束します。」

 そこで、桜井一佐が自身の左隣へ、詰まり塚元校長へと視線を送るものだから、塚元校長が緒美達に向けて口を開くのだ。

「念の為に、皆さんには言っておきますけど。 学校の判断として、当校の生徒が軍事作戦に協力する事は、賛成はしておりません。徒(ただ)、本校は天野重工の下部組織である以上、本社の経営判断には従わざるを得ません。但し、会社も学校も、それから政府であっても、皆さんの命に関わる様な活動への服務を命令する事は出来ませんので、嫌だったら素直に拒否していいんですよ。 こんな言い方は、責任逃れをしているみたいで、わたしも嫌ですけれど。」

 続いて、苦い表情で天野理事長が発言する。

「会社としても、若い諸君等(ら)に危険な任務を押し付けるのは本意ではない。 とは言え、HDG を効果的に活用出来る人員が、現状で諸君達だけだと言うのも、一方での事実だ。だから、諸君が次の作戦への協力を了承するのであれば、会社側として全面的にサポートする、そう言うスタンスだ。」

「それって、『判断を丸投げします』って言ってるのと同じじゃないですか。」

 落ち着いた口調で天野理事長に噛み付いたのは、茜である。実際、その場に居たメンバーの多くは、茜と同じ感想を持っていたのだが、それを茜が口に出来るのは、茜が天野理事長の身内であるからなのは言う迄(まで)もない。
 憤(いきどお)ると言うよりは、半(なか)ば呆(あき)れている表情の茜に、微笑んで緒美が言うのだ。

「天野さん、余り理事長を責めては、可哀想よ。理事長には、お立場も有るんだし。」

「それは、解ってますけど。」

 天野理事長は苦笑いで、発言を続ける。

「まあ、そう言われても仕方無い事は、承知しているよ、天野君。」

 天野理事長に続いて声を上げたのは、直美である。

「それで、わたし達の判断を確認する為に、わざわざ、お三方(かた)がいらした訳(わけ)ですか。」

「そう言う事だな。 それで、どうだろう?鬼塚君。」

 直美の問いに同意して天野理事長は、緒美に意思を確認するのだ。緒美は一呼吸置いて、答えるのである。

「わたしも理事長達と同じで、おいそれとは判断出来ないですね。実際に現場に立つのは、天野さん達一年生ですから。 天野さん、如何(いかが)かしら?」

「ちょっと待ってください、部長…。」

 茜は然(そ)う言って判断を保留した後、桜井一佐の方へと向き直る。

「桜井一佐、前回と違う事情って、敵の数の問題だけ、でしょうか? 他にも何か有れば、先にお聞かせ願いたいのですが。」

 問い掛けられた桜井一佐は一瞬、「ふっ」と笑って、それから説明を始める。

「勿論、その説明をする為に此方(こちら)まで出向いて来たんですから。説明の途中で結論を出す流れになったので、どうしようかと思っていた所ですよ。」

「あ、矢っ張り。それでは続きを、お願いします。」

 茜が微笑んで桜井一佐に声を掛けると、ばつが悪そうに天野理事長が桜井一佐に詫(わ)びるのだ。

「申し訳無いね、桜井さん。少しばかり話を急いでしまった。」

「いえ、我々よりも生徒さん達の方が冷静な様子で。 それはそれで、心強い事ですわね。」

 桜井一佐が天野理事長に向かって、そんな事を言うから塚元校長が思わず口を滑らすのである。

「それが、わたしには頭痛の種なんですけれどね。」

「あら、それは大変ですわね。 天野重工さんの方(ほう)で持て余している様でしたら、装備とセットで生徒の皆さんを防衛軍で引き取らせて頂いても構いませんよ。防衛軍は、優秀な人材は大歓迎ですので。」

 笑顔で桜井一佐が然(そ)う言うと、二十歳ほど年長である塚元校長も桜井一佐に負けない笑顔で言い返すのだ。

「生憎(あいにく)と、本校の生徒は売り物ではありませんし、特に持て余しても居(お)りませんので。」

「そうですか、それは残念です。」

 桜井一佐が返事をすると、二人は揃(そろ)って「うふふふ。」と笑うのだった。
 そこで天野理事長が、桜井一佐に声を掛けるのである。

「桜井さん、彼女達は当社の将来の幹部候補生として、育成中の学生だからね。余所(よそ)にやる訳(わけ)には、いかないんですよ。」

「ええ、その辺りの事情は御社(おんしゃ)の飯田さんから伺(うかが)っておりますので、承知しておりますよ、天野会長。」

「なら結構。」

 大人達の、そんな遣り取りに一段落が付いた所で、緒美が声を上げるのだ。

「それで桜井さん? お話の続きを。」

「ああ、ごめんなさい。」

 そして桜井一佐は数秒間、考えた後に話し始める。

「回りくどく話してみても仕方が無いので、はっきり言ってしまいますけど…。」

 一拍置いて、桜井一佐が続けた言葉に、兵器開発部のメンバー達は、それぞれに驚いたのである。

「ミサイルが、足りません。」

「え?」

 声を上げて反応したのは、茜とブリジットの二人である。
 他のメンバー達は、黙って顔を見合わせていたし、緒美は右の人差し指を眉間(みけん)に当て、目を閉じて俯(うつむ)いてしまったのだった。

 

- to be continued …-

 

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