WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第17話.09)

第17話・クラウディア・カルテッリエリとブリジット・ボードレール

**** 17-09 ****


「TGZ01 より、HDG02 へ。取り敢えず、これで画像照準の性能は確認出来たと言う事でいいでしょう。予定通り、残りの目標は同時ロックオンで、連続射撃の確認に移ります。問題は無い?」

「此方(こちら)HDG02、問題ありません。狙撃コースへ向かいます。」

「了解。準備が出来たら、連絡してね。」

 待機コースを飛行するクラウディアのC号機斜め後方から、ブリジットのB号機は左旋回で離脱する。この時点で、B号機とC号機は、南北方向に設定された待機コースを南から北へと飛行していたのだ。クラウディアのC号機は此(こ)の待機コース上を往復し乍(なが)ら、目標である気球(バルーン)の位置特定を継続しているのである。
 残存した気球(バルーン)を曳航(えいこう)する海防艦艇は、それぞれが別方向へと低速で航行しているが、これは安全上の配慮なのだ。仮に気球(バルーン)を繋留した艦艇が静止しているとして、上空に風が吹いていない状態で、気球(バルーン)が射撃に因って破裂したとしよう。その場合、上空に有った器機や、繋留していた千メートル分のワイヤーが艦艇に向かって落下して来る事になるのである。実際には、上空には大気の流れが存在するし、艦艇も海流に因って移動しているので、必ずしも艦艇の真上からワイヤー等が落下して来る訳(わけ)ではない。だが、その一部でもが艦上の設備や装置、構造物に衝突したとして、何かしらの利益になる事は有り得ず、寧(むし)ろ場合に依っては深刻なダメージを受ける事すら有り得るのだ。その予防的対策として艦艇を一定方向へ航行させておけば、艦尾部に繋留された気球(バルーン)は必ず艦尾から更に後方の上空に存在する事になるので、気球(バルーン)が破裂した際の落下物が艦上構造に衝突するのを回避が出来る訳(わけ)である。
 当然、静止した標的よりも移動する標的の方が、命中させるのに難易度は高くなるが、定速での一方向への移動程度であれば、目標の未来位置へ弾道を合わせる事などB号機搭載の火器管制機能には造作無い仕事なのである。

「HDG02 より、TGZ01。狙撃コースへ入りました。」

 ブリジットの声を聞いて、緒美は念の為、指示を伝える。

「了解、HDG02。今回は画像照準は使用しないでね。データリンクの、C号機が特定した目標座標に上へプラス六メートルで、二目標同時にロック。奥側の目標から順番に射撃して、離脱。いいわね? 一気に終わらせましょう。」

 最初に、今回から追加となった超望遠カメラを使用した画像照準の機能確認を行ったのだが、現実には『ペンタゴン』が相手の場合、相手側が『光学ステルス』能力を有している以上、画像照準は役に立たないのだ。『ペンタゴン』を狙撃する為には、C号機が位置特定した座標へ、弾体を撃ち込まなければならないのである。

「了解してます。目標1、2 をロック、射撃座標を上にプラス六メートルに設定…あ、HDG03、目標2 がデータリンクから消失。」

 落ち着いた声でのブリジットの報告には、直ぐに、クラウディアの声が返って来る。

「発信器が周波数を切り替えたのよ。再スキャンで検出される迄(まで)、ちょっと待って。」

 クラウディアの説明を聞く迄(まで)もなく、目標座標がデータリンクから消失した理由をブリジットは理解している。だから、ブリジットは冷静に緒美に申告するのだ。

「HDG02 より、TGZ01。一旦(いったん)、狙撃コースから離脱します。」

「TGZ01、了解。」

 短く緒美が了承の意を伝えると、ブリジットはB号機を大きく右旋回させて西向きの針路を取る。これは、目標との距離を設定されている百五十キロよりも縮め過ぎない為の措置である。
 その間に、もう片方の目標も発信周波数が切り替わり、C号機は再スキャンを余儀(よぎ)無くされるのだった。

「受動式(パッシブ)でやってる以上、こればっかりはどうしようもないわね。」

 立花先生は苦笑いを浮かべて、そう緒美に言ったのだ。

「そうですね。 これ、消えた位置をメモリーしてデータリンクを継続するって、出来ません?」

 緒美は、そう日比野に問い掛けた。それに対する、日比野の反応は早い。

「出来なくはないけど、表示がメモリーなのか、現在の計算結果なのか、判別は付かないとマズくない?」

「表示の色を変えるとか、ですか?」

 その樹里の提案に、日比野は微笑んで、そして答えるのだ。

「まあ、そんな所かな。取り敢えず、持ち帰って検討してみる。」

「お願いします。」

 緒美も微笑んで、日比野に依頼の声を掛けたのである。
 そうこうする内、データリンク上には二つの気球(バルーン)に就いて、再度、位置特定された結果が表示されるのだ。

「TGZ01 より、HDG02。射撃コースへ向かって。」

「HDG02、了解。狙撃コースへ入ります。」

 ブリジットが答えると、続いてクラウディアの声が通信に入って来る。

「HDG02、又、周波数が切り替わる前に、ササッと撃ち落としてちょうだい。」

「余計な事、言ってないで、黙って見てなさい、HDG03。 目標1、2 をロック、射撃座標を上へプラス六メートルに設定。目標2、1 の順に連続射撃します。」

 東向きのコースに旋回を完了したブリジットのB号機は、レールガンの弾道が目標の未来位置に重なるように、機体の速度と角度を調整するのだ。それは勿論、B号機搭載の AI が微調整を補助しているのである。

「マスターアーム、オン。 弾体を薬室(チャンバー)へ装填。準備完了、発射許可を求めます。」

 ブリジットからの要求に、緒美は即答する。

「此方(こちら)、TGZ01。発射を許可します。」

「HDG02、了解。HDG01、弾道観測、準備いいよね?」

「此方(こちら) HDG01、準備完了してる。何時(いつ)でもどうぞ。」

 茜の声を確認し、一呼吸を置いてブリジットは声を上げた。

「では、HDG02、連射、行きまーす。」

 その宣言から間も無く、B号機搭載のレールガンは一発目を発射したのだ。

「弾体を薬室(チャンバー)へ再装填。次弾、発射します。」

 そして、殆(ほとん)ど間を置かず、ブリジットは二発目を発射したのである。
 目標2 は高度千六百メートルをB号機から見て向かって左手側に南東方向、つまりB号機から見て右方向へ移動しつつ、遠ざかる方向へも移動している。目標1 は高度二千メートルを右手側に南方向へ、これはB号機から見ると右方向へ移動している。目標2 が遠ざかる方向へ移動と先述したが、実際には目標を曳航(えいこう)する艦艇の航行速度よりもB号機の飛行速度の方が速いので、相対的にはB号機は何方(どちら)の目標にも接近しているのだ。徒(ただ)、その接近速度が二つの目標で其其(それぞれ)が僅(わず)かに違う、と言う事である。
 この様に、二つの目標は高度も接近速度も移動方向も違うので、B号機は目標毎(ごと)に機体の向きを変えて射撃を行わなければならないのだが、何分(なにぶん)、百五十キロメートルも彼方(かなた)の目標である。外から見て解る程に、機軸を振る必要は無かったのだ。

「射撃終了、マスターアーム、オフ。離脱して、待機コースへ向かいます。HDG01、着弾観測、宜しく。」

 ブリジットはB号機を右へ傾けると、大きく旋回して東向きの射撃コースから離れて行った。

「此方(こちら) HDG01、弾道観測を続行。着弾まで、凡(およ)そ五十二秒。」

 茜は二つの目標が AMF の前方監視カメラで同じ画角(フレーム)に入る角度をキープして飛行し、飛翔する二つの弾体は右主翼下の観測用撮影ポッド内蔵カメラが赤外線モードで追跡している。これら複数の撮影機材を、同時に制御しているのは、当然、AMF に搭載されている Ruby である。
 そして茜は、十秒毎(ごと)に残り時間を読み上げるのだ。

「…四十秒…三十秒…二十秒…十秒…5…4…3…2…1…着弾。」

 前回と同様に、AMF が撮影する赤外線画像は、画面がホワイト・アウトするのだったが、それは二つの目標への着弾が、ほぼ同時だった為、一度限(きり)だった。
 そしてデータリンク上で目標のレーダー反応をモニターしていた樹里が、報告する。

「目標のレーダー反応、消失を確認しました。」

「了解、HDG03、『プローブ』各機へ帰還コマンドを送信。 それから HDG01、観測ご苦労様、此方(こちら)へ合流して。」

 その緒美の指示に対して、クラウディアと茜が相次いで返事をするのだ。

「此方(こちら) HDG03、『プローブ』各機へ帰還コマンドを送信します。」

「HDG01 より、TGZ01。これより、其方(そちら)へ合流します。」

 そして緒美は、海上防衛軍側へ試験終了の挨拶を伝えるのである。

「TGZ01 より、アカギ・コントロール。以上で当方の試験メニューは、全て消化しました。海上防衛軍の御協力に感謝します。ありがとうございました。」

 そのコメントに続いて、コンソールの傍(そば)へ移動して来た桜井一佐が、日比野から通話用のヘッドセットを借りて、声を上げるのだ。

「此方(こちら)、空防の桜井です。空防からも、海防艦艇の支援に御礼申し上げます。」

 すると間を置かず、海防側から返信が入るのである。

「空母『あかぎ』艦長の、稲村です。試験の方、順調に終わった様子で、何よりですな。今回は桜井一佐とは、直接、お目に掛かれず残念でした。何(なん)でしたら後日、戦闘機で来艦くだされば、歓迎致しますよ。」

「稲村一佐、生憎(あいにく)ですが、わたしは空母着艦の資格(ライセンス)は持ってませんので。」

「わははは、桜井一佐なら海防で講習を受けて頂ければ、直ぐに取得出来ますよ、きっと。」

「ご冗談が過ぎますよ、稲村一佐。では、我々はこれで失礼しますので。今日は、ありがとう存じます。」

「はい、帰路、お気を付けください。」

 稲村艦長からの返事が有った所で、飯田部長がヘッドセットを桜井一佐から受け取り、交代して話し始めるのだ。

「あー、天野重工の飯田です。今日は、海防側の御協力、ありがとうございました。」

「ああー、飯田さん、ご苦労様。 試験中の通信を一通り聞かせて貰ってたけど、御社の若い人達、皆(みんな)、優秀で羨ましい限りですな。」

 天野重工は海上防衛軍の空母搭載機である艦上型 F-9 戦闘機を生産している関係も有って、飯田部長は稲村艦長とも面識が有るのだった。

「いやあ、恐縮です。」

「今日試験した装備、何時(いつ)頃、現場で使える予定ですか? 随分(ずいぶん)と完成度、高い様子じゃないですか。」

「いえいえ、まだ実験機ですから。製品化するには、まだまだ詰めなけれなばならない箇所が有りましてね。 我々は、これで帰還しますが、其方(そちら)には、もう一仕事お願いする事になってますので、宜しくお願いします。」

「ああ、無人機(ドローン)の回収だね、承知してるよ。」

「はい、その件に就きまして何か有りましたら、其方(そちら)に派遣してある、弊社の担当の者(もの)に言って頂ければ。」

「ああ、はいはい、了解してますよ。」

「では、失礼します。本日は、ありがとうございました。」

「はい、ご苦労様。」

 稲村艦長からの返事が有った所で、飯田部長はヘッドセットを外して、樹里に言うのだ。

「じゃ、ここで防衛軍との通信は終了だ。 いいかな?鬼塚君。」

 飯田部長に確認されたので、マイク部を指で塞(ふさ)いで緒美が応じる。

「はい。 城ノ内さん、通信設定から防衛軍を解除してね。」

「分かりました~設定、解除しました。」

 樹里は手早くコンソールを操作し、データリンクを使った通信の通話リストから防衛軍のアドレス・コードを解除したのである。
 続いて、緒美が各機に通信を送る。

「TGZ01 より、HDG 各機。学校へ帰還するから、当機の位置へ集合。防衛軍との通話設定は解除したから、もう話すのに緊張しなくてもいいわよ。」

 その緒美の発言に対して、HDG 各機からは「了解。」との返事が有るのだ。
 一方で、立花先生が飯田部長に問い掛けていた。

「飯田部長、『あかぎ』の艦長とも面識が、お有りだったんですか?」

「ははは、伊達(だて)に三十年も、天野重工で防衛装備事業に関わっている訳(わけ)じゃないって事さ。」

 そう言って笑う飯田部長に対して、少し呆(あき)れた様に桜井一佐が言う。

「まったく、驚異的な、お顔の広さですわね。」

「いえいえ、これ位じゃないと、務まりませんよ。」

 そう答えて又、笑う飯田部長の一方で、苦笑いで顔を見合わせる、桜井一佐と立花先生である。
 その後、社有機の右側に AMF、左側にB号機、C号機が集合すると、緒美がクラウディアに尋(たず)ねるのだ。

「HDG03、カルテッリエリさん、『プローブ』は指定したポイントへ、向かってる?」

「はい。あと一時間程度は掛かりますけど、向かってはいます。 城ノ内先輩、其方(そちら)でもモニター出来ますよね?」

 クラウディアが聞き返して来るので、樹里はコンソールを操作して確認する。

「はーい。此方(こちら)でも、ステータスを確認しました。」

 樹里の確認を待って、緒美は指示を伝える。

「それじゃ、これより帰還します。沢渡機長、お願いします。」

 社有機はスロットルを開けて、上昇しつつ旋回を始める。そしてHDG 各機は、それに続いたのである。
 こうして、この日の試験は全てが無事に終了したのだった。

 

- to be continued …-

 

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