WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

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STORY of HDG(第15話.02)

第15話・ブリジット・ボードレールと天野 茜(アマノ アカネ)

**** 15-02 ****


 その声を聞いて、思わず緒美は「あはは。」と笑い、続けて「ああ、矢っ張り?」と瑠菜に返したのである。一方で、三年生以外の兵器開発部メンバー達は一斉(いっせい)に AMF へと駆け寄り、その不格好に大きな機首の前へと回って、口口(くちぐち)に Ruby に話し掛けたのだ。
 そんな様子を眺(なが)め乍(なが)ら、恵は緒美に問い掛ける。

「知ってたの?緒美ちゃん。」

「いいえ。でも、多分、そうなるんだろうな、とは、見当が付いていたって言うのか。」

 その特別な感慨も無さそうな口振りを聞いて、直美は不満気(げ)に、緒美に言うのだ。

「だったら、言っといてよ。」

「だって、個人的な徒(ただ)の予想だし、確証は何も無いし。それに、本社からは事前の通達が何も無いって事だから、サプライズにしたいのかなぁって。 ねぇ、立花先生。」

 急に話を振られて、慌てて立花先生は声を上げる。

「誤解しないで、わたしも聞いてないから。 貴方(あなた)達は、知ってたんでしょ?畑中君。」

 そう立花先生に声を掛けられて、今度は畑中が慌てて答えるのだ。

「そりゃ、実装作業やってましたから、一月(ひとつき)位(くらい)前から、当然、知ってはいましたけど。この件に関しては、箝口(かんこう)令が出てましたからね、試作部には。」

 その畑中の弁明に続いて安藤が、そして日比野が発言する。

「箝口令(それ)に関しては、開発部(うち)も同(おんな)じよね。」

「隠しててゴメンね~。」

「いえいえ、社命と有らば、仕方無いですよね~。」

 そう、恵が笑顔で言葉を返すので、飯田部長がポツリと言うのだ。

「あれ? 箝口(かんこう)令を敷いた、俺達が悪者って流れなのかな?」

「やだなぁ、そんな事、思ってませんって。」

 透(す)かさずフォローする、直美だった。すると、実松課長がニヤリと笑って言うのだ。

「まあ、少なくとも。流石の鬼塚君には、このサプライズは不発だったみたいだな。」

「確かに、驚きはしませんでしたけど…でも、皆(みんな)と同じ位、喜んではいますよ。」

 そう言って満面の笑みを見せた緒美は、歩速を早めて AMF へと向かったのだ。勿論、恵と直美、そして金子もが、緒美を追って AMF の前へと向かったのである。

「皆(みんな)との挨拶は済んだ? Ruby。」

 緒美は AMF の機首、右側方に立つと、そう声を掛けたのだ。間を置かず、Ruby が応える。

「ハイ、その声は緒美ですね。」

「声って…画像センサーは働いていないの?」

「イイエ、センサーは作動していますが、LMF と比較すると、この機体は至近距離に死角が多いのです。」

「ああ、そうね。AMF は LMF 程、接近戦は重視してないから…。」

 そこで瑠菜が、緒美に説明するのだ。

「それで今、樹里がセキュリティ・システムの再起動を。」

「ああ、成る程。」

 丁度(ちょうど)、そのタイミングで CAD 室から二階廊下へ出て来た樹里が、格納庫フロアに向かって声を掛けて来た。

Ruby、格納庫のセキュリティ・システム、再起動したから。ネットワークにアクセスしてみて。」

「ハイ、樹里。 セキュリティ・システムのネットワークを確認、アクセスを完了しました。続いて、サブ・コントローラーへの接続を開始…認証を完了。各所センサーのステータスを確認、環境設定を再実行。センサーからの、データ取得を開始します。取得したデータで周囲状況の補足を実行、周辺マップ・データを更新します。」

 樹里は、二階廊下から駆け足で階段を降り、緒美の隣まで来て Ruby に問い掛けるのだ。

「どう? Ruby。」

「ハイ、樹里。ありがとうございます、格納庫側のセンサーからの情報で、漸(ようや)く周囲の状況が詳しく分かる様になりました。皆さんの元気そうな姿を確認出来て、わたしも安心しました。第三格納庫も変わりが無くて、ここに帰って来た事が嬉しいです。」

「それは良かった。何よりね。」

 Ruby の返事を聞いて、樹里は安堵(あんど)の溜息を一つ吐(つ)くのだった。そして、Ruby は言葉を続ける。

「徒(ただ)…。」

「何よ? Ruby。」

「ハイ。各出入り口の、施錠に関するステータスが不明の儘(まま)です。」

「ああ~それね。貴方(あなた)が不在の間、セキュリティ・システムが使えなくなってたから、ドアの施錠に関しては別の独立したモジュールに交換したの。元に戻すかは、先生と相談してみるね。」

「そうでしたか、わたしが留守の間、ご不便をお掛けしてしまったのですね。」

 そんな会話を樹里と Ruby が続けている所に、ゆっくりと歩いて来ていた大人組の一団が到着し、立花先生が「どうかしたの?」と訪ねて来るのである。それには、緒美が応えるのだ。

「ああ、先生。いえ、Ruby が格納庫のセキュリティに就いて、ドアの鍵が変わってるのを、どうしましょうか、って。確かに、以前のシステムの方が、色々と便利ではあったんですけど。」

 立花先生は苦笑いして、言うのだ。

「又、工事するの? まあ、校長に掛け合ってはみるけど…今日、明日って訳にはいかないわよね。」

「ああ、いえ。わたし達は別に、今の儘(まま)でも何とかなってますし、何方(どちら)でも構わないんですが。予算の都合とかも、有るでしょうし。」

「予算も、だけど。それよりも、セキュリティに関する話だからね。どうするのがいいか、学校側で協議します。再工事をするにせよ、しないにせよ、検討する時間は必要でしょう?」

 立花先生の言葉に頷(うなず)いて、緒美は AMF の方へ向き直り言った。

「だそうよ、Ruby。そう言う事で、いいかしら?」

「ハイ、分かりました。お手数をお掛けします。」

 Ruby の返事に、立花先生も言葉を返すのだ。

「いいのよ。それが、わたしの仕事だから。」

 そして緒美は周囲のメンバーを一度見回し、「パン」と手を打ってから言うのだ。

「それじゃ、無事に AMF も到着した事だし。予定通り、午前中に一度、飛行シミュレーションを実行するわよ。天野さん、インナー・スーツに着替えて来て、ボードレールさんは手伝ってあげてね。 城ノ内さんと井上さん、カルテッリエリさんは、デバッグ用コンソールの準備。日比野さんも、其方(そちら)、お願いします。 残りのメンバーで、モニター用の機材とか机とか、設営をやりましょう。」

 緒美の指示を受け、兵器開発部のメンバー達は、それぞれの担当作業へと散ったのである。

 この日から数日の兵器開発部の活動は、来週月曜日の AMF の飛行試験へ向けての、その準備期間である。
 AMF 自身に就いて言えば、天野重工の試作工場で既に五日間の飛行試験が完了しており、Ruby の制御に因る一通りの飛行能力は確認済みなのだった。その際、試作工場に於いて Ruby に対して離着陸や、空中機動の教示(ティーチング)を行ったのは理事長秘書の加納である。彼の元戦闘機パイロットとしてのスキルが遺憾なく発揮された結果、AMF は自律制御に因る飛行で、既に大きな不安も無く飛行が可能となっていた。因(ちな)みに、先程の AMF の着陸操作が「加納っぽい」と言う金子の感想は、大正解だったのだ。
 さて、AMF は操縦系統の構成からして純然たる『航空機』なのだが、そこで問題になるのがドライバーである茜に、航空機の操縦経験が全く無い事なのである。勿論、操縦桿やスロットル・レバー、フットバー等の両手両足を使っての操縦操作を行う通常の航空機とは違って、HDG を介して思考制御で姿勢や進路を決定し、機体に搭載された AI が具体的な操縦操作を代行する仕組みは LMF と変わりはない。しかし AMF が LMF とは決定的に違うのは、その航空機の特性上、『立ち止まる事が出来ない』と言う事なのである。
 LMF のホバー走行や、或いは HDG-A01 単体での飛行では、例え空中での姿勢が崩れたとしても、その場に留まって体勢を立て直したり軟着陸が可能で、それはホバリングが出来るからである。その点に関して言えばは、ブリジットの HDG-B01 も同様で、航空機基準で設計された HDG-B01 の飛行ユニットにも、『推力モード』と呼ばれるホバリングが可能な飛行モードが存在し、空中で立ち止まる事が可能なのだ。
 だが、AMF にはホバリングを行う能力が無く、飛行を継続する為には、常に一定以上の速度と適切な迎え角を維持して、揚力を獲得し続けなければならない。勿論、飛行を継続する為に必要な姿勢の制御は、AMF に搭載された AI、つまり Ruby が常に適切な補正をして呉れる仕組みなのだが、ドライバーである茜自身にも、その基礎的な感覚が必要なのは言う迄(まで)も無いだろう。
 そこで、茜には前日の夕方から、飛行機部所有のフライト・シミュレーターで三時間程、金子の指導を受けて航空機の操縦感覚や飛行感覚を先(ま)ず、学習したのだった。これは、操縦の操作手順を習得するのが目的ではなく、飽く迄(まで)、飛行感覚の体験が目的なのである。
 そして今日からは AMF に HDG を接続して、AMF をシミュレーターにしての飛行感覚習得を行うの計画なのだった。これは勿論、HDG からの思考制御入力による、AMF 側の操縦操作の最適化と、その確認をも兼ねてはいるのだ。以前は、LMF の格闘戦機動の教示(ティーチング)を、HDG を接続して茜が行ったのだが、今回は目的の主客が逆転してしまってはいるものの、行う事柄自体は LMF の時と同様なのである。
 そこで、茜の思考入力や、それに因る Ruby の操縦制御が適切であるかの監督・指導役として加納と、飛行機部部長である金子が呼ばれていたのだ。別に金子はこの日、徒(ただ)、ふらりと遊びに来ただけでは無かったのだ。
 加えて、本社から来ているソフト部隊の二人、日比野は AMF 本体の制御系の確認を、安藤は Ruby の確認をと、それぞれが動作確認を担当して、HDG と AMF の飛行シミュレーションが実施されるのだ。

 シミュレーション開始の為の準備には、小一時間程の時間を要した。
 以前の LMF での時と同様に、シミュレーションの状況を監視する為に複数のディスプレイが、状況のモニター用にずらりと、AMF の右舷側に設置されていた。今回は、天野理事長に飯田部長、実松課長に前園先生と、観客(ギャラリー)が多いのだ。
 樹里が何時(いつ)も扱っているデバッグ用コンソールには、AMF に因るシミュレーターに対応したアプリケーションが日比野の手に因ってインストールされ、接続や初期設定など、細細(こまごま)とした作業も滞(とどこお)りなく進められたのである。

「それじゃ、取り敢えず一度、やってみましょうか。 Ruby、機首を解放して。」

 緒美がコマンド用のヘッド・セットを通じて指示すると、AMF の機首部分が先(ま)ず、左右とキャノピー部分の三つに分かれ、そのあと複雑にスライドして、機首内部に格納されている HDG が露出される。AMF も、LMF と同様に、機体の前面部に HDG を接続した状態で運用されるのだ。徒(ただ)、空中を高速で飛行する為には、極力、空気抵抗を減らしたいので、通常は機首構造の中に HDG が格納されるのだ。勿論、空中戦時には飛行中でも機首部を解放して HDG を露出する事は可能だが、その場合は飛行速度に制限が掛かる事になる。
 設計上、諸諸(もろもろ)の諸元や部品を F-9 戦闘機から流用している AMF なのだが、その機首部が F-9 に比べて、不格好な程に肥大化してしまったのは、直立した姿勢の HDG を内部に収める為なのだった。又、格闘戦用の格納式ロボット・アームや、固定武装としてのレーザー砲、外装へのディフェンス・フィールド・ジェネレーターの追加も有って、その胴体は F-9 戦闘機よりも一回り大きくなっていた。それでも、エンジンと航空電子装備(アビオニクス)、主翼カナード翼、そして降着装置一式は F-9 戦闘機と同じパーツを流用して仕上げられており、その設計手腕は見事と言っていいだろう。それは勿論、開発期間を圧縮する為に、既存のパーツや技術で、流用出来る物は流用した結果でもあるのだが。

「何とも形容し難い開き方をするのね。」

 AMF の機首が解放されるのを見て、そう所感を漏らしたのは立花先生である。緒美は微笑んで、それに応じる。

「飛行中でも開(ひら)けるように考えてありますからね。 Ruby、HDG を降ろしたら、天野さんが接続する為に開放状態に。」

 解放された機首の内部には、無人状態の HDG-A01 が接続格納されていた。それは以前の形態とは違う事が、一目で分かる改造が施されている。
 初期型、或いは『地上型』と言った方が適当だろうか、兎も角、当初は露出した装着者(ドライバー)の頭部にヘッド・ギアを装着する仕様だったのだが、この『航空型』では頭部を覆うバブル型の『キャノピー』が追加されており、所謂(いわゆる)『宇宙服』の様になっていた。
 これは、HDG に接続された AMF が戦闘機並みの高速で飛行出来る事への対応策であり、これに因り戦闘機並みの高空への上昇も可能となるのだ。従来の『地上型』ヘッド・ギアでは、酸素の薄い高空では活動が制限されるし、低空であっても高速飛行の際には気流の影響で装着者(ドライバー)が首を痛める恐れが有り、『キャノピー』の無い HDG では AMF の能力を十分に活用する事は期待出来ない。

「茜君、今回からは、このヘッド・ギアを使ってね。」

 そう言って畑中が、茜に新しい、簡易型のヘッド・ギアを手渡すのだった。『地上型』のヘッド・ギアには光学系各種センサーや複合アンテナ、ディスプレイ等が取り付けられていたのだが、この新しい簡易型には通信機能と、思考制御の為のセンサーが装備されているだけである。

「あ、ありがとうございます、畑中先輩。」

 インナー・スーツに着替えた茜は、手渡された簡易型ヘッド・ギアを受け取ると自(みずか)らの頭部に装着し、格納庫のフロアへと降ろされた HDG-A01 の、スカート型ディフェンス・フィールド・ジェネレーターのヒンジ部に足を掛けると腰部リングへと上がって腰を下ろし、HDG の左右腕ブロックに両手を掛けて身体を支えると、自らの両脚を HDG 腰部リングの中へと差し込んだ。茜は一旦(いったん) HDG の脚ブロックの上に立つと、それから身体の向きを変え、左右の足を HDG の脚ブロックへと差し込み、続いて背中のパワー・ユニットを HDG へと接続するのだ。
 茜には全て、もう手慣れた工程である。装着の為に解放されていた各パーツが閉鎖すると、腰部リングから後方へと突き出た接続ボルトを掴(つか)んでいる、AMF 側の接続アームが引き上げられて HDG は AMF の定位置にセットされるのだった。

「此方(こちら)は、準備完了です。」

 茜は空中に吊り上げられた状態で、HDG に接続した儘(まま)の右手を上げて見せた。ヘッド・ギアのレシーバーからは、樹里の声が聞こえて来る。

「オーケー、それじゃ、ディスプレイの画像入力設定を外部入力に切り替えてね。」

「はい、設定変更します。」

 前方へ突き出る様な長球状のキャノピー前面内部は、全体がディスプレイになっており、樹里に指示された通りに設定を変更すると、茜の視界は青色に染まるのだった。キャノピーは透明な強化樹脂に挟(はさ)まれた表示素子に因ってディスプレイの機能を持ち、その外側に配された透過膜に因って視界を遮断出来るのだった。通常は必要な表示の背景に外界を視認出来るのだが、光線の具合に因って内側の表示が読み取り難い場合に透明度を調節したり、外部で閃光が発生した際に視界を瞬時に遮断する事が、透過膜に因って可能なのだ。今回の場合は、HDG を接続した AMF をフライト・シミュレーターとして使用する都合から、HDG の装着者(ドライバー)に外界が見える必要は無く、AMF 側でシミュレーター・モードが起動した時点で HDG の視界は遮断されたのだった。因(ちな)みに、透過膜が不透明になった際、HDG-A01 のキャノピー部は外部からはグレーに見えるのである。

「樹里さん、設定確認画面、来ました。」

「は~い、こっちでもモニター出来てる。じゃ早速、一度、試(トライ)してみましょうか。」

 そこで、レシーバーから聞こえて来る声が、樹里の声から加納の声に代わる。

「えー、天野さん、加納です。 取り敢えず、最初の一回目は Ruby の自律制御で、離陸から着陸迄(まで)の視界を体験してみてください。特に何も、しなくていいです。」

「分かりました。設定の方、宜しくお願いします。」

 

- to be continued …-

 

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