WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第10話.03)

第10話・森村 恵(モリムラ メグミ)

**** 10-03 ****


 恵の『カミングアウト』を聞いた瞬間、立花先生は、それ迄(まで)、頭の中にバラバラに存在していた、幾つかの記憶が、一気に繋がって意味を持った様な感覚がしたのである。そして、立花先生は言った。

「ひょっとして、恵ちゃんが好きな人って…緒美ちゃん?」

 恵は顔を紅潮させ、静かに頷(うなず)く。立花先生は、恵がそんな風に照れて顔を赤らめるのを見たのは、多分、初めてだった。それは、立花先生に取っても予期しない反応で、正直、意外に感じられたのである。そして、立花先生は念の為、確認の質問を投げ掛ける。

「それは、あなたは将来的には男性になりたい、と言う事かしら?」

「そっちじゃ、ないです。自分が女性である事に、違和感はありませんから。」

「そう…でも、まぁ、何と無く、納得は出来るわね。あぁ、そうか、って感じ、恵ちゃんなら。」

「矢っ張り、変?ですよね。」

「そんな事は無いわ。わたしには、『解る』とは言えないけど、大学時代の友人に、一人だけそう言う娘(こ)がいたから、そう言う人がいる事は知ってるの。恵ちゃんが、その事を自覚したのは、いつ頃?」

「う~ん…小さい頃から、憧れたりする対象が女の人ばかりだったんですけど、小学生…三年生位(ぐらい)の時、女の子が女の子に恋する様な、そんな内容の小説を読んで、それから、そう言う方向の事を調べ初めて、あぁ、自分も『こう』だな、って確信?したのが、小五の頃です。」

「読書家だったのね、恵ちゃん。」

「それで、この眼鏡ですよ。」

 恵は笑って、掛けている眼鏡のブリッジ部分を、右の中指で少し、押し上げて見せた。

「御両親や御家族には、その事は?」

「言ってませんよ。十年、二十年経って、ひょっとしたら、男の人を好きになるかも知れないし。その辺り、自分でも良くは解らないので。」

「じゃあ、男性に対して、恐いとか、嫌悪感とかは無いのね?」

「はい。幸い、トラウマになる様な体験が有った訳ではないので。父や弟の事は、家族として、普通に好きですよ。徒(ただ)、一般の男性や男子には、異性として興味を持てないだけで。」

「道理で、男子に対して『壁』が無い訳だわ。恵ちゃん、折角(せっかく)、男子のファンが多いのに。こうなると、ちょっと、男子達が不憫(ふびん)だわねぇ。」

「それを言ったら、立花先生だって。 立花先生、男子達の間で、結構人気(にんき)、有るんですよ。」

「生憎(あいにく)、年下には興味無いのよね~って、だから。わたしの事はいいの。」

 二人は顔を見合わせると、揃(そろ)って、声を上げて笑った。
 一頻(ひとしき)り笑うと、立花先生は席から立ち、コーヒーカップを手に、ポットの方へと向かう。カップにインスタント・コーヒーの粉末を一掬(ひとすく)い入れると、ポットからお湯を注ぐ。そして、顔を上げ、恵に声を掛ける。

「恵ちゃん、紅茶のお代わり、淹(い)れましょうか?」

「あ、いただきます。」

 恵はお皿に置いてあったティーバッグをカップへと戻し、そのティーカップをお皿に乗せて、立花先生の元へと運んだ。
 お皿ごと受け取った立花先生は、ティーカップへお湯を注ぎ、恵にそのティーカップを乗せたお皿を返し、そして恵に尋ねる。

「それで、その事、緒美ちゃんは知ってるの?」

「いいえ。言えませんよ、そんなこと。」

 恵は受け取ったお皿を持って、元の席へと戻り、そう答えて座った。一方で、立花先生もコーヒーカップを持って元の席に戻り、今度は砂糖をスティック式の包み一本分、カップへと流し込む。恵は、先程の残り半分の砂糖を、ティーカップに注いだ。

「どうして?緒美ちゃんなら、案外、あなたの気持ちに応えてくれるかもよ。」

 コーヒーを掻き混ぜながら、立花先生は無責任な言動だと自覚しつつ、そう言った。何と無く、恵を励ましたかったのだ。
 それに対して、恵は力(ちから)無く笑い、言葉を返す。

「緒美ちゃんの恋愛対象は、普通に男性ですよ。わたしは、基本的に何時(いつ)も片思いですから、初めから諦(あきら)めてます。」

「う~ん、まぁ、わたしの友人も、同じ様な事を言ってたけど。でも、普通に男女の場合だって、最終的に相手が自分を好きになって呉れるか、それは相手次第だしね。徒(ただ)、男女の場合は、お互いの打算で付き合えちゃう場合が多いだけで。」

「打算?ですか。」

「そうよ。例えば、お金とか、地位とか、仕事とか…将来とか。」

 立花先生は列挙した例えに、もう一つ「性的な事」を加えようとして、直前で思い止まった。それは、未成年の恵を相手に、話す内容では無いと配慮したからだ。しかし、恵はその事に気が付いていて、そして言葉を選んで返す。

「成る程、気持ちよりも欲望、な訳ですね。」

「あら、欲望も気持ちの内よ。まぁ、打算で始まった関係でも、付き合っている内に気持ちの方が付いて来る事も有るから、それ程、馬鹿にした物じゃないけどね。どっちかって言うと、そう言うカップルの方が、多いのかも知れないし。」

 立花先生は言い終わると、コーヒーカップを口元へと運ぶ。

「そう言う物でしょうか。」

 恵も、ティーカップに口を付ける。

「あはは、こんな夢も希望も無い事、あなた達にする様な話じゃ、無かったかもね。ごめんなさい。」

「厳しいですね、現実って。」

 二人は顔を見合わせ、微笑むのだった。

「あ、そう言えば。緒美ちゃんの恋愛対象が男性だって、あなた達でも、そう言うお話、するんだ。ちょっと、意外だったわ。」

「いえ、そんな具体的なお話はした事は、無いんですけど…あれ?」

 恵が何かに気が付いて、不思議そうな表情で立花先生を見詰めている。その視線に気が付き、立花先生は問い掛ける。

「どうかした?恵ちゃん。」

「いえ、先生は、緒美ちゃんがパワード・スーツの研究を始めた動機を、知っているんだと思っていたので…。」

 立花先生は、どうしてここで、緒美が研究を始めた動機が話題になるのか、見当が付かなかった。だから困惑気味に、恵に問い掛ける。

「緒美ちゃんの親戚に被害者がいて…そう言う、事じゃなかったの?」

「そう、ですけど。…じゃ、緒美ちゃんから、聞いてはいないんですね。」

「ええ、緒美ちゃんから、直接聞いた事は無いわね。親族の御不幸に関わる事だから、敢えて聞かなかったんだけど。」

「そうでしたか…。」

 恵は視線を逸(そ)らし、少し黙り込む。

「…何よ、気になるじゃない、恵ちゃん。」

 更に少し考えて、恵は立花先生の方へ視線を戻すと、言った。

「緒美ちゃんのプライベートな事だから、わたしが勝手に打ち明けるのはどうかなって思ったんですけど。先生には協力を頂きたいので、特別にお話しします。」

「そんなに、重大な事?」

「それは、受け取りよう、でしょうけれど。わたしが言ったって事は、緒美ちゃんには内緒にしてくださいね。」

「…うん、解った。」

「緒美ちゃんが、研究を始めた動機なんですけど。『復讐』なんですよ、初恋の人の。」

 恵の語った事柄は、立花先生が抱く緒美のイメージからは最も遠いと言っていい内容だったので、それは俄(にわか)には信じられなかった。

「復讐?…初恋の人って?」

「緒美ちゃんの親戚の方(かた)が、犠牲になった事は御存知なんですよね?」

「ええ、緒美ちゃんのお母さんの、お姉さんの息子さん、って聞いたと思うけど、確か。防衛軍の人だったのよね。」

「はい。先生は『黒沢事件』って御存知です?」

「あぁ、避難が遅れた民間人を救出するのに、陸上防衛軍の黒沢三尉が犠牲になった、って事件ね。エイリアン・ドローン戦で、陸上防衛軍の最初の殉職者が黒沢三尉だったのよね。当時、メディアが随分と騒いでいたのを、覚えてるわ。」

「あと、地上でエイリアン・ドローンの注意を引くのには、動いたり止まったり、動きの向きを変えるのが有効だって、最初に気が付いたのが黒沢三尉…あ、殉職で特進して、今は一尉って呼ばれてますけど、その黒沢一尉が、緒美ちゃんの従兄弟なんです。」

「その黒沢…一尉が、緒美ちゃんの初恋の人って事? それは、緒美ちゃんが、そう言ったの?」

「いえ、直接的に、緒美ちゃんが明言した訳じゃないんですけど。でも、緒美ちゃんから聞いたお話を、総合すると、そう言う事になるんです。」

「それで、復讐を? でも、当時だと、あなた達は小六よね? 黒沢一尉とだと、緒美ちゃんは年齢的に合わないでしょう?」

「女の子は小学生にもなれば、恋位(くらい)するでしょう? そう言う時の恋って、大人の人に憧れたりする物じゃないですか。」

「それは、分からなくはないけど…。」

「それに、緒美ちゃんの場合、御両親が仕事で、物凄く忙しい人みたいでしたから、小さい頃から、良く伯母さんの家でお世話になっていたそうなんです。」

 立花先生は、もう一度、コーヒーを一口飲み、恵に尋ねる。

「あなた達は中学から、一緒だったのよね?」

「はい。中一の時から同じクラスで、わたしの方は、完全に『一目惚れ』でした。『黒沢事件』は、わたしと緒美ちゃんとが出会う半年前の事だったので、出会った頃の緒美ちゃんは沈んでいるって言うか、何か思い詰めている様な感じだったんです。」

「それは、去年の四月頃も、そんな印象だったけど。」

「いいえ、中一の頃は、もっと重い感じでした。」

 立花先生は、眉を顰(ひそ)め、言った。

「それは、ちょっと、想像出来ないわね…。」

「それで、緒美ちゃんと小学校が同じだった子に聞いたら、以前(まえ)はそんな感じじゃなかったって、もっと明るい子だった、って言うんですよ。」

「ごめん、そっちの緒美ちゃんも、ちょっと想像出来ないわ。」

「そうですか? 例えば、今だと Ruby を相手に、冗談言ってる時とか、瑠菜さんと話してる時なんかが、多分、素の緒美ちゃんに近いんだと思いますよ。」

「そう…今度、注意して、見ておく事にするわ。あぁ、それだと、多分、あなたとお話ししてる時も、そうなんじゃない?」

「それは…自分では分かりません、けど。でも、そうだったら、嬉しいな。」

 そう言って、立花先生に見せた恵の表情は、今日一番の笑顔の様に、立花先生には感じられた。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。

STORY of HDG(第10話.02)

第10話・森村 恵(モリムラ メグミ)

**** 10-02 ****


「実はね…校長から、直直(じきじき)に依頼されたのよね。」

「校長先生…から、ですか。何ですか?その、依頼って。」

 立花先生は一度口籠(くちご)もると、視線を横に外し、暫(しばら)く言葉を探した。しかし、諦(あきら)めた様に目を閉じると、又、一度、息を吐(は)き、視線を恵に戻して、言うのだった。

「あなたの、異性交友関係に就いて、『それとなく』確認して欲しい、って。」

「何ですか?それ…って言うか、この時点でもう、『それとなく』じゃ無くなってますよ、先生。」

「いいのよ、もう。そう言うの、苦手だもの。校長にも、そう言ったんだけど。」

 立花先生はテーブル上のカップに手を伸ばし、コーヒーをもう一口、飲む。
 その様子を見乍(なが)ら、今度は恵が発言する。

「そもそも、わたしに、その『異性交友関係』が有る様に見えます?先生。」

「見えないわよ。授業が終わったら、殆(ほとん)どの時間、兵器開発部の部室に居て、そのあとは女子寮に居るんだし。夜中に、寮を抜け出してる様な気配も無いし。まぁ、そんな事が有ったら、大問題だけど。」

「女子寮のセキュリティは、ちゃんとしてますからね。それを、誰にも気付かれずに突破する様なスキル、わたしは持ち合わせてません。」

「知ってる。でも、噂では、あなたには『付き合ってる人がいる』って、あなたが言った事になってるんだけど?」

「はい?…どこで、そんな話が…。」

 そこ迄(まで)言った所で、恵は心当たりが有る事に、気が付いた。その時の、微(かす)かな表情の変化を見逃さなかった立花先生が、問い掛ける。

「心当たりは有るでしょう?恵ちゃん。」

 恵は視線を上に向け、白々しいとは思いつつ、考える振りをする。正面から立花先生に見詰められている視線の圧力に負け、恵は真面目な顔を作って、立花先生に聞いてみる。

「その事が、先生達の間で問題になっているんですか?」

 その問い掛けに、立花先生は間を置かずに答える。

「問題、と言うのではないわね。校長の談に依れば、学校としては生徒の恋愛とかに就いては、禁止も推奨もしない、と言う事だから。生徒のプライベートな事には、学校は関知しません、と。但し、学生として、年相応(としそうおう)な行動から逸脱する様なら、注意なり、指導なりはしますよ、と言うのが方針だそうだけど。今の所、あなたに、そんな逸脱した行動とかは見られていなし、その様な報告も無いから、学校側からは注意とか指導とか、特に有りません。ここ迄(まで)は、O.K.?」

「はい。」

「あなた、夏休みに入る前に、三年生の斉藤君から交際を申し込まれてたでしょ?」

「あぁ~良く御存知で。先生方(がた)にも、伝わってるんですね。」

 特に照れるでも無く、さらりと言葉を返した恵に、少し苦い顔をして立花先生は言う。

「伝わってるわよ、こういう噂は。あなたが袖にした男子が、斉藤君で十人目だっ、てのもね。」

「どうして、わたしなんでしょうか。訳が分かりません。 あ、ひょっとして、先生方(がた)は、わたしが、その、男子を誘惑して廻ってると…。」

 恵が途中まで言った所で、立花先生は慌てて、その言を否定する。

「違う違う、そうじゃないわよ。そう言う誤解はしてないから、安心して。」

「…なら、良かったですけど。では、先生方(がた)は何を気にされているんでしょうか?」

「さっきも言ったでしょ、断った相手に『付き合ってる人がいる』って、あなたが言った事になってるんだけど、その辺りの事実関係をね、確認したいのよ。恵ちゃんの事だから、断る為に敢えてそう言ってるんじゃないかって、わたしは校長に言ったんだけど。そこの所も含めてね、確認しておいて欲しいってさ。」

「あの、『付き合ってる人がいる』なんて言ってません。わたしは『好きな人がいるので、お付き合いは出来ません』って言ったんです。」

「え?」

 きっぱりと恵に断言され、一瞬、固まる立花先生。

「本当?…十人、みんなに、そう言ったの?」

「去年の分迄(まで)は、ハッキリ覚えてませんけど。でも、そんなに違う言い方は、してない筈(はず)です。」

「そう…と言う事は、噂話が伝わる内に、どこかで内容が変わったのかしらね。良く有る話だけど。」

「それとも、元から間違ってたのかも。噂の出所自体が特定出来ないから、確認の仕様が無いですけど。」

 そして二人は揃って、大きな溜息を吐(つ)くのだった。
 気を取り直し、立花先生は恵に確認する。

「それじゃ、誰かと付き合ってるとか、そう言う事実は無いのね?」

「先程も言いましたけど、そんな暇は有りませんし、それは先生も御存知でしょう?」

「まぁ、そうよね。解った。校長には、その様に報告しておくわ。」

「大体、どうして立花先生が、そんな聞き取りをする事になったんですか? 普通、こう言う事は担任の先生の役目じゃ…。」

「あなたの担任、男性の先生じゃあね、こんな話、下手しなくてもセクハラ案件でしょ。校長は、わたしなら話し易いだろうと思われたのよ。まぁ、わたしはこの手の恋愛ネタとかが、凄く苦手なんだけど。」

「ですよね。先生がそんなお話(はなし)してる所、見た事無いですし。まぁ、うちの部じゃ、先(ま)ず、こんな事、話題にもならないですけどね。」

 そう言って、恵はクスクスと笑った。
 立花先生は、カップに残っていたコーヒーを飲み干し、テーブルにカップを置くと、静かに言う。

「…しかし、入学してから一年ちょっとで十人から告られるって言うのも、考えてみれば大概な話よね。」

「十人って言っても、その内の半分位(くらい)は、卒業間際に『ダメ元』の『恥は掻き捨て』的なノリでしたからね。」

「それは又、失礼な話ねぇ…。そう言えば、この間の斉藤君なんかとは、どの辺りで接点が有ったの?」

「斉藤先輩とは、生徒会の予算委員会で顔を合わせてましたね。二月(ふたつき)に一回、会計報告の会合が文化系部活と体育系部活と別々に開かれてるので。先輩は美術部の会計で、文化系の予算委員会に出席されてましたから。兵器開発部(うち)も、一応、文化系部活の括(くく)りですので。」

「あぁ、そうか。それで、顔を合わせてただけ?」

「去年、十月の会計報告会で、美術部の会計に集計ミスが見付かって、その時、再計算のお手伝いをした事が有ったかと。接点って言うか、そう言うのは、覚えている限りは、それ位(くらい)で。」

「あぁ~きっと、それだわ。恵ちゃんみたいな娘(こ)に、窮地でテンパってる時に優しくされたら、男子はクラッと来ちゃうわよね。この学校の男子、真面目な子が多いし。」

 溜息を一つ吐(つ)いたあと、恵は神妙な面持ちで、立花先生に問い掛ける。

「わたし、何がいけないんでしょうか?先生。」

「いけない事は、無いんじゃない?人から好かれる事は、悪い事じゃないわ。誰に対しても、無闇に人当たりがいいのも、恵ちゃんのいい所だから、無理して変える必要も無いと思うし。 まぁ、男子があなたの事を好きになる理由も、解らないではない、かな。」

「理由って、何ですか?」

 恵は両手をテーブルの縁に着き、身を乗り出す様にして聞き返した。すると立花先生は、右手の人差し指を恵の胸元に向けて、言う。

「先(ま)ずは、それ、よね。」

 立花先生の指が指し示す恵の胸は、テーブルに掛けた彼女の左右の指先の間で、テーブルの上に乗っかる様な状態になっている。その事に気が付いて、恵は身体を引くのだった。

「胸…ですか。」

「制服着てても、そんな、ハッキリ分かる位(くらい)だもの。まぁ、男子は好きよね、そう言うのが。あなた達の年頃なら、尚更。」

「そう言う理由なのは…余り、嬉しくないですね。」

「まぁ、男子なんて、そんな物よ。でも、それだけで、その相手を好きになる程、即物的ではないとは思うけど。恵ちゃんの場合、外見的に目立つ魅力が有って、その上で、その当たりの柔らかい態度って言うか、壁の無さって言うのかな、それが加わって男子を勘違いさせてるんじゃないかな。」

「壁?…ですか。」

「思春期の男女なんだから、お互いに興味が有るが故の精神的な壁が有るのが普通よね。近寄り難かったり、話し掛けられても冷たい態度で返したり…そう言うのが、恵ちゃんの場合、余り感じられないのよ。それで、男子の方が『好意を持たれてる』とか『行ける』って、勘違いするんでしょうね。」

「直ちゃんなんかは、考えも無しに人に優しくする物じゃない、って言うんですけど。別に、わたしは特別、優しくしてる積もりは無いんですけどね。」

「そうよね~、まぁ、恵ちゃんには『お姉さん気質』みたいのを、感じるけど…そう言えば、今まで聞いた事、無かったけど。恵ちゃん、兄弟はいるの?」

「あ、はい。弟と妹が、一人ずつ。」

「あぁ、矢っ張り、リアルで『お姉ちゃん』だったんだ。道理でね。」

「わたし、先生にも『お姉さんオーラ』を感じるんですけど?先生の方は、ご兄弟は?」

「わたし? わたしの所は、兄と弟なのよ。」

「あぁ、上下(うえした)、男性ですか。あ、それで先生は、さばさばした感じ?なんでしょうか。」

「そう?まぁ、わたしの事は、この際、どうでもいいの。」

 一息吐(つ)く立花先生の一方で、恵はティーカップに残っていた紅茶を飲み干す。そして、改めて立花先生に、問い掛ける。

「わたしは、男子との接し方を変えた方が、矢っ張り、いいんでしょうか?」

 その問いに、立花先生は即答する。

「いいんじゃない?無理に変えなくても。さっきも言ったけど、それは、あなたの長所でもあるし。最終的に、ちゃんと断る事も出来てるなら、問題無いわ。わたしの大学の時の知り合いに、あなたみたいな娘(こ)がいたんだけど、その娘(こ)の場合は、もの凄く押しに弱い娘(こ)でね。断り切れないで結局、複数の男の子と付き合う事になってて、アレは最後が修羅場で大変だったみたいだけど。恵ちゃんなら、まぁ、そんな事になる心配も無さそうだし。」

「修羅場…ですか。」

「男の方がね~真面目な内は、まだ、良かったのよ。女の方が押しに弱いって分かると、目的が別の、変な奴が寄って来るから、気を付けないとね。世の中に出て、男女関係で安易に流されると、大抵、最後は碌(ろく)な事にならないから。まぁ、この学校や会社の人には、そんな変な人(の)は殆(ほとん)どいないと思うから、あなた達は安心してても大丈夫よ。」

「それはそれで、純粋培養的な感じで、駄目じゃないですか?先生。」

「あんな経験なんか、しないに越した事はないわ。心が拗(ねじ)くれるだけだから。そう言うのは、小説とかドラマとかで知識だけ頭に入れておいて、そんな事態に巻き込まれない様に、想像力を働かせて回避するの。」

「成る程…でも、まぁ、わたしの場合、恋愛沙汰で男の人に騙される様な事は、多分、無いと思いますけど。」

「どうして?」

「…先生は大人だから。 先生には思い切って、カミングアウト?しちゃいますけど…。」

「え…。」

 立花先生は恵の、『カミングアウト』と言う言葉のチョイスで、恵が言わんとしている事に、ある程度の見当が付いてしまったのである。そして、その見当は、外れていなかった。

「わたし、女の子が好き…なんです。」

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
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STORY of HDG(第10話.01)

第10話・森村 恵(モリムラ メグミ)

**** 10-01 ****


 2071年7月、今回は時間軸を一年ほど遡(さかのぼ)った時点から、お話を始めよう。
 この日は、天神ヶ崎高校が夏期休暇に入り、一週間が経過していた。この日より更に一ヶ月程前、前期中間試験が終わって間も無く、天神ヶ崎高校兵器開発部には、本社試作工場から LMF が搬入されていた。そして LMF には Ruby が搭載される事になるのだが、その作業要員五名に加えて、作業監督とシステム・オペレーションの指南役として、本社の開発部設計三課からは安藤と、他一名が派遣されて来ていた。
 他一名は LMF のシステム担当者で、此方(こちら)は LMF への Ruby 搭載作業の LMF 側監督者として、搭載作業の監督を含め、一週間滞在する間に LMF のソフトウェア構成に就いて、樹里と維月にレクチャーを終え、帰社した。
 一方、安藤は天神ヶ崎高校に一ヶ月間滞在し、搭載作業の Ruby 側の作業監督の後、HDG のソフトウェア系システム全般のレクチャー役を務めたのだった。樹里と維月が、安藤と顔馴染みになったのは、この時の事が契機である。勿論、安藤が帰社して以降も、樹里と維月の二人は、ソフトウェア関連に就いての本社側フォロー役の安藤とは必要に応じて連絡を取り合っており、業務以外での親交も深めていったのは言う迄(まで)も無い。

 7月16日火曜日に、天神ヶ崎高校が夏期休暇に突入し、その週末に派遣期間を終えた安藤が天神ヶ崎高校を離れると、それと入れ替わる様に、今度は本社から開発部設計一課の実松(サネマツ)課長が来校したのである。目的は、以前に記した通り、佳奈と瑠菜に対する CAD 製図の特訓の為だった。実は、この特訓には、学科外ではあるが、情報処理科の樹里も参加していた。
 本社から移設された CAD の端末は三台有ったので、製図作業の応援が出来る様にと、樹里が自ら申し出ての参加だった。当然、設計計算等は門外漢である樹里には出来ないのだが、紙に書かれた原案図を CAD データ化する程度の、トレースや清書作業なら、CAD の操作を習得すれば樹里にも可能だったのである。

 実松課長が来校したのが7月27日月曜日で、丁度(ちょうど)その日から、緒美と直美の二人が『自家用航空操縦士免許』を取得する為、飛行機部部員達と共に三週間の合宿講習に出掛けていた。その為、残った三年生である会計担当の恵が、部長と副部長が不在の間は、兵器開発部の責任者と言う立場になっていたのである。緒美達が居ないと、恵自身には特にやるべき作業は発生しないのだが、管理責任者としての立場が有るので、恵は夏休み中でも帰省せず、部活動に参加していたのだった。

 実の所、夏期休暇中に部活や研究の為に、帰省をしないで寮に留まる生徒は、半数以上にも上(のぼ)り、これには帰省させるよりも天神ヶ崎高校に留まった方が、エイリアン・ドローンの襲撃事件に巻き込まれる危険性が低いと言う、保護者側の判断が、その居住地域に依っては有ったのだ。そんな訳で、子供を帰省させるのではなく、親の方が会いにやって来ると言う者も、少なからず居たのだった。

 兵器開発部の面々は、と言うと。先(ま)ず、緒美と直美に就いては、『自家用航空操縦士免許』取得の合宿から戻るのが8月22日土曜日の予定だったのだが、25日火曜日には LMF の防衛軍立ち会いでの試験が予定されていたので、それが終わる迄(まで)、帰省は出来ないスケジュールになっていた。
 二年生組の三人、瑠菜、佳奈、そして樹里は、CAD 製図の特訓を終えた翌日の8月10日には帰省で学校を離れる予定で、恵はその翌日に、一応、帰省を予定していた。この四人も、25日の LMF 試験の準備で、緒美と直美が学校に戻る日の前日には、学校へ戻って来る予定である。

 そんな夏休み期間中の、その日は、2071年7月29日水曜日。
 戸外は天気も良く、朝から日差しが強く暑い日だったが、兵器開発の部室は冷房が効いており、恵は自分一人が部室に居るのが勿体無(もったいな)いなと感じつつも、特段する事も無かったので、何と無く部室の PC でネットのニュースサイトを眺(なが)めていた。二年生達は隣の CAD 室で、実松課長と前園先生に因る CAD 製図の特訓を受けているが、CAD の機材が設置されたその部屋も、当然、空調は効いている。
 時刻が午前十時を少し過ぎた頃、突然、制服のポケットに入れていた恵の携帯端末が振動した。
 恵は携帯端末を取り出し、表示を確認すると、それは立花先生からのメッセージ受信だった。

「恵ちゃんへ、わたしの居室まで来て下さい。」

 恵は折り返し、立花先生への通話をリクエストすると、立花先生は直ぐに通話に応じた。

「先生、何か問題でも?」

 先に、恵がそう問い掛けると、立花先生は否定して歯切れの悪い返事をする。

「問題…ではないけど、ちょっと、お話ししたい事が有るのよ。悪いけど、こっちに来て貰えるかな?」

「部長がいないので、わたしは責任者として、ここを離れない方が、と思うのですけど。」

「う~ん、一時間位(くらい)。そっち、前園先生いらっしゃるでしょ。暫(しばら)く、監督役は前園先生にお願いして。」

「通話では、駄目なお話しなんですか?」

「そうね。」

 普段から、ハッキリと物を言う立花先生が、今回は珍しく言葉を濁しているのが不可解な恵だったが、会社の秘密関連のお話しかも知れないなと思い直し、恵は答えた。

「分かりました。今から、伺(うかが)います。」

「悪いわね。待ってるわ。」

 通話の切れた携帯端末を元通り、制服のポケットへ押し込み、恵は席を立った。一度、隣の CAD 室に顔を出し、前園先生に一言断って、恵は再び部室へと戻って来る。先程まで見ていた PC のニュースサイトを閉じ、恵は部室から外へと出て行った。

「それにしても、わたしに立花先生が、秘密に関係する様なお話しって何だろう?」

 そんな事を考え乍(なが)ら、恵は強い日差しの中を、立花先生の居室が在る事務棟へと向かって歩いた。
 グラウンド横の歩道に差し掛かると、運動部が練習している様子が目に入る。「暑いのに、みんな良くやるなぁ…。」と、そんな事を思い乍(なが)ら歩いていると、サッカー部だろうか、歩道の方へとランニングをしている男子生徒数人が恵を見付けて手を振っているので、特に考えも無く、恵は手を振り返すのだった。

「森村は、何も考えずに、そう言う事をするから。」

 そんな事を、以前、直美に言われたのを思い出し、「いけない、いけない。」と呟(つぶや)いて手を降ろした恵は、道を急いだのだった。

 暫(しばら)くの後、立花先生の居室である。ドアがノックされたのに対し、立花先生が返事をする。

「どうぞ。」

 ドアを開けて入って来たのは、立花先生が予想した通り、恵である。

「失礼します。」

「呼び付けちゃって、ごめんね。暑かったでしょう?外。」

「グラウンドで練習してる運動部に比べたら、まだ優(まし)ですけどね~。」

 そう言い乍(なが)ら、恵はポケットからハンカチを取り出し、額に当てた。

「まぁ、取り敢えず、座ってちょうだい。」

「はぁ…。」

 今日の立花先生は、矢張り、様子がおかしい、そう恵が思ったのは、立花先生が何故か、作り笑いをしている様に感じられたからだ。勿論、思った事を、直ぐには口には出さず、恵は、もう暫(しばら)く様子を見る事にした。

「込み入ったお話しなんでしょうか?」

「う~ん…そうね。そうかも知れないから、お茶でも用意しましょうか?恵ちゃんは、紅茶の方が良かったわよね。」

「あ、はい。あの、お構いなく…。」

「いいのよ~気にしないで~。ティーバッグの、だけど、ごめんね。」

 立花先生は恵のカップには紅茶のティーバッグを、自分のカップにはインスタント・コーヒーの粉末を、それぞれ入れると、お湯を注ぐ。

「先生はコーヒー、お好きですよね。」

「えっ?あ、あぁ~そうね。」

 ぎこちない受け答えに恵の不審は益々(ますます)募(つの)り、「その位(くらい)の事で、動揺しなくても…」との内心だったのだが、取り敢えず微笑んで、気にしていない振りをした。立花先生は、両手にカップを持ち、テーブルへと歩み寄って来る。紅茶の入ったティーカップを恵の前に置き、立花先生は恵と向かい合った席に着いた。

「どうそ。あ、ミルクは無かったけど、いい?それと、お砂糖はこれを使ってね。」

 テーブルの脇に置いてあった、スティック包装のティーシュガーを立ててある容器を、立花先生がテーブルの中央へと滑らす。

「先生は、コーヒーは何時(いつ)もブラックでしたっけ?」

「ミルクは入れないけど、砂糖は気分で入れたり、入れなかったりね。」

 そう言って、砂糖を入れてないインスタント・コーヒーのカップに、立花先生は口を付ける。それを眺(なが)めつつ、恵は砂糖をスティック式の包みから半分程をティーカップに注ぎ、五回、スプーンを回(まわ)して、既にティーバックを引き上げてあるお皿へと置いた。

「そう言えば、実松課長と前園先生の様子はどう? 瑠菜ちゃん達とは、上手くいってる?」

「大丈夫ですよ。実松課長の事は、『師匠』と呼ぶ事になったみたいです。」

 恵はティーカップを持った儘(まま)、「うふふ」と笑った。立花先生も微笑んで、聞き返す。

「師匠?」

「はい。『先生』だと、前園先生と紛(まぎ)らわしいんだそうです。」

「佳奈ちゃん?」

「はい。」

「まぁ、『リン』付けで呼ぶよりは、良い選択かもね。」

「あれは、古寺さん流の、『親愛の情』の表し方ですから。それに、先輩や目上の人に対しては、しない様にしてるみたいですよ。」

 恵は、立花先生が居ない所では、佳奈が立花先生の事を『智リン』と呼んでいる事を、敢えて伏せておく事にした。

「実松課長の方は何て?」

「初めの内は『擽(くすぐ)ったい』って言ってましたけど。流石に、もう諦めたみたいです。瑠菜さんも、『師匠』って呼び始めたので。」

「あらま。」

 そこで、立花先生はカップを再び口元に寄せ、一口、コーヒーを飲んで、一息吐(つ)く。
 その様子を黙って見ていた恵が、声を掛ける。

「先生?」

「何?恵ちゃん。」

 立花先生は微笑んで、聞き返した。それに対して、恵も笑顔を作って、問い掛ける。

「そろそろ、本題に入りませんか?」

「あぁ…そうね。」

 再び、立花先生の挙動が、不審な様子に戻るのだった。流石に、付き合い切れないと思った恵は、ストレートに思った事を言ってみる。

「先生? 先生らしくないですよ?」

「う~ん、そうね。わたしも、そう思うわ。全然、わたしらしくは、ないのよ。」

「どうされたんです?」

 立花先生はコーヒーの入ったカップをテーブルに置き、椅子の背凭(せもた)れに身を預けて、腕組みをして考え込んでいる。
 恵はティーカップを唇に寄せて、一口、紅茶を飲んで、立花先生の返事を待った。
 数秒経って、溜息を一つ吐(つ)くと、一度、小さく頷(うなず)いて立花先生は話し始めた。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。

「STORY of HDG」Pixiv向け・まとめ版 更新・180909

五月末頃より、「小説家になろう」と言うサイトに「STORY of HDG」を順次投稿しておりますが、それに併せて、文中の句読点の見直しとか、表現の修正、説明不足と思われる箇所への文章追加、誤字脱字の修正、漢字表記等の表記統一、の様な作業を続けております。
 先日の時点で、第6話まで「なろう」への投稿が終わり、アクセス数もトータルで 2000PV を数えましたが、これが多いのか、少ないのかは、正直よく解りません(笑)。2000PV を投下した部数:80 で割れば、一部当たりが 25PV となりますので、矢張り多分、少ないのだろうな、とは思います。まぁ、小説として売りたい訳でもないので、その辺りは余り気にしてはいませんが。
 感触としては、追いかけてくれている読者数は十名程度かな、と言う所ですが、それでも「十人もいるのか」と言うのが当方の所感でして、今後も、掲載は継続していきたいか、と。
 
 bLog:「WebLog for HDG」の方では、「なろう」に追加したイラストも含め、内容の改訂に合わせて同期を取っていたのですが、Pixiv版の方はほぼ放置状態だったので、今回、第0話~第2話迄、「なろう」版との同期を取った物に改訂しました。
 
 もっと、随所にイラストを入れたいのが本来の希望ではありますが、モデリングとかが全く追いついていないので、長い目で見て、お付き合い頂けると嬉しいです。
 
 取り敢えず、今はこんな感じ。本作を未読で、興味の有る方は、下記のリンクよりどうぞ。
 
 「なろう」版 URL> https://ncode.syosetu.com/n1354eu/
 「Pixiv」版 URL> https://www.pixiv.net/series.php?id=655230
 
 あ、あと現在、第10話の打ち込みを進めていますが~今回は、一通り纏まるまで公開を開始しない方針ですので、もう暫くお待ちください。現時点で第4回部分を打ち込み中ですが~第10話をどう纏めるか、まだ迷ってます。
 簡単に予告すると、第10話は、立花先生と森村 恵が、ひたすら二人が会話している回です(笑)。「STORY of HDG」は基本、会話劇なので、ある意味、真骨頂と言えるお話です。

HDG-LMF01 コックピット・ブロック運搬ドリー・180716

「STORY of HDG」本編、第3話第10回の挿絵用に製作を始めた、この「運搬ドリー」。
 大体、三日位で作る積もりだったのですが~結果、約十日。とは言え、毎日フルでこの作業だけをやれた訳ではないので、一日当たり八~十時間作業で換算すれば、実働で三日。まぁ、妥当な所だったのか。
 で、以下、サンプル画像。

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 構成としては、フレームに車輪を付ければオッケー的なノリで始めた筈だったのですが。「アレ?コレ、ロック機構要るんじゃね?」と思ってしまった為、前後にロック・アームの機構を考え始め、「アレ?カナードとかスタビとか、引っ張ってる時にぶつけそうじゃね?」と思ってしまい…以下略。結果、見ての通りとなりました。
 パーツ的には、一応、全て UV 展開はしてありますが、テクスチャは一枚も描いてません(笑)。
 ロック機構はハンドルの回転と固定ピンが連動して、ロック・アームが倒れる所まで、モーション・ダイアル一つで連動する仕掛けは作ってありますが~今後再利用するかは未定(笑)
 まぁ、格納庫内背景の置物的位には利用できるかな、と。
 さぁ、挿絵画像を作らねば。

STORY of HDG(第9話.16)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-16 ****


 一方、理事長室を出た兵器開発部一同は、取り敢えず部室へと向かって歩いていた。既に校舎から出ていた彼女たちは、陸上部やサッカー部が練習中のグラウンドを横目に、青々と葉の茂った桜並木の歩道を進んでいる。先頭は緒美達三年生、その後ろに維月とクラウディア、樹里と佳奈、そして瑠菜、最後尾が茜とブリジットと言う順番が、何となく出来上がっていた。
 そんな中、暫く黙って歩いていた維月が、唐突にクラウディアに声を掛ける。

「クラウディア、ちょっと聞いておきたい事が有るんだけど?」

「何?」

 クラウディアの返事は、極めてフラットだった。

「以前(まえ)の事件の時は、ハッキングとかしてなかったのかなぁ、と。」

「あぁ、今のイツキと同じで、アンナにも『そう言う事は止めて』って、いつも言われてたから。彼女の前ではやらない様にしてたの。あの時も、モバイルは持ってたし、通信環境も有ったから、やろうと思えば出来たんだけど。」

「あぁ、やっぱり。そうだったんだ…」

「でも、今はやらなかった事を後悔してる。あの時、正しい情報を知ってたら、アンナが死ぬ事は無かったかも知れない。」

 そんな二人の会話が聞こえた緒美が、振り向いてクラウディアに言うのだった。

「その気持ちは解らないではないけど、あなたのお友達の事は、あなたのせいでは無いでしょう? あなたが責任を感じる事ではないわ、カルテッリエリさん。」

「それは、同じ事をカウンセラーにも言われましたけど…」

 そう、クラウディアが言葉を返すと、恵が緒美に言う。

「まぁ、そんな簡単に気持ちが変えられるなら、誰も苦労しないよね。ねぇ、部長。」

「そうれもそうね。」

 緒美は左隣の恵へは視線を向けず、前へ向き直った。その直後、緒美は急に何かを思い出した風に「あぁ」と声を上げると、もう一度振り向いて、最後列の茜に向かって言った。

「そう言えば、天野さん。」

「あ、はい。何でしょう?」

 急に呼び掛けられ、慌てて茜は返事をした。茜とは少し距離があったので緒美が立ち止まると、それに釣られて全員が立ち止まったので、茜も立ち止まるのだった。結果、茜と緒美の距離は殆ど変わらなかったが、緒美はその儘(まま)の距離で、話を続ける。

「昨日、あの後、副部長達三人と話していたんだけど。天野さん、あなた、本当は、剣道部に入りたかったのかしら?」

 唐突に、思いもしない事を問い掛けられ、茜は困惑し、聞き返す。

「え~っと、どう言う流れで、そんなお話になったのでしょうか?」

 その、茜の問い掛けに答えたのは、直美である。

「いや、昨日のあなたの動作を見ててさ、剣道の方、相当の実力者だったのかなって思ってね。それで。」

 直美の答えを聞いて、茜は目を丸くする一方で、隣に立つブリジットが声を上げて笑い出す。そのリアクションに、今度は、三年生一同が困惑するのだった。

「もう、笑わないでよ。ブリジット。」

 茜は、左手でブリジットの腰の辺りを、後ろから軽く叩く。ブリジットは「ゴメン、ゴメン」と茜に謝ると、笑いを堪えながら、緒美達に向かって言う。

「茜は、剣道で勝った事は、一度も無いですよ。ねぇ。」

 ブリジットが最後に、茜に向かって同意を求めて来るので、茜もブリジットの発言を補足する。

「練習試合も含めて、一勝もしてませんから、実力者なんてとんでもないですよ。」

「どう言う事?」

 其れが、困惑した緒美が、漸(ようや)く絞り出した言葉だった。

「どう、と言われましても…。」

 茜は苦笑いして、答えた。その一方で、ブリジットが真面目な顔で言う。

「茜が優しいからですよ。」

「いや、優しいとか、そう言う事じゃなくって。そりゃ、勝てる物なら、勝ちたかったですよ?わたしだって。努力や工夫はしましたけど、結果は、全敗って言う事でして。」

 茜の補足を聞いて、直美が問い掛ける。

「それじゃ、真面目にはやってたんだよね?」

「勿論。徒(ただ)、小学生の時に通ってた道場の師範から、『向いてない』とは言われてまして。まぁ、その通りだったのかな、と。」

 今度は、恵が問い掛ける。

「向いてない?」

「あの~アレです。剣道って、打ち込む時に『メ~ン』とか声を出して打ち込むんですけど…」

 茜は、打ち込む動作を再現して見せる。

「…あの声とか『気合い』って言うか、『気迫』とか『殺気』みたいなのが、どうにも苦手で。」

 その続きを、ブリジットが説明するのだった。

「中学の時、剣道部の顧問の先生から聞いたんですけど。茜は相手の『気合い』を受けると、どうしても踏み込みが甘くなって、一本取られちゃうって、優し過ぎるんだろうなって。」

「優しいってのは違う様な…単に、ビビリなだけよ。」

「ビビリって。もしそうなら、昨日みたいに、咄嗟(とっさ)に反撃は出来てないでしょう?」

 自虐的な茜の自己分析に対して、恵は客観的な見解を示す。それに次いで、直美が問い掛ける。

「天野は、結局、何年やってたの?剣道。」

「小学生の頃からですから~八年くらいですね。」

「向いてないって言われたのは、何年目の時?」

「いえ、三ヶ月目…くらいでした。」

 茜は照れ臭そうに、笑って言った。その答えを聞いた直美の方が唖然としていたので、今度は緒美が尋ねる。

「天野さんは、その時、止めようとは思わなかったの?剣道。」

「あぁ~その時、師範から言われたんです。『この儘続けても剣道は強くは成らないだろうけど、それでも腐らずに練習を続けられたら、心は強くなる筈だから、三年は続けなさい』って。」

「もっともらしく聞こえるけど、それ、絶対、月謝目当てだよね。」

 呆れた様に直美は、恵にそう語り掛けた。恵は、複雑な顔で愛想笑いを返すが、茜は笑って言うのだった。

「今考えると、そうかも知れないですけど。不思議と、その時は剣道の練習が特に嫌でもなかったし、道具一式をおじい…祖父に揃えて貰ってたりしてたので。結局、中学に上がるまでは、その道場に通ったんです。それで、まぁ、続けていればそれなりに、欲も出て来るじゃないですか。一度くらい、一本取ってみたくて、それで中学では剣道部に入ったんですが…まぁ、結果は、前に師範に言われた通りでした。」

「成る程。それでも、得る物は有ったのよね?」

 緒美が微笑んで、茜に尋ねると、茜も笑顔で答える。

「勿論です。結局一度も勝てなかったですけど、人や自分との向き合い方は学べたと思いますし、部活で先輩や友人も出来ましたから。頑張っても、出来ない事は有るって知れたのは、大事な事だと思ってます。それに、そもそも、剣道家になろうと思っていた訳じゃありませんし。」

 そこ迄、黙って聞いた瑠菜が、突然、茜に問い掛ける。

「そう言えば、あの時。トライアングルが突っ込んで来たのは、恐くは無かったの?天野。」

「そうですね。『気迫』とか『殺気』みたいなのを感じなかったので、それで、多分。」

「ずっと真面目にやっていたから、身には付いていたのよね、剣道が。」

 瑠菜への答えを聞いて、ブリジットがそう、茜に言うのだが、それに対して、茜は反論する。

「だから~BES(ベス)の扱いは、剣道の動作とは違うからね、何度も言うけど。アレは、居合いとかの動作を参考して、事前に HDG に動きを学習させてあったから、咄嗟にあのスピードで再現出来たんだし。それに、左手にランチャーを持ち替えたから、右手一本で振り下ろしたけど、あんな事が出来たのも HDG だったからこそよ。」

「解った、解った。」

 ブリジットは笑って、そう言葉を返すのだった。
 そんな折、南の空から一機の大型ヘリが、爆音を響かせて学校の上空を通過し、山頂方向へと飛行して行く。その様子を、一同が何となく見上げていると、直美が言うのだった。

「今日は昼過ぎから、矢鱈(やたら)と防衛軍のヘリが飛んで来るわね。」

 その疑問に答えたのは、緒美である。

「あぁ、山頂の、レーダー・サイトの点検とか、あと、エイリアン・ドローンの残骸を回収しているんじゃない?多分。」

「そう言えば、三時頃だったかな。シートに包まれてたけど、何かの塊みたいなのを、大型のヘリが吊り下げて飛んでるのを見ましたよ。」

 樹里が目撃情報を語ると、佳奈と瑠菜がそれに反応する。

「あぁ、それ、わたしも見た~。」

「アレは、シートの形状からして、中身は飛行形態のトライアングルだったよね、多分。」

「さて、それじゃ。ここで立ち話してるのも何だし、部室へ行きましょうか。昨日のデータ整理、今日中に終わらせたいし。」

 緒美がそう言って歩き出すと、他のメンバーも再び、歩き出すのだった。


 兵器開発部の面々は、この時、全く意識してはいなかったのだが、この日、天神ヶ﨑高校の周辺で回収されたエイリアン・ドローンの残骸は、回収に当たった防衛軍がその目を疑う程の綺麗な残骸だったのである。
 エイリアン・ドローンを数多く迎撃して来た防衛軍ではあったが、その撃破は殆どが誘導弾に因る成果であり、結果として、その残骸は主要部が爆散していた。20mm機銃や30mm機関砲に因って撃破した残骸も、主要部は大きく破損していたり、内部が粉々に粉砕されている物が殆どで、その後に出火した場合は熱効果で変形していたり、組成が変質していたりするので、回収出来た残骸から何かしらの、有意な技術情報が引き出せた事は皆無だった。
 唯一判明していたのは、『エイリアン・ドローンに使われている素材は、地球上にある物質と大差が無い』と、その程度である。
 しかし、今回、回収された残骸は、荷電粒子砲やプラズマ砲で主要部が吹き飛ばされている以外は大きな破損が無く、何よりも、茜が切り倒した最後の一機は、胴体が分断されている以外は何の欠損も無い、完璧なサンプルであった。
 防衛軍の回収担当者が「これほど綺麗な残骸は、米軍だって持ってない」と発言したとかしないとか、それは定かではないのだが、この時、重要な資料の入手が為されたのは、間違いのない事実だったのである。

 

- 第9話・了 -

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。

 

STORY of HDG(第9話.15)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-15 ****


「それは又、どう言う?」

 思わず、聞き返したのは立花先生である。

「うん?あぁ、直接の原因は SF 映画を観ての事らしいが、自分が剣道で防具を着けている体験と、何か妙なイメージ的なリンクが有ったらしくてね。それ以来、他の SF 作品から工学とか、兵器関係にまで興味が広がったらしい。何年か前には、天野重工ではパワード・スーツの開発とか研究はしてないのかって、聞かれた事も有ったなぁ。」

 合いの手を入れる様に、塚元校長が問い掛ける。

「それで、この学校に?」

「まぁ、そう言う事だ。」

 次に、立花先生が問い掛ける。

「兵器開発部で鬼塚さん達が、HDG の開発をやっている事は、入学前に天野さんには知らせてなかったんですよね?」

「そんな余計な事は言わんよ。実際に入学する迄は、飽くまで部外者だからね。」

「天野さんが入部した時、緒美…鬼塚さんが天野さんの事を『パワード・スーツに造詣(ぞうけい)が深い、希有な人材』って評していたんですが。…成る程、そう言う流れなんですね。 実際、天野さんが、どうしてあんな風にパワード・スーツに興味を持ったのかは、疑問に思っていました。」

 立花先生は、テーブルに置かれたコーヒー・カップに手を伸ばす。
 そして、塚元校長は微笑んで、天野理事長に言うのだった。

パワード・スーツ?その事については、わたしは良く分かりませんけど。お孫さんが、中学時代の理不尽に負けなかったのも、今回、学校を救ってくれたのも、剣道で心を鍛えていたお陰ではないですか。 わたしは、そう思いますけれど。だから、間違いだった、何て仰(おっしゃ)ったら、天野さんが可哀想ですよ。」

「そう言って貰えると、幾分、気は楽だが。そのせいで危ない真似をされるのは、身内としては、どうもね。」

 その天野理事長の答えを聞いて、立花先生が一言。

「天野さんは、祖父は身内だからって特別扱いはしない、って言ってましたよ。」

「そんなのは、建前だよ。わたしの、ね。」

「でしょうね。」

 透かさず塚元校長に同意されて、天野理事長は「ふふっ」と、少し笑った。そして、言葉を続ける。

「でも、まぁ。今回の件では、茜で良かったのかも知れん。立場上、余所様のお嬢さんを、矢面に立たせる訳にも行(ゆ)かん…と、こんな事を言ったら、今度は娘…茜の母親が怒るだろうがね。」

「所で理事長。そんな世間話の為に、立花先生に残って貰った訳ではないのでしょう?」

 話題が本筋から外れて行くのを、塚元校長が軌道修正する。天野理事長は、コーヒーをもう一口飲んで、話題を変えるのだった。

「では、本題に入ろうか。立花先生に聞いておきたいのは、今後の見通しと言うか、進め方についてだな。」

「と、言われますと?」

「あの子達に、どこまでやらせるべきか、と言う事だよ。我々としても、実戦データの取得迄、学生にやらせる事は考えていない。早早に、本社か防衛軍に運用試験の方を移管したい所だが、その見通しについては、どう思う?」

「先程のお話だと、理事長は軍への移管は慎重に、とのお考えでは?」

「そう考えてはいるが、生徒の身の安全には代えられんだろう。」

「そうですか。まぁ、軍で有れ、本社で有れ、HDG の試験を移管するには、早くて三ヶ月、長ければ半年ぐらいは、移行に時間を取られるのは覚悟しないと。」

「そんなにか?」

「はい。先程、鬼塚さんが言っていた様に、現在の HDG が動かせるのは、天野さんの能力に負う所が大きいので。パワード・スーツの運用についてのビジョンが有って、正確にシステムの仕様を理解し、しかも、人並み以上に身体も動かせる、そんな人材は本社にも防衛軍にも、そうはいないと思いますので。」

「茜は、そんなに優秀かね?」

「優秀ですよ。この学校の、学年トップの成績は、伊達ではないでしょう。ですよね?校長先生。」

 立花先生に話を振られた塚元校長は、胸を張って答える。

「勿論。記憶力のコンテストみたいな、そんな教え方は、当校はしておりませんので。天野さんの中間試験での成績は、それは立派な物でしたよ。」

 塚元校長のコメントを聞いて、天野理事長は腕組みをし、顎を引く様にして言う。

「う~む、そう言う事になると、当面はあの子達に頼らざるを得ない、と言う事か。大人としては、聊(いささ)か情け無い話しだが…とは言え、スケジュールには、余り余裕が無いしなぁ。」

「スケジュール?」

 塚元校長が、天野理事長に聞き返す。ここで天野理事長が口走ったのは、『R作戦』用のデバイス開発のスケジュールの意味だったのだが、その事に立花先生は気が付いていた。一方の塚元校長は『R作戦』の事自体を、知らされてはいなかった。勿論、無闇に口外は出来ない事柄なので、天野理事長は歯切れの悪い返事しか出来ない。

「あぁ、それはだな。申し訳無いが…。」

 その様子を見て、塚元校長も直ぐに事情を察するのだった。

「あら、会社の方(ほう)の秘密事項でしたら、深くは追求いたしません。聞かなかった事にしますが、立花先生は御存じの件?」

「いえ、わたしも詳しい事は…。」

「そう。なら、わたしだけ仲間外れではないのね、良かった。」

 塚元校長は、そう言うと「うふふ」と笑うのだった。

「済まないね、校長。」

「いいえ、今に始まった事じゃ有りませんから。」

「ともあれ、もう少し、状況を見ながら考える事にしよう。しかし、場合に因っては、我々の方が覚悟を決めねばならん時が、来るかも知れん。成る可く、そうはならん様に手は打って行く積もりだが。」

 立花先生は、少し身を乗り出す様にして天野理事長に問い掛ける。

「昨日みたいな事が、そう度々(たびたび)起きる物でしょうか?」

「これは今朝、防衛省に昨日の件を報告した際に聞いた話なんだが。 どうやら、連中はここに来て、襲撃の降下ルートを変えた様なんだ。今までは所謂(いわゆる)『北極ルート』だったのだが、この四月にロシアの防空レーダーが稼働を始めただろう? あれの運用が軌道に乗って来て以降、迎撃の効率が可成り上昇していたからな。それに対応して、何れは降下ルートを変えて来るんじゃないか、と予測はされていたんだが。」

「それが、実際に? 確かに、『太平洋ルート』に、って噂は耳にしてましたけど。」

「いや、『アジア大陸ルート』、『中連』上空から降りて来たらしい。連中は余っ程、海は嫌いと見えるな。」

 ここで、天野理事長が言う『中連』とは、『中華連合』の事である。四十年程前に共産党政権の経済政策の失敗が原因で『中華人民共和国』が崩壊し、十年程の混乱の時期を経た結果、四つの地域に分裂してそれぞれが自治政府を樹立していた。以来、四つの政府は再統一を目指しつつも、主導権争いと足の引っ張り合いを繰り返しており、辛うじて内戦への発展だけは回避している様な状況が現在まで続いている。一方で対外的には一つの国家であると主張はしている物の、連邦政府の成立さえ儘ならない状況故に、『連邦』ではなく『連合』と呼ばれているのだった。実の所、其れ其れの地方自治政府内部でも、「再統一派」と「民族自立派」の意見が対立している上に、周辺各国が曾(かつ)ての様な大国化を恐れて、表に裏に干渉を繰り返すので、一向に情勢が安定しない儘(まま)、時間だけが経過していたのである。
 そんな状況なので、四つの自治政府が連携した防空体制など築ける筈も無く、そこをエイリアン・ドローンに付け込まれた格好になったのだ。

「それで、西側、九州の方から襲撃して来た訳ですか。」

「ああ。従来通りなら北側、ルートを変えて来るなら東南側からと踏んでいた防衛軍は、予想外の西側からの襲撃に慌てたらしい。それで、昨日は対応が後手後手になった様子だ。」

「と、言う事は。今後はこの辺りも、襲撃事件が増えるのでしょうか?」

「今まではロシア側からの情報提供も有って日本海上空で迎撃出来ていたが、東シナ海側だと『中連』の協力は期待出来ないし、それで日本領空に入られたら、九州迄はあっという間だ。そうなれば、この辺りも、安心は出来んな。」

「それは物騒なお話ですね。」

 天野理事長と立花先生の遣り取りを聞いていた塚元校長が、一言、漏らす。

「そこで、今朝、防衛省に、Ruby がここに有る事を知らせておいた。今迄は、特に明かしてはいなかったんだがな。 取り敢えず、これで、この周辺の対処については、優先してくれると思う。」

「防衛軍が守ってくれるのは、Ruby なんですか?学校ではなくて。」

 立花先生は眉間に皺を寄せて、聞き返した。

「以前も言ったと思うが、Ruby は国家機密級のプロジェクトだからね。今朝の報告で、それが被害を受けそうになっていたと知って、防衛省のお役人も泡を食った様子だったよ。防衛軍の現場の指揮官は、勿論、そんな事は知らないから、昨日は、この辺りの対処を後回しにしたのだろうがね。」

「今後は、防衛軍も対応が変わってくるだろう、と?」

「そう、願いたいがね。」

「そもそも、Ruby って、どう言ったプロジェクトなんでしょうか?…と、お聞きしても、教えては頂けないんでしょうね、理事長。」

 駄目で元元とばかりに、諦め顔で聞いてみる立花先生である。それに対する天野理事長の返答は、予想通りの答えだった。

「生憎と、それは未だ明かせないな。何れは、話す事になるとは思うが。済まないね、立花先生。」

「いえ。 唯(ただ)、そんな大事な物を今回は実戦に使ってしまいましたし、あの子達が預かっていて、本当に Ruby の教育になっているのかどうか。」

「それに関しては、問題は無い。Ruby は何れ、実戦に投入される予定の物だし、Ruby の育成については井上主任から、順調だとの報告を受けている。」

「実戦に、ですか? Ruby を?」

 意外な天野理事長の発言を聞いて、立花先生は身を乗り出して聞き返した。

「何を驚く事が有る。現に、LMF に搭載しているんだから、至極当然の事だろう。まぁ、勿論、LMF に搭載する為に、開発している訳ではないが。」

「そう言われれば、その通りですが。わたしもあの子達も、Ruby を兵器として認識しては、いなかったですね。」

 立花先生は上体を引いて、虚脱気味に言うのだった。一方で天野理事長も、少し考えてから、言った。

「そう言えば、先刻も茜が、Ruby の身を案じて、の様な事を言っていたな。Ruby の事を、過剰に人扱いする傾向が出る事には留意すべきと、井上主任も言っていたが。あの子達を無用に煩悶(はんもん)させる事も無いだろうから、さっきの事は聞かなかった事にしておいてくれ、立花先生。」

「それは、構いませんが…。」

 表情を曇らせる立花先生の隣で、黙って聞いていた塚元校長が溜息を一つついて、言った。

「政治だか軍事だか、そう言う物と関わると、何でも秘密、秘密。息苦しいったら、有りませんわね。」

 塚元校長の正面に座る天野理事長は、唯(ただ)、渋い顔をするのみだった。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。

 

STORY of HDG(第9話.14)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-14 ****


「さて、校長。そちらから、何か言っておく事は有るかね?」

「理事長の方は、もう宜しいんですの?」

「まぁ、そうだな。校長の方から、お話が無ければ、そろそろお開きにしようかと思うが。」

「では、一つだけ…。」

 そう言って、塚元校長は視線を兵器開発部一同の方へと移した。

「城ノ内さん?」

 突然、名前を呼ばれ、樹里は慌てて返事をする。

「あ、はい。何でしょうか?校長先生。」

「あなたからは、何も発言が無かったけど、何か言っておきたい事は有りませんか?」

「いえ…特には、無いですけど。どうしてですか?」

 塚元校長は微笑んで、答える。

「黙って、お話を聞いてるだけでは、退屈したでしょう?」

「いえ、色々と興味深いお話だったので、大変有意義だったかと。わたしが退屈している様に、見えましたでしょうか?」

「そんな事は有りませんでしたよ。 ルーカスさん、古寺さん、あなた達も発言の機会が少なかったわよね。何か、言っておきたい事は有る?」

 塚元校長の問い掛けに、瑠菜と佳奈は、姿勢を正して答えるのだった。

「いいえ、有りません。」

「わたしも、特には無いです。」

「そう。では、わたしからも特には有りません。 理事長。」

 視線を天野理事長へと戻し、塚元校長は頷くように頭を下げた。天野理事長も一度頷いて、話し始める。

「では、最後にもう一度、釘を刺しておくが。今回は幸いにも上手く行ったが、幸運は二度、三度と続く物では無い。今後は呉呉(くれぐれ)も、危険な真似はしない様に。大人を信じて、指示に従って欲しい。良いかな?」

 天野理事長の言葉に、兵器開発部一同は声を揃えて「はい。」と、答えた。その返事を聞いて、不意に、天野理事長が立ち上がる。

「…とは言え、だ。実際問題として、今回、諸君の行動は、この学校の生徒達と施設が危険に曝(さら)されるのを防いでくれた。その事実には、学校を代表して、諸君には礼を言わねばならない。 ありがとう。」

 両手を執務机に着き、天野理事長は頭を下げるのだった。その様子に兵器開発部の一同が戸惑う中、天野理事長は頭を上げて言葉を続けた。

「話を聞かせて貰って、今回のキミ達の行動が面白半分の暴走や、妙な功名心からの物で無い事は理解出来た。純粋に、級友の安全を願う思いや、愛校心からの行動であったと思う。それ故に、感謝を表明する物であるが、だからと言って褒める訳にも行かん。もう一度言うが、二度とこの様な事はしない様に。約束してくれるな?」

 兵器開発部一同、もう一度、声を揃えて「はい。」と、答えるのだった。

「よろしい。では、ご苦労だったね。今日は、以上だ。」

 天野理事長と塚元校長に向かって一礼すると、部長である緒美を残して、ドアに近い者から順番に退室して行く。そこで、天野理事長が、茜を呼び止めるのだった。

「あ~天野君。」

 天野理事長は、右手を前に出して、小さく手招きをして見せる。茜は不審に思いつつ、室内に戻り、中央の応接テーブルの前まで進むのだった。

「何でしょうか?」

「薫…お母さんには、昨日の事は伝えたりしたのかな?」

「いえ…未(ま)だ、です、けど?」

「そうか。昨日の件は折を見て、わたしの方から伝えておくから、暫く、黙っておいてくれ。心配させるといけないし、アレは母親に似て、怒ると怖いからな。」

 くすりと笑って、茜は答える。

「解りました。他には?」

「いや、それだけだ。」

「では、失礼します。」

 茜はもう一度、礼をしてドアへと向かう。
 全員が廊下に出たのを確認して、緒美と共に立花先生がドアへと向かおうとした時、天野理事長が立花先生を呼び止めるのだった。

「あ、立花先生は、ちょっと残ってて貰えるかな。」

 理事長室から廊下へと出た茜達の視線が、一斉に室内に向けられたのに気が付いた塚元校長が、宥(なだ)める様に声を掛ける。

「大丈夫よ、昨日の件で立花先生だけを、虐(いじ)めたりしないから。」

 天野理事長も、言葉を続ける。

「別件で、少し打ち合わせたい事が有るだけだから、キミ達は心配しなくても良い。」

 立花先生は、兵器開発部一同に視線を送ると、微笑んで頷いて見せる。そして、緒美が室内へ向かった皆の視線を断ち切る様に、開けられたドアの前まで進むと、くるりと室内方向へと身体を翻(ひるがえ)した。

「では、失礼します。」

 最後に、緒美がもう一度、一礼し、ドアを閉じるのだった。
 一斉に十人もの生徒が出て行った為、理事長室は急にがらんとした様に感じられる。
 天野理事長は、執務机を離れると、塚元校長と対面位置のソファーへと移動した。

「立花先生も、座ってくれ。」

「こっちへ、いらっしゃい。」

 塚元校長が自らの隣の、ソファーの座面を、ポンポンと叩いた。

「では、失礼します。」

「加納君、立花先生にお茶を。」

 塚元校長の左隣に一度は座った立花先生が、又、立ち上がって言った。

「あぁ、お構いなく…。」

「遠慮は不要だよ、立花先生。」

「立花先生は、コーヒーの方が宜しいですかね?」

 天野理事長の背後に立つ加納が、問い掛けて来る。

「あぁ、はい。では、お言葉に甘えて、コーヒーで。」

「あはは、いいから座って、立花先生。 あ、加納君、わたしにもコーヒー、頼むよ。」

「はい、承知しました。塚元校長は、如何ですか?」

「わたしは、もう結構。」

「では。」

 オーダーを聞き終えた加納は、さっさと隣の秘書室へと姿を消すのだった。

「立花先生は、あの子達に好かれてますね。良い事ですよ。」

 と、塚元校長が、先ず、話し始める。

「恐縮です。」

「それで、さっきの一連の話を聞いていて、どうだい?昨日、立花先生が聴取した内容とは、可成りニュアンスが違っていただろう?」

 天野理事長はニヤリと笑い、立花先生に問い掛けた。

「そう、ですね。冷静に考えてみれば、あの鬼塚さんが、一年生に迎撃を指示するだなんて。『やるなら、自分でやる』位は言いそうな子なのに。鬼塚さんから話を聞いていてた、自分が冷静でなかったんだな、と、思います。」

「鬼塚さんは責任を全部被る積もりで、立花先生の聴取に答えていたんでしょうね。」

「ああ言う、お互いを庇い合っているチームの事情聴取は個別にやっては駄目なんだ。誰が事実を言っているのか解らなくなる。一堂に集めて聴取をすれば、それぞれが自分から事実を話し出す、先刻の様にな。」

「はい。」

 立花先生は、徒、頷くばかりである。

「逆に、責任を押しつけ合っている様なチームの場合、纏(まと)めて聴取をやっては駄目だ。その中で力の有る者の顔色を窺って、誰も事実を言わなくなる。後で報復されるのを、恐れるからね。そう言う場合は、関係者全員から個別に事情を聞いて、これは大変な作業になるが、全部の内容を付き合わせて、聴取した内容のどの部分が本当で、どの部分が嘘か、割り出すしか無い。立花先生もこれから先の仕事で、そう言う局面に出会うかも知れないから、頭に入れておくと良い。」

「理事長は、今朝の、わたしの報告を聞いて、鬼塚さんが他のメンバーを庇っていると?」

「今朝の報告の内容は、何度か会った時の、鬼塚君の印象では信じられなかったからね。まぁ、それ以上に、迎撃に至った動機については、聞いておかねばならなかった。自分らが開発した技術や装置が機能するか試したかった、とかの浮ついた動機であれば、これは叱ってやらないと、とは思ったがね。」

「想像以上に、真っ当な動機だったので、少し驚きましたが、安心もしましたね。」

 そう、塚元校長が言うと、「同感だ」と言って天野理事長は、声を上げて笑った。そこへ、コーヒーの入ったカップを二つトレイに乗せて、加納が理事長室に入って来る。そして加納は、カップをテーブルの上に、静かに置いた。

「しかし、女子ばかりのあの兵器開発部で、こんな事態(こと)になるとは思ってもみなかったよ。」

 カップを手に取った天野理事長は、口元へとカップを運ぶ。一口、コーヒーを飲んで、天野理事長の発言は続く。

「茜に、剣道をやらせたのは、間違いだったかな。」

「あら、天野さんに剣道を勧めたのは、理事長でしたの?」

「うん。あの子は小さい頃から一人で本を読んでいるのが好きな、内気と言うか、人見知りと言うか。そんな具合だったから、小学校に上がってから、友達関係で苦労していると、娘…茜の母親から相談されてね。それで、武道系のスポーツでもやらせてみれば、人付き合いの面でプラスになるかと考えて。荒療治になるかも知れんが、まぁ、向かない様なら直ぐにでも辞めさせる積もりで、知り合いの道場、柔道と剣道のに連れて行ったんだが。柔道の方は相手と取っ組み合いするのを見ただけで怖がっていたんだが、剣道の方は防具を着けるし、直接組み合わないから、それ程、抵抗は無かった様子でね。それでも実際、中学を卒業する迄、続けるとは思って無かったよ。」

「先程のお話から察するに、天野さんが剣道をやっていたからこそ、中学校での孤立を免れたのでしょう?」

「それは、その通りなんだがね。あの子がパワード・スーツに興味を持った遠因が、剣道に有ってだね。」

 塚元校長の所感に、そう答えた天野理事長は、苦笑いを浮かべるのだった。

 

- to be continued …-

 

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※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。

 

STORY of HDG(第9話.13)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-13 ****


「いえ、謝罪は結構です、加納さん。 クラスにはブリジットが居ましたし、わたしを無視する人達の事は、わたしの方が無視していた位ですから。 それより、一年生の時の担任が、二年生に上がった時に転勤して行ったのは、そう言う訳(わけ)だったんですね?」

「はい。年度が変わって、協力する教師が居なくなった事で、首謀者の女子生徒は校内での扇動が思う様に行かなくなり、それで余計に、学校外での襲撃を画策する様になった、と言うのが事の流れです。お話し出来る顛末としては、大体、以上のような経緯となります。」

 加納が話を終えると、立花先生が真面目な顔で、天野理事長に問い掛ける。

「理事長、二人に三年間も警護を付けるのって、費用として相当の負担額ではないかと思いますが、相手方や学校に費用の一部でも請求とかされたら如何でしょうか?今の話だと、証拠も揃って居るようですし。」

 天野理事長は少し笑って、答えた。

「証拠と言っても、裁判にでもなれば、命綱にするには可成り頼りないね。なにせ、その女子生徒は人に指示したり教唆(きょうさ)しただけで、自分では一切、手を下してはいない。だから、直接的な物証は何も無い。集められた証言にしても、同じ内容を裁判で証人として証言をして貰えるか、その辺りが怪しい人物も可成りの数、含まれているし。そんな状況で被害の発生を防ぐのに掛かった費用を、相手方に請求するのは、まぁ、現実的ではないだろう。立花先生は法務を専攻されたから、こう言った都合については、詳しいのではないかな?」

「法務とは言っても、刑事の方は専門外ですので。」

「そうか。まぁ、結果的に二人の身の安全は確保出来たし、会社への被害も未然に防げた。強請(ゆすり)で支払いが発生すれば、ネタの内容にも依るが、その額は警護よりも高くつくだろうし、強請に応じれば財務にも歪みが生じる。警備・警護の費用なら必要経費にでも出来るが、強請の支払いは、そうは行かないからね。」

 そう言って、天野理事長は笑うのだった。

「だからと言って、そこまで解ってて無罪放免と言うのは、納得が行きません。」

 直美が、語気を強めて少し大きな声を上げると、天野理事長は真面目な顔で答えた。

「勿論だ。元々は相手方の家庭の問題だからね。こちらで集めた資料を纏(まと)めた上で、弁護士を通じて相手方の親御さんへ送ったよ。彼女たちが中学を卒業してからね。それで、先方の更生の切っ掛けにでもなれば、と思っていたんだが。」

 そこで、天野理事長が発言を止めたので、数秒待って、茜が尋ねた。

「何か、あったんですか?」

「うむ…。」

 唸るような声を出して、天野理事長は椅子の背もたれに身を預ける。その様子を見て、加納がアイコンタクトの後、発言するのだった。

「では、わたしから。 実は、その首謀者の女子生徒なんですが、この四月に、違法薬物の急性中毒で入院したそうです。聞いた所に依れば、植物状態で回復の見込みは無い、とか。それから、わたしが『碌でもない大人』と言った、彼女に付いていた男なんですが、解雇された後に、何らかの喧嘩に巻き込まれたとかで、死亡しております。」

「…何が有ったんでしょうか?」

 茜は眉間に皺を寄せ、加納に問い掛ける。しかし、加納は表情を変えず、事務的に答えるのみだった。

「さぁ、そこまでは解りませんし、我々の関知するべき所でも有りません。一方は違法薬物…平たく言えば『麻薬』が絡んでおりますし、もう一方は過失であったとしても殺人事件、どちらも、立派な刑事事件ですので、警察の方(ほう)で捜査をしている、と、聞いております。」

「新島さん。」

 塚元校長が、突然、直美を名指しで声を掛ける。直美は少し驚いて、返事をするのだった。

「あ、はい。何でしょう?校長先生。」

「あなたは、先程の一連の顛末を聞いて、このお話からどんな教訓を引き出しますか?」

 そう問い掛けると、塚元校長は静かに微笑む。直美は一度、天井に視線をやるようにし、数秒考えて、答えた。

「因果応報…でしょうか。」

「分かり易くて良いですね。そう言うお話だったと、受け取る人も多いでしょう。けど、わたしは『付き合う人は、選びなさい』と、言いたいですね。碌でもない人と関わると、自分も碌でもない目に遭う、と。そう言った意味で、天野さんも、ボードレールさんも、一時的に嫌な思いはしたでしょうけれど、お互いが選んだ相手は友人として適切だったと思っていいでしょう。 あの時に、嫌な思いをしたくなくて、天野さんもボードレールさんも、あちら側を選ぶ事だって出来たのに、それをしなかった。それは、二人とも誇りに思って良いと、わたしは思いますよ。」

「はい、ありがとうございます。」

 茜とブリジットが、揃って返事をする一方で、ニヤリと笑って天野校長が言うのだった。

「『人を選べ』などと、教育者が言っても良い物ですかね?校長。」

「皆さんがもっと、幼い子供だったら『みんなと仲良くしなさい』と、立場上、言う所かも知れませんが。残念ながら、実際の世の中は『みんなが仲良く』出来るような社会では無いですからね。危険な人や、危険な事からは距離を取る。そう言う賢明さは、生きていく上で必要だと。それは大人として、皆さんに伝えておかなければいけません。そして、皆さんは『人を見る目』を、養っていかなければなりませんよ。」

 塚元校長は、天野理事長の突っ込みを、平然と切り返すのだった。そして、思い出したように、今度はブリジットへ向かって、塚元校長は尋ねた。

「そう言えば、ボードレールさん。進路をこの学校に決めたのは、その事件の影響も有るのかしら?」

「いいえ。単純に、茜と同じ進路に行きたかっただけだけなんですが…今のお話を聞いて、会社の方へは、正式に入社してから、幾らかでもわたしに出来る事で、お返しをしなければ、と。今は、そう思っています。」

 その返事を聞いて、天野理事長は幾分、困ったように言うのだった。

「だから、そのような事は考えなくてもよい、と、先刻も言ったと思うのだが?ボードレール君。」

「あ、あぁ~…スミマセン。」

 恐縮するブリジットを見て、微笑んで天野理事長は言った。

「まぁ、これからも茜と仲良くしてやってくれたら、茜の祖父としても嬉しいよ。」

「はい。」

 ブリジットは、運動部の所属らしい、はっきりとした返事を返す。天野理事長は一度頷(うなず)いて、再び話し始めるのだった。

「さて、大幅に話が逸(そ)れたので、昨日の件に話を戻すが。鬼塚君、キミが迎撃を行うと考えを切り替えて、その時点で成功の確率はどのくらいと見込んでいたのか、教えてくれるかな?」

「明確に、何パーセント、とは答えられませんが…段階毎に、色々と可能性は考えていました。先ず、第一段階として、レーダー施設の防空用ミサイルを、防衛軍が作動させるだろうと。これで、向かってくるエイリアン・ドローン六機が、一乃至(ないし)は三機の範囲で処理されるだろう、と見込みました。実際に撃墜出来たのは、二機だったので、わたし達が迎撃するべきは、残り四機となりました。 エイリアン・ドローンが初めて遭遇する兵器を警戒しないのは、過去の事例で解っていましたので、HDG と LMF は警戒されずに第一撃を加えられるのは確実でした。この第二段階では、HDG と LMF が同時に攻撃を加える事で、確実に二機は処理出来るだろうと。実際はその通りになりましたが、出来れば、と期待した、更に複数機の処理上積みは、それは叶いませんでした。 そして、残ったのは二機。その動きを事前に予想は出来ないので、この第三段階については天野さんとボードレールさん、二人の機転と運に任せるしか無く。そこで、外部から状況を監視して、出来るだけのバックアップが行える様、無人観測機を出しておいて、最初から複数人で状況の監視をしていました。ですが、実際は最後の一機を見失ってしまい、監視もバックアップも完全に成功したとは言い難(がた)い結果です。 最終的に、最後の一機を処理出来たのは、HDG を扱う天野さんの能力に負う所が多かった、と思っています。」

「加納君、今の鬼塚君の話を聞いて、元防衛軍所属の者としてはどう思う?」

 話を振られた加納は、一呼吸置いて、答えた。

「わたしは戦闘機乗りでしたから、戦術の質が違いますので、一概に評価は難しいのですが。しかし、基本的な考え方は、外れては居ないかと。鬼塚さんは、良く研究されていると思いますが。」

「そうか。 結果的に、HDG と LMF、その有効性の一端を示した、とは言えるのだろうが。 実は、防衛軍の方(ほう)からは、完成しているのなら、早急に引き渡せ、と言われたのだ、が。それについては、どう思う?鬼塚君。」

 緒美は落ち着いて、天野理事長に聞き返す。

「理事長は、了解されたのですか?」

「いや。わたしの認識では、あれは未(いま)だ、未完成で検証中の装置(デバイス)だ。未完成の物を引き渡すわけには、いかん。」

「同感です。今、引き渡しても、防衛軍が天野さんと同じレベルで扱えるのか、保証は出来ませんし。それに、B型の試験を行って、パラメータとか稼働ライブラリのデータを比較しない事には、異なるドライバー間での互換性が想定通りに出来るかどうかが確認出来ませんので、もう暫くは手放すわけには行きません。」

「そうか、解った。」

 天野理事長は、一度、背中を椅子の方へ寄せ、一息置いて話し出す。

「これは、会社としての決定事項では無いが、わたしが個人的に懸念していると言う事で、話しておきたい。」

「はい。」

 緒美は、少しだけ両の眉を引き寄せ、返事をした。天野理事長は、少し目を細め、話し始める。

「昨日の一件で、君達のような戦闘の訓練を受けていない者でも、HDG を扱う事が出来れば『エイリアン・ドローン』を撃退可能である、と、事実として証明されてしまった。これは、鬼塚君が考えたコンセプトが正しかったのだと、わたしも思う。HDG が完成して汎用化すれば、対エイリアン・ドローン用の兵器として、有効なのは間違い無いだろう。 だが、HDG が対人兵器として使用されてしまう可能性について、鬼塚君は考えた事は有るかね?」

「いいえ、有りません。」

「そうか。日本の防衛軍があれを侵略戦争に使用する事は考え難(にく)いが、我々が装備した事を他国が知れば、同じ様な物が開発され、使用されるのは避けられない様に思う。だから、新しいコンセプトの兵器の開発や、提案には慎重さが必要なのだ。」

「HDG の開発を止めるべきだと?」

 天野理事長への、緒美の問い掛けを聞いて、兵器開発部一同が、一瞬、ざわめく。天野理事長は顔の前で、二度、右手を振って否定した。

「そうではない、話しを急ぐな。我々が思い付いた事なら、他の誰かも思い付いて、同じ様な開発をやっている可能性だって有り得る。であれば、開発は続けて、技術は保持しておくべきだ。問題は、軍に引き渡すかどうか、だよ。」

 そこで、立花先生が声を上げた。

「しかし、会長…いえ、理事長。防衛軍の契約が取れなければ、今まで掛かった開発費が回収出来ませんが。」

「そんな事は、解っておる。徒(ただ)、防衛装備事業が天野重工(うち)の本業では無いのでな。それは、立花先生もご存じだろう? 予算や費用の手当を考えるのが、我々、経営陣の仕事だ。その辺りは、どうにでもなるし、出来るようにやるだけだよ。」

 天野理事長の言う通り、現状で天野重工の収益の柱は、水素ガスの製造プラントと水素燃料動力機関の二つである。防衛装備事業での収益は、決算毎に赤字と黒字の間を行ったり来たりしているのが現実だった。

「戦闘機や戦車のようなサイズの兵器であれば、維持や運用には有る程度以上の組織力が必要だ。だが、HDG 位のサイズになれば、小規模な組織でも運用出来る可能性が有る。今回、キミ達がやって見せたようにね。まぁ、現実には技術的な問題や補給など、ハードルはそれなりに高い物だと思うが。」

 天野理事長の発言を受け、緒美が問い掛ける。

「理事長は、HDG が完成しても、防衛軍には引き渡さないお積もりですか?」

「…そう、決めたわけではない。先刻の立花先生の意見のように、財務上の問題も勿論あるし、対『エイリアン・ドローン』用の装備として有効であれば、防衛に協力しない訳にも行かん。だが、費用対効果という面から防衛軍が採用しない可能性も有る。現状で、HDG 一機が主力戦闘機一機より高価になる見込みと聞いているが、そうであれば、防衛軍仕様の『LMF 改』の方が、防衛軍には魅力的だろう。 その辺りは、今後の状況推移と交渉によって、結論は変わる物だ。」

「では、当面、わたし達のやるべき事は変わらない、そう思って良いでしょうか?」

「そうだな。わたしの言った事は、頭の隅にでも入れておいてくれたら良いよ。」

「解りました。」

 緒美の返事を聞いて、天野理事長は一度頷くと、大きく息を吐いた。

 

- to be continued …-

 

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STORY of HDG(第9話.12)

第9話・天野 茜(アマノ アカネ)と鬼塚 緒美(オニヅカ オミ)

**** 9-12 ****


「その調査によれば、『イジメ』の首謀者は同じクラスの女子生徒だったが、その父親というのが、天野重工(うち)の、まぁ、簡単に言えばライバル企業の系列メーカーの重役だとかでね、企業名はこの件とは無関係だから伏せるが…当初は、容姿や態度が気に入らない、と、ボードレール君を標的にし、それに参加しなかったから天野君をターゲットに加えた訳だが、後になって、天野君がその首謀者の父親のライバル企業関係者だと気付いて、妙な敵愾心(てきがいしん)を持ったらしい、と言う事だった。まぁ、どういう訳か最後まで、天野君が天野重工の社長の娘だと勘違いしていたらしいが、そのせいもあって、その女子生徒からは中学を卒業するまでの三年間、付け狙われていたんだよ。」

 天野重工の創業家と、茜の父親とが同じ『天野』姓であるため、この『茜が天野重工の社長令嬢である』と言う誤解に遭遇した経験が、時折ではあるが茜には有った。実際、天野重工の創業者である会長の孫ではあるため、社長令嬢では無いにせよ、血縁者である事には間違いが無く、茜自身はそう言った誤解を受ける事は、余り気にしては居なかったのだが。
 現在の三代目社長である片山の妻が、実は茜の叔母、茜の母である薫の妹、天野 総一の次女である洸(ひかる)で、その娘、つまり、茜の従姉妹(いとこ)である陽菜(ひな)が実際の社長令嬢であるのだが、『片山』姓であるが故、ほぼ、世間から社長令嬢だと思われた事がないと言う『捻れ現象』が起きていたのだが、それは、取り敢えず、本筋とは関係の無い話である。

「三年間って、二年生でクラスが変わって以降は、特に何もありませんでしたけど。」

 茜が、当事者としての所感を述べる。すると、秘書の加納が言うのだった。

「会長、後はわたしから説明しますが?」

「そうだな、頼むよ。」

「では。実はわたし、その警備保障会社に以前、勤めておりまして。その絡みもあって、茜さんの件、主にわたしが、やり取りをしておりました。」

 加納は茜達に向かって一礼した後、話し出す。

「調査報告によりますと、当初、首謀者である女子生徒は、複数の取り巻きを通じて、クラス全体による対象者への無視を徹底させていた訳ですが、当然、時間が経つにつれて、さらに対象者を追い詰めるために行為をエスカレートさせようとしていました。一昔前でしたら、行動が、所持品の棄損とか、金品供与の強要、身体的攻撃へと段階が進んで行った所ですが、昨今では学校内に記録装置などが整備されていますので、流石に、そう言った行為に協力する者は、今時、そうは居(お)りません。」

 そこで、塚元校長が口を挟む。

「みんなも知っている通り、教室や廊下とか、24時間、映像を記録しているから、校内で暴力行為や器物破損とかすれば、証拠が残りますからね。」

 因みに、記録されるのは映像のみで、普段の学校生活でのプライバシーを考慮し、音声は記録されない。学校側も、記録された映像については、これを簡単に見る事は出来ず、事件や問題が起きた場合に限り、教育委員会と警察によって、映像の内容が確認、調査される。これは、学校側による事実の隠蔽や改竄を防ぐための方策である。もしも、記録装置の整備不良等による記録の欠落や、記録の隠蔽、或いは改竄などが発覚すれば、学校側が厳しく責任を追及される事は言うまでも無い。映像の記録期間は一ヶ月で、事件や問題が起きなければ記録メディアは交換されず、古い映像から自動で消去されると言う仕組みである。これらは、教育機関内での犯罪的事象の発生抑制や摘発の為に、法的にも整備された、全国的な取り組みであり、これらの法的及び、機器的なシステムの整備が開始されて、既に三十数年が経過している。
 塚元校長の言葉受け、加納が説明を続けた。

「はい。勿論、死角になる場所も有りますので、記録装置が有るとは言っても、完璧ではありませんが。 茜さんと、ブリジットさんのケースでは、そう言う事に協力しそうな上級生などの生徒に予め釘を刺したり、映像記録装置の死角になる場所の監視強化などに、お二人の所属部活…剣道部とバスケ部の上級生や先生等(ら)の協力がありました。そんな訳で、学校内部ではクラス内での無視以上の行為に進展しなかったのですが、それに業を煮やしたと言いますか、首謀者側は学校外での襲撃を計画していました。」

 そこで、恵がポツリと言った。

「あの…中学生、ですよね?」

 加納は、ニッコリと笑って答える。

「はい、そうですよ。首謀者である女子生徒は、親からある程度、自由になるお金と、教育係と言うか、お世話係と言うか、そんな立場の大人が小学生の頃から付けられていた様なんですが、どうやら、その大人が碌(ろく)でもない者だったらしく。」

「あぁ…何となく、解りました。すみません、続けて下さい。」

 恵は、小さく頭を下げる。加納は、話を続ける。

「では、え~、探りを入れている中で、襲撃計画なる話が浮かび上がって来まして、夏を過ぎた頃でしたが。 我々も当初は半信半疑だったのですが、念の為お二人には警護を兼ねて監視を付ける事になりました。」

「二人?ブリジットも狙われてたんですか?」

 今度は茜が反応する。

「そうですよ。」

「だって、夏を過ぎた頃には、ブリジットは無視される対象から、外れてたのに。」

「ですが、茜さんへの無視に、ブリジットさんは参加してなかったでしょう?それが首謀者側は、気に入らなかったんですよ。」

 そして、ブリジットが言うのだった。

「実際、わたしは襲われたのよ、二回。まぁ、どっちも未遂で済んだけど。」

「え?」

 右隣に立つブリジットの方を見て、茜は言葉を失うのだった。ブリジットは、微笑んで言った。

「街に一人で出掛けた時にね、いきなり路地に引っ張り込まれて。逃げようと揉み合ってる所を、加納さん達に助けて貰った事が有るの。あなたには黙ってたけど、ゴメンね。」

 茜はブリジットを見つめたまま、声を出せずにいた。そして、加納が説明を続ける。

「あの時、わたしが現場に居たのは、まぁ、本当に偶然でしたが。監視役の警備保障会社の担当者が昔の同僚でしたので、連絡事項の伝達がてら会いに行ったら、ブリジットさんの最初の襲撃現場に出会(でくわ)してしまいまして。その後、二度目の襲撃を許してしまったのは、救出が出来たとは言え、警備の態勢を整える側としましては、誠に不手際だったと言わざるを得ません。ブリジットさんには改めて、お詫び申し上げます。」

 そう言って、加納はブリジットに対し、深々と頭を下げるのだった。

「あぁ、いえ。助けていただいたのに。それに、悪いのは相手の方ですから。」

 加納に向かって恐縮して言葉を返すブリジットだったが、その横で、理事長室に入ってきた時の事を思い出して、茜はブリジットに言うのだった。

「あぁ、それじゃ、さっき、加納さんと面識があったって…。」

「そう、助けて貰った時。その時、会社の方(ほう)での調査だとか、警護だとか、事情を聞いたの。茜は、その時はその事態の真っ只中だったから、余計な心配をさせたくなくて、みんな、黙ってたのよ。」

 そして、頭を上げた加納が言う。

「はい。茜さんは一方の当事者ではありましたが、事態の首謀者の心情が相当に捻れている事が予想されましたので、茜さんに事情をお話しした所で、当事者間での解決は無理だったでしょう。であれば、この場合、お知らせしない方が得策と、勝手ながら、こちらで判断致しました。ご容赦下さい。」

 加納は、再び、頭を下げる。

「あ、いえ。大丈夫ですよ、今なら理解出来ますから。加納さんが、謝る事じゃ…。」

「あの、ちょっと良いですか?」

 茜が言い終わらない内に、肩の高さほどに左手を挙げ、直美が声を上げる。加納は頭を上げると、それに応えた。

「はい、何でしょう?」

「色々と物騒なお話だったわけですけど、そういう事態であれば、警察に届け出る案件だったのでは無いかと。」

「警察は、基本的に事件が起きないと動いてくれません。公(おおやけ)の捜査機関でもない民間の情報調査部門が掴んだ、証拠能力の怪しい情報だけでは、犯罪者でもない者を事件が起きる前に逮捕は出来ません。だからといって、事件が起きるのを待つわけにも参りませんので。事件が起きるという事は、被害者が出る、と言う事ですから。 警備保障、特に警護と言うのは、警察のように発生した事件を解決するのではなく、事件を未然に防ぐのが目的になりますので、茜さんとブリジットさんのケースについても、そのように実施されました。因みに、三年間で、茜さんについては十件、ブリジットさんについては先の二件の後、三件の襲撃計画の実行を阻止しております。」

「天野は、それ、知らなかったんだ。」

 直美が、茜の方を向いて尋ねる。

「はい、全然。ブリジットは知ってたのね?」

「いや、後の三件ってのは、今、初めて聞いた。」

 ブリジットは、苦笑いである。そして、恵が呆れたように、所感を口にするのだった。

「しかし、『イジメ』の延長で、そこまでやるって言うのも…。」

「いえ、先方の動機は『イジメ』の延長だけではありません。先程も言いましたが、首謀者の側に付いていた碌でもない大人、その者が茜さんを事件に巻き込んで、それをネタに天野重工を強請(ゆす)ろうとしていたのですよ。時間を置いて、繰り返し襲撃を画策していたのは、時間が経って警護が外れるのを待っていた、と言う面もあるのです。」

「あぁ、成る程、そう言う事ですか。」

「あれ?でも、わたしを襲っても、天野重工には関係有りませんよね?」

 恵が納得する一方で、ブリジットが疑問を口にした。

「ブリジットさんのケースは、基本的に首謀者である女子生徒の腹癒(はらいせ)による物と思われますが、ブリジットさんへの襲撃が成功すれば、茜さんに心理的にダメージを負わせられますし、襲撃の予告としても使えます。『次はお前だ、友達みたいな目に遭いたく無かったら金を用意しろ』のような脅迫も出来ますから。」

「ホントに、碌でもないですね。」

 茜は、心底うんざりしたと言う表情で、そう言うのみだった。

「あ、もう一つ。良いですか?」

 再び、直美が手を挙げて、加納に質問する。

「はい、どうぞ。」

「クラス内での無視が一年間続いたと、これは以前、ブリジットから聞いていたんですけど。学校の方も事態を把握していたようなのに、状態が改善されなかったのは何故なんでしょう?」

「あ、それはですね。冬頃になって、警備保障側の調査で判明したのですが、クラスの担任教師が首謀者側に協力してたんですね。」

 事も無げに答える加納の言葉を聞いた一同は、徒、唖然とするしかなかった。そして加納は説明を続ける。

「首謀者の女子生徒は入学早々に、その担任教師の弱みを握ったらしく。元々は、自分の成績を改竄(かいざん)させるのに利用する腹積もりだったようですが、そのような事態に至って、『イジメ』の扇動にも担任教師を利用していたようです。徒、何分、その情報を掴むのが遅かったので、年度末も近かった事もあり、学校側はとしては直ぐに担任の交代、とは行かなかったと言う事情が有りまして。そしてもう一つ、首謀者の女子生徒が茜さんに執着している内は、他の生徒が標的にならないで済むと言う事も、学校側は考慮してました。」

「天野さんを人身御供(スケープゴート)に、と?」

 そこまで黙って話を聞いていた緒美が、加納に、睨み付けるような視線を送り、言った。しかし、加納は平然と答える。

「はい。既に学校内では茜さんに、おいそれと手出しが出来ない状況でしたし、学校外では天野重工(わたしたち)が手配した警護が付いておりました。クラス内の状況は正常ではないにしても常態化して居た様子でしたので、茜さんには、一年生の年度末まで耐えていただこう、と言う事になりました。茜さんには、この事も、重ねてお詫びしなければなりません。」

 もう一度、頭を下げようとした加納を、茜は押し止め、言うのだった。


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