WebLog for HDG

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ bLOG です。

Poser 用 3D データ製品「PROJECT HDG」に関するまとめ WebLog です。

STORY of HDG(第8話.04)

第8話・城ノ内 樹里(ジョウノウチ ジュリ)

**** 8-04 ****


 緒美達三人が天野重工の天幕へと到着すると、茜とブリジットがインナー・スーツを着用し終え、立花先生と共に学校のマイクロバスから降りて来た。茜達三人は天野重工の天幕へ真っ直ぐに向かい、近づいてくる三人の姿を認めた緒美が先に声を掛ける。

「ご苦労様、準備はいい?」

「今の状況は?」

 立花先生が緒美の傍(そば)まで歩み寄って聞いた。

「LMF の方は Ruby が制御を起動中です。起動次第、自律制御でトランスポーターから降りて貰います。」

「あ、わたしは乗らなくても?」

 少し離れて、緒美と立花先生のやりとりを聞いていたブリジットが声を上げる。

「ええ、うっかり転倒でもしたら、危ないから。LMF が地面へ降りたら、操作をお願いね。」

「はい、分かりました。」

 ブリジットの返事を聞いて、緒美は制服のポケットから携帯端末を取り出し、直美へとコールを送る。

「あ、鬼塚です。そちらの様子はどう?…わかった、天野さんを向かわせるわ。」

 通話を終えて携帯端末をポケットにしまうと、緒美は茜に向かって言った。

「HDG の方も起動準備できてるそうだから、天野さんは、HDG の装着とスラスター・ユニットの起動までやっててちょうだい。直(じき)に試験場のセッティングも終わると思うから。」

「はい。」

 そう短く返事をすると、茜はブリジットに小さく手を振って、天幕の前に駐められているトランスポーター、一号車の後部へと向かって歩き出した。そうこうする内、一号車の後方に駐車されている二号車の荷台上から、LMF のメイン・エンジンが起動する音が聞こえて来る。
 その音に気がついたのか、天幕の前を横切って二号車の方へ向かおうとする畑中を、緒美は呼び止めた。

「畑中先輩、LMF の係留は全部外されてますよね?」

「あぁ、大丈夫、終わってるよ。」

「LMF をトランスポーターから降ろしますから、二号車周囲の人払いをお願いします。」

「あいよ、ちょっと確認してくるから、待機させてて。」

 畑中は天幕の側からは見えない、トランスポーターの左側を目視で確認するために、一号車の先頭方向へと駆けて行った。
 それと入れ違いに、安藤が天幕の下へと試験場方向から戻ってくる。

「緒美ちゃん、現場のターゲットとセンサー設置、ほぼ終わったそうよ。今、データ取得の最終確認やってる。終わったら連絡が来るから。」

「あ、はい。 城ノ内さん、Ruby のモニター回線、繋がったかしら?」

「はい、Ruby の音声をスピーカーに繋げますね。部長は、これを。」

 樹里はデバッグ用コンソールの前に立って状態を確認していたが、コンソールのスピーカーへの切り替え操作をして、緒美にコマンド用ヘッド・セットを渡した。程なく、Ruby の合成音声が聞こえてきた。

「LMF 起動確認。メイン・エンジン、スロットルの現在ポジションはアイドル。自律行動、開始の承認を待ちます。」

「了解。今、あなたの周囲の安全を確認中だから、そのまま、待機してて。」

 ヘッド・セットのマイクに向かって緒美が Ruby に語りかける。

「ハイ。待機します。」

 Ruby から返事があるのとほぼ同時に、畑中が一号車の影から手を振って、声を上げる。

「おーい、鬼塚君。二号車南側の安全を確認。LMF 動かしていいよ~。」

「ありがとうございま~す。」

 緒美はヘッド・セットのマイク部を親指と人差し指で抓んで押し下げ、畑中に返事をすると、次いでマイク部を口元に戻して Ruby への指示を出す。

「いいわよ、Ruby。安全を確認、自律行動開始承認。中間モードへ移行して、トランスポーターから降りてちょうだい。」

 すると透かさず、Ruby から緒美の指示に対する質問が、樹里が向かっているコンソールから聞こえる。

「トランスポーターの右側と左側、どちら側に降りますか?」

「そうね。南側、あなたの左側の方が広いから、そっちへ降りてちょうだい。トランスポーターから降りたら、今と同じ向きで待機してね。トランスポーターを移動して貰うから。」

「ハイ、分かりました。では、自律行動開始します。」

 LMF は機体下部に装備する一対のホバー・ユニットが起動すると、ユニットの作動音と吸気音が大きくなると共に、機体は荷台上でわずかに浮上した。トランスポーターの周囲では、荷台床面に吹き付けられた空気が地面へと滑り落ち、土煙が舞い上がる。
 LMF は荷台上で浮上すると、機体各所に設けられたバーニア・ノズルから圧縮空気を噴射して機首の方向を左側へ向け、トランスポーターに対して直角に機軸が向いた所で旋回を止める。そして、ホバー・ユニットの左右間隔(トラック)を広げると、ホバー・ユニットの出力を絞って荷台上へと降りた。次いで、トランスポーターの荷台上でホバー・ユニットの連結機構を展開し、機体上部を持ち上げるのだった。
 LMF のホバー・ユニットは、折り畳まれた連結機構を展開すると、それは地上での鳥の脚部のような構造となる。それと同時に、LMF 機体側部上面に装備された、一対のアーム・ブロックが展開される。この一対の腕部は、エイリアン・ドローンとの超接近戦のための格闘用マニピュレータで、組み付こうとする相手を振り払ったり、反撃を行う事を想定しての装備である。これは、現用の浮上戦車(ホバー・タンク)には無い LMF 特有の機構ではあるのだが、LMF 自体に実戦経験の無い現時点に於いて、その有効性は未知数だった。
 こうして機体モードを『中間モード』に移行した後、Ruby は LMF を操ってトランスポーターの荷台上から、左脚に当たるホバー・ユニットを前方の地面へと降ろした。ホバー・ユニット本体は機体全長の半分ほどの長さがあるので、LMF の一歩では踵(かかと)に当たるホバー・ユニット後端まで一気に地面に降ろす事は出来ない。そのため、爪先立ちのような姿勢で左側のホバー・ユニットを地面に降ろした後、左側ホバー・ユニットと同様に爪先立ちのように右側ホバー・ユニットを地面に降ろし、一対のマニュピレータを動作させて器用にバランスを取りながら、二歩進んで踵部を地面に降ろしたのだった。LMF はその位置で足踏みを繰り返すように元の西向きへと機体の向きを戻して、アーム・ブロックとホバー・ユニットの連結機構を折り畳み、通常形態である高機動モードへと戻った。因みに、左右のホバー・ユニットは、左右幅を広げたワイド・トラック・モードのままである。
 そんな、LMF が自力でトランスポーターから地上へと降りる一連の動作を見ての、どよめくような雰囲気が、少し離れた迷彩柄天幕下から伝わってくるが、その辺りは白い天幕の下にいる一同とは、当然の温度差がある。

「畑中先輩、二号車の移動、お願いします。」

 緒美が声を掛けると、畑中は手を挙げて答え、トランスポーター二号車の運転席へと上がっていった。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。

 

STORY of HDG(第8話.03)

第8話・城ノ内 樹里(ジョウノウチ ジュリ)

**** 8-03 ****


 一方、トランスポーターに積載されている LMF の方へと向かった樹里は、持参していた愛用のモバイル・パソコンを LMF のコンソールへと接続しようとしていた。因みに、樹里の愛機は、立花先生が普段使用している物より、一回り小さいタイプのモバイル・パソコンである。
 LMF には既に電源車からのケーブルが接続されており、電気の供給が可能な状態となっていた。
 機体後方のメイン・エンジン下部のスペースから機首方向を眺めると、LMF の機体中心部には直立するように円筒状の構造があり、砲塔部はその上部に装備されている。操作用コンソールは、その円筒構造部下部後方側に設けられている分厚いメンテナンス用ハッチの中に用意されていた。
 直美達は外部電源ケーブルの接続確認を終えて、メンテナンス・ハッチの前で樹里の作業を眺めていた。
 樹里はトランスポーター荷台の床面に置かれたモバイル・パソコンの前にしゃがみ込んでモバイル・パソコンの起動状態を確認し終えると、モニター用通信ケーブルをモバイル・パソコンと LMF のコンソールの双方に接続し、LMF の外部電源受電ブレーカーのトグルスイッチに手を掛けた。

「じゃ、LMF に外部電源、投入しま~す。」

「はい、やってちょうだい。」

 樹里の宣言に、そこに居た四名の内、もっとも後列から直美が答えた。
 樹里が受電ブレーカーの少し硬いスイッチを押し上げると、スイッチ傍(そば)の受電パイロットランプが白く点灯した。続いて、LMF の制御系、つまり Ruby の起動スイッチを押すと、起動状態を表示する LED が先ず緑色に点灯し、暫くして赤色の点滅に変わる。樹里は膝先のモバイル・パソコンに視線を移し、Ruby との通信アプリケーションの状態モニター画面を開くと、起動情報がスクロールして行くのを確認した。

「はい、Ruby がスリープ状態から再起動中です。システムの自己チェックに五分くらい掛かりますけど~今のところ、異常は無さそうですね。」

「オッケー、じゃぁ、もう暫く Ruby 待ちね。」

 腰を屈(かが)めて、瑠菜を間に挟んで樹里の背後からパソコンのモニターを覗き込んでいた直美は、少し身を引いてそう言った。メイン・エンジン下のスペースは、人が立ったままでは入る事が出来ない高さなので、頭をぶつけないようにと、直美は右手を頭上に挙げて頭上の機体下面を右手で触れている。

「所でさ、樹里。カルテッリエリと佳奈、あの二人を組ませちゃって、平気?」

 樹里の背後から様子を見ていた瑠菜が、中腰の姿勢のまま、樹里に話し掛ける。

「大丈夫、大丈夫。カルテッリエリさんの方がナーバスになってたぐらいだから。佳奈ちゃんは、そんな事、気にしないし、安藤さんも一緒なんだし、ね。」

「そうかな~?天野の時みたいに、変に突っ掛かってたりしてなきゃいいけど…。」

 心配げな瑠菜の左肩を叩いて、左隣に居た恵が言う。

「平気よ。あれでも、カルテッリエリさんは相手を選んでやってるもの。天野さんはあの手の挑発には乗らないから、最近じゃ、相手にしてるのは専らボードレールさんの方だしね~。古寺さんも、あの手の挑発には『我関せず』のマイペースな人だし、そう言う相手に、無駄に突っ掛かっては行かないわよ。」

「…なら、いいんですけど。」

「あはは、森村が言うんだから、間違いない。」

「何、部長みたいな事言ってるんですか、新島先輩。」

 そう言って、樹里は笑うのだった。

「さて、それじゃ、わたしは HDG の方、リグに電源が繋がったか見てきます。」

「あ、わたしも行く。森村、こっちはお願いね。」

「は~い。」

 瑠菜と直美は LMF が積載された荷台後部に降ろされた、跳ね上げ式のスロープを伝って地上に降りると、HDG がメンテナンス・リグごと積み込まれたトランスポーター一号車へと向かった。それと入れ替わるように、緒美が LMF が積載されている二号車の荷台へと上がってくる。
 真っ先に緒美に気がついた恵が、振り向いて声を掛けた。

「あ、緒美ちゃん。ご苦労様~、早かったね。」

「まぁ、顔見せだけだったから。飯田部長はまだ、あちらのお相手してるけど、こっちは試験の準備があるからって、先生と一緒に早々に退散してきたの。」

「飯田部長が言ってた、先方の反応って、どうだったの?」

「あはは、なんだか説明しづらい、複雑な表情だったわね。大人のあんな表情見たのは、初めてかも。」

 真顔の緒美の説明を聞いて、くすくすと笑う恵と樹里だった。

「で、こっちの状況はどう?城ノ内さん。」

「今、Ruby の起動自己チェック中です。もうそろそろ、終わるはずです。」

 それから間もなく、樹里のパソコン・モニター上でチェック画面のスクロールが止まり、数秒の後、LMF のメンテナンス・コンソール部のスピーカーから Ruby の合成音が聞こえた。

「おはようございます。天野重工製GPAI-012(ゼロ・トゥエルブ)プロトタイプ、Ruby です。只今、コンソール限定モードでスリープ・モードから復帰しました。コンソールに接続しているのは樹里ですか?」

「そうよ、おはよう Ruby。部長と恵先輩も一緒にいるよ。」

「そうですか。学校の格納庫と違って、外部センサーからの情報が無いので、周囲の状況が何も分かりません。現在時刻を内蔵時計(インターナル・クロック)で確認しました。予定通りなら現在位置は試験場ですね。」

「うん、そう。それで、LMF をトランスポーターから降ろしたいの、直(ただ)ちにフル・モードに移行して LMF を起動してちょうだい。」

 樹里の背後から身を屈めて、緒美が Ruby に指示を出す。

「トランスポーターから降りるのは、ブリジットの操縦で行いますか?」

 Ruby の質問に対し、緒美は少し考えてから、答えた。

「トランスポーターから降りる時に、転倒でもしたら危険かもね。いいわ、あなたの自律制御でやりましょうか。荷台からホバーで降りるのは不安定になりそうだから、中間モードで歩いて降りてちょうだい。」

「分かりました。コンソール限定モードからフル・モードへ移行、LMF の制御を開始します。LMF 制御電源確保のため APU をスタートします。LMF 機体周辺で作業中の方は、退避して下さい。」

 緒美の指示を受け、即座に Ruby は指示を実行に移す。樹里はモニター・アプリの終了操作を行ってから、コンソールから通信ケーブルを引き抜き、Ruby に言った。

「じゃぁ、わたし達はここから離れるわね。LMF の制御が確立したらいつものチャンネルに接続して、そっちであなたの状態をモニターしてるから。」

「ハイ。所で、樹里。今日、麻里はここに来ていますか?」

 立ち去ろうとする間際、Ruby がそう樹里に問い掛けるのだった。

「残念だけど、今日は来られないそうよ。代わりに、安藤さんが来てるの。モニターと接続が確立したら、お話しできるわよ。」

「分かりました。LMF の起動作業を続行します。」

 樹里と恵、そして緒美の三人は、メンテナンス・ハッチを閉じてロックを確認してからトランスポーター荷台後部のスロープを降りると、モニタリング用コンソールが設置されている天野重工の天幕へと向かった。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。

 

STORY of HDG(第8話.02)

第8話・城ノ内 樹里(ジョウノウチ ジュリ)

**** 8-02 ****


「みんな、久し振りね~あ、一年生の三人とは初めまして、だね。本社開発部設計三課、Ruby 開発チームの安藤です。」

「今日は、井上主任はいらっしゃらないんですか?」

 安藤とは一番顔馴染みである樹里が、まず、話し掛ける。

「うん。主任も直前まで来るつもりだったんだけどね~ほら、今日は維月ちゃんのお誕生日だし。でも、急に外せない会議が入っちゃって。 あれ?今日は維月ちゃんは来てないんだ。」

「会議って、今日、土曜日ですよ。普通、会社は休みの日じゃ…。」

 瑠菜がそこまで言ったのを、遮(さえぎ)るように苦笑いしながら安藤が答える。

「平日忙しい人が複数集まろうとするとね、休日潰すしかスケジュールの取りようが無い事って、良くあるのよ。 あ、主任から維月ちゃんへ誕生日プレゼント預かってるから、あとで渡しといて貰えるかな、樹里ちゃん。」

「いいですよ。今日、運用試験の打ち上げと称して、維月ちゃんと部長の誕生日パーティーを密かに画策してますから。」

「え、緒美ちゃんも今日、誕生日なの?」

「いいえ。半月遅れなんですけどね。部長の誕生日って中間試験期間の真っ只中なので。」

「いいな~楽しそう~。」

「安藤さんも参加されます?兵器開発部(うち)的には大歓迎ですけど。」

「あはは、生憎、ここの撤収作業をやったら、そのまま会社へ蜻蛉(とんぼ)返りのスケジュールなのよ。残念。 さて、じゃぁ、そろそろ準備に掛かりましょうか。現場の方(ほう)、ターゲットとかの設置確認にあと三十分ぐらい掛かるから、その間にみんなには HDG と LMF のセットアップをお願いしたいの。トランスポーターから機材を降ろす作業は危ないから、社の人間に任せて、あなた達は手を出さないようにね。樹里ちゃんには計測機材のセットアップを手伝って貰いたいのと、あと誰か二人、新しい観測機材の取り扱いを聞いておいて欲しいのよ。そうね、ソフト担当一人とメカ担当一人ずつがいいかな。」

「と言う事は、一人はカルテッリエリさんで決まりだけど、メカの方は誰にします?新島先輩。」

 樹里は、人選について直美に意見を求める。

「そうだね~瑠菜か古寺か、クラウディアと組ませるとしたらどっちが良いと思う?城ノ内は。」

「だったら、佳奈ちゃん。」

 微笑んで樹里は即答した。

「よし。じゃぁ、古寺とクラウディアは新装備のレクチャーを受けてきて。天野とブリジットはインナー・スーツに着替えて、森村と瑠菜は、わたしと LMF の起動準備に掛かりましょう。」

「あの、すいません。インナー・スーツに着替える前にトイレに行っておきたいんですけど。」

 直美の指示を受け、茜が安藤に尋ねる。

「あぁ、トイレはあそこの管理棟のを借りられるから。正面の入り口から入って右側の突き当たり、行けば分かると思うわ。」

「はい、分かりました。ちょっと、行ってきます。」

「あ、わたしも。」

 管理棟の方へ早足で歩き出した茜を追って、ブリジットも駆け出す。その一方で、直美達は LMF を載せたトランスポーターへと向かって歩き出し、丁度、運転席から降りて来た中畑に向かって、直美が声を掛けるのだった。

「畑中先輩、LMF 起動掛けますので、電源お願いします。」

「おう、電源車、これから起動するから、ちょっと待ってて。」

 畑中が、天幕の前に駐めてある電源車の方へ向かうと、直美は振り向いて樹里に言った。

Ruby 起こすの、確認して貰えるかな、城ノ内~。」

「あ、はいはい、やりま~す。 あ、先に Ruby、スリープ・モードから復帰掛けて来ますから。佳奈ちゃんとカルテッリエリさんの方、お願いしますね、安藤さん。」

「了解。」

「あ、城ノ内先輩。」

 直美に呼ばれてその場を離れる樹里だったが、その後を追いかけて来たクラウディアが、樹里を呼び止める。振り向いた樹里に、クラウディアは背伸びをするような姿勢で、小声で語りかけるのだった。

「わたし、古寺先輩、苦手です。」

 珍しく不安げな表情をするクラウディアに、樹里は微笑んで言った。

「大丈夫よ、佳奈ちゃんは、ちょっとずれた所はあるけど、少し、無邪気(イノセント)が過ぎるだけだから、慣れてちょうだい。」

 その時、安藤と共に新型観測機の方へと歩き出した佳奈が、クラウディアに呼び掛ける声が聞こえた。

「クラリ~ン、おいで~。レクチャー受けに行くよ~。」

 げんなりとした表情でクラウディアが言う。

「ほら、あの調子にはついて行けそうにありません。」

「あはは、まぁ、頑張って、クラリン。」

「城ノ内先輩まで、クラリンって呼ばないでください!」

 樹里に背を向けて、安藤と佳奈の方向へ歩き出したクラウディアの背中を、樹里は軽く叩いて送り出す。その時、再び、佳奈がクラウディアを呼んだ。

「早くおいで~、ク~ラリン。」

「クラリン、呼ばないでください!」

 語気を強めてクラウディアが抗議するのだが、佳奈は意に介さない。

「えぇ~いいじゃない~。」

「良くありません。」

「あははは、流石の危険人物も、佳奈ちゃんには敵わない様子ね~。」

 二人のやりとりを聞いていた安藤は、笑ってそう言うのだった。

「なんですか?危険人物って。」

「維月ちゃんから、聞いてるわよ。色々と武勇伝があるって話。」

「武勇伝って、日本(こっち)に来てからは、未だ、大したことはしてませんよ。」

「そりゃ、大したことされちゃったら、会社が困るから~。」

 安藤はそう言って明るく笑うと、クラウディアの肩を軽く叩いた。

 

- to be continued …-

 

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STORY of HDG(第8話.01)

第8話・城ノ内 樹里(ジョウノウチ ジュリ)

**** 8-01 ****


 2072年7月2日、土曜日。この日は、防衛軍の演習場を借用しての、HDG-A01 と LMF による火力運用試験が実施される日である。
 出力は抑えて実施するとは言え、荷電粒子砲の実射等の危険な項目が予定に組まれているため、天野重工本社から少なくないスタッフが派遣される大がかりな試験であり、防衛軍からも関係者が視察に訪れる予定だ、と、緒美ら天神ヶ﨑高校『兵器開発部』の部員一同は聞かされていた。
 試験を行う陸上防衛軍の演習場は、天神ヶ﨑高校からだと自動車で一時間半ほどの、学校が所在するのとは別の山腹の、なだらかな斜面に造成されており、普段は近辺に展開する陸上防衛軍部隊が射撃訓練を行っていた。
 HDG-A01 と LMF 及び関連機材は、本社が手配したトランスポーターに前日の内に積載済みであり、午前中に試験場へと移動していた。一方、兵器開発部の部員一同は、学校所有のマイクロバスにて午前中の授業を終えてから、午後十二時半頃に学校を出発した。因みに、彼女たちの昼食は、立花先生が手配した弁当を移動中の車内で、と言う段取りになっていた。

 天神ヶ﨑高校『兵器開発部』一行のマイクロバスが演習場のゲートを通過し、現場へと到着したのは、午後二時少し前だった。
 演習場には北端側管理棟の前に天幕が二箇所に分けられ、合計四張り設営されていた。東側二張りの白い天幕には天野重工の社名が入っており、それらと少し離れて設営されている西側二張りの天幕は迷彩柄で、これらが防衛軍のものである事は一目瞭然だった。
 天野重工の天幕の南側には、午前中に学校を出発していた二台のトランスポーター既に到着していた。HDG を積載した特製コンテナ式の一号車が天幕の前に、その後ろに開放式荷台の二号車が駐められている。二号車の荷台には LMF が積載されているのだが、移動前に機体に被せてあったシートは既に外されていた。
 天神ヶ崎高校のマイクロバスが白い天幕の北側に停車すると、強い日差しの中、立花先生を先頭に白い夏制服の部員一同が降りてくる。彼女たちはそれぞれが身分証となる入場証を、首から提(さ)げている。
 白い天幕の周囲では作業服姿の天野重工のスタッフが準備のために行き交っているが、唯一、白シャツにネクタイと言う出で立ちの男性が『兵器開発部』一行がバスから降りてくるのを認めて、声を掛けてきた。

「おぉ、ご苦労さん。いい天気になって、良かったね。」

「何やってるんですか、こんな所で!飯田部長。」

 突然声を掛けてきた飯田部長に驚き、挨拶も忘れて声を上げる立花先生であった。

「何やってる、とはご挨拶だねぇ。」

 飯田部長は、大きな声で笑った。

「すみません。飯田部長がいらっしゃってるとは思ってなかったもので。」

「あはは、社長を始め開発部や試作部の部長連中も来たがってたんだが、結局、都合がついたのがわたしだけだったのさ。まぁ、わたしは防衛軍(あっち)側の対応をしなきゃならないって都合なんだが。」

 そう言って、飯田部長は親指で迷彩柄の天幕の方を指した。
 そんな飯田部長と立花先生とのやりとりを少し離れた場所で聞きながら、ブリジットは前に立っていた直美の耳元に顔を寄せ、小さな声で聞いた。

「…どなたです?」

「飯田部長、事業統括部の。」

「事業統括部?」

「簡単に言えば、社長の次の次の次位に偉い人。」

「なるほど。」

 直美の説明は、会社の組織構成を未だ把握していないブリジットには、非常に分かり易かった。そんな具合にひそひそ話をしていたブリジットに向かって、飯田部長が声を掛ける。

「キミが、今日、LMF のドライブを担当してくれる、ボードレール君だね。」

「あ、はいっ。」

 ブリジットは少し背筋を伸ばすように、飯田部長に返事をする。その様子に、ブリジットの右隣にいた茜が、くすっと笑った。

「それから、キミが HDG 担当の天野君、会長のお孫さん。」

 今度は、茜に飯田部長が声を掛けるので、茜は静かに会釈をする。

「うん。事故とか起きないよう、呉呉(くれぐれ)も気をつけて。宜しく頼むよ。」

「はいっ。」

 茜がはっきりとした調子で返事をすると、飯田部長はにこりと笑うのだった。そして、その表情のまま言った。

「さて、じゃ、立花君。それから鬼塚君も、取り敢えず、防衛軍関係者の方(ほう)へ挨拶に行っとこうか。」

「わたしは兎も角、鬼塚さんはいいんじゃないでしょうか?」

 怪訝な顔つきで、立花先生はそう意見するのだが、飯田部長は意に介さない様子で言った。

「大丈夫、大丈夫。今日来てるのは HDG 推進派って言うか、こっちの理解者ばかりだから。まぁ、話はわたしがするから、君達はニッコリ笑って『宜しくお願いします』ってだけ、言っておけばいいよ。それよりも、鬼塚君に会って連中がどんな顔するか、それが見物だと思うよ。まぁ、何にせよ、あっちの関係者ともここらで一度顔合わせはしといた方がいいと思うから。」

「分かりました。そう言う事でしたら。」

 緒美は一歩進み出て、微笑んでそう、飯田部長に答える。

「あはは、相変わらず、鬼塚君は度胸が有って、いいね。」

 そう言って上機嫌そうに笑うと、飯田部長は振り向いて、天幕の下で作業中の女性社員を呼ぶのだった。

「おーい、安藤君。」

 立花先生よりも少し年下風のその女性社員は、「はい」と返事をすると、少し間を置いて作業を中断し、小走りで飯田部長の方へと向かってくる。

「現場の音頭取りは、彼女に任せてあるから。細かい事は彼女の指示に従ってね。じゃ、立花君、鬼塚君、行こうか。」

 飯田部長は防衛軍の天幕の方へ歩き出すと、入れ違うように部員一同の前へとやってきた安藤に「あとは宜しく」と声を掛け、そのまま立花先生と緒美を伴ってその場を離れていった。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。

 

HDG ストーリー内の記述変更

HDG のストーリーにて、登場する企業名に「三ッ星」と言う名称を設定していたのですが。元々は実在する某日本企業の名称の捩りだったのですが~字面から「サムスン三星)」と関連づけられると嫌なので、「三ッ星」から「三ツ橋」へと変更する事にしました。

 こちらの既掲載分と Pixiv の掲載分のストーリー文面について、該当する記述は変更済みです。
 今後も設定の変更や記述の最適化等のために、掲載済みのストーリー文面を誤字脱字の修正以外についても、修正・改編する場合がありますのでご了承下さい。

HDG-Brigitte改造・170915

「ITBRT9-03 for Poser」の作業を後回しにして、忘れない内に、と、「HDG-Akane」の Ver.3 仕様をモーフフィギュアへ展開する実験をやってました。
 そんなわけで、「HDG-Brigitte」への移植作業の結果がこちら。
 

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 Ver.3 版のヘッド・オブジェクトに、Ver.2 仕様の Brigitte のヘッド・モーフを移植して、眼窩周辺のポリゴン・メッシュを再編集・整理しました。
 Ver.2 から Ver.3 への移植は、作業的には結構面倒臭いですが、まぁ、出来ない作業ではない事を確認。雑用の合間合間に作業を進めていた都合もあって、結果、二週間ほど掛かりました。
 所が、出来上がったモーフ・データを、中間作業用に作ってあったデータと一緒に、うっかり消してしまった事に翌日気がつき。
 元データは目を閉じた状態で、目を開くのをモーフでやっている仕様なのですが(逆だと、目を閉じた時に瞼の UV が延び延びになるのが嫌なので)、保存されていたのは目を開けた状態の最終形状(しかも、瞼の開度80%)だったので、そこからベースとなる目を閉じたモーフと、そこから目を開くモーフ(瞼の開度100%)の復元をやるハメになりました。
 幸い、一度やった作業を直ぐにやり直したので作業勘が残っていた事と、最終形状が一部でも残っていたので、復元作業は一週間足らずで完了したわけですが。中間作業データの管理は、ホント、細心の注意が必要というのが今回の教訓。
 そんな感じで、正面からのサンプル画像がこちら。
 

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 それと、瞳縮小モーフの適用(ビックリ顔)のサンプル画像。
 

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 取り敢えず、Ver.2 用のモーフキャラを Ver.3 へ移植できることが確認出来たので、そっちの作業はまた、ぼちぼちと進めていく事として、「ITBRT9-03」の作業を始めますかね~。

HDG-Akane改造・170822

思う所あって、「FF02」こと、「HDG-Akane」フィギュアを弄ってました。一週間ぐらいのお試し感覚で始めたのが、結局三週間。
 先ず、現行バージョン(Ver.2)のサンプル画像。
 

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 瞳のハイライトが、左右で違っているのが分かると思いますが~コレは眼球モデルの構造のせいで、普通にライティングするとこのようになります。
 現行バージョンの眼球モデルは、顔表面の曲率に合うように眼球全体の大きさを決めているせいで、現実にはあり得ない巨大な眼球となっています。頭部中央で左右の眼球が交差するぐらい。
 これはマンガ的なデフォルメを優先した上で、顔面、左右の目の間をなるべくフラットにしたいというデザイン的な要望からこのような構造になったのですが、眼球自体が巨大であるので正面から見た眼球の頂点部が目の中央に位置していません。そのため、瞳(黒目)部分が眼球の頂点になる場所から顔の外側へオフセットするようにモデリングしました。瞳が眼球の頂点部になくても、レンダリング結果に特に違和感は無かったので、このような形状を選択したのですが、只、瞳のハイライトだけは思い通りに入ってくれず、これがストレスでした。
 右目用と左目用に別々にハイライト用のライトを用意したりしていたんですが~瞳の位置が眼球の頂点部からオフセットしているので、第一にハイライトが出る位置が読み辛い。それを右目と左目で同じ様な位置にハイライトを入れようとすると、ライトの位置調整と光量調整が非常に煩雑になり、余計に画作りに時間が掛かっていました。
 そこで、瞳が眼球の頂点部にある(常識的な)形状なら、左右で綺麗にハイライトが入るかな?という実証試験として今回の作業が始まったわけです。
 ハイライトの検証自体は、まぁ、予想通り。矢張り、眼球の頂点部に瞳があれば、ハイライトの位置は予想しやすいし、左右でほぼ揃いました。
 問題は、眼球の構造が変わる事によって顔の方が変わってしまう事。元々、顔の曲率に合わせて眼球の大きさを決めていたのを、今度は眼球の大きさを基準に顔の目元の凹凸を編集しなければならず、特に眼球に合わせると目元が大きく窪む事が、当初の「目の間の顔面をなるべくフラットに」というデザインの指針と相反するのでした。
 最終的に眼球は作り直した物を二度ほどサイズを調整し直し、顔の方も眼窩周辺のポリゴンと目の開閉モーフと共に五回ほど調整を繰り返し、なんとか印象の変わらないと思われる程度でフィニッシュした積もりです。
 で、改造版のサンプル画像はこんな感じ。
 

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 眼球が小さくなっているので、目頭の形状処理がマンガ的に省略された解釈から、よりリアル寄りになりましたが、コレはこうしないと 3D 的には収まりが付きませんでした。眼球は小さくなっていますが、瞳の大きさは元とほぼ同じになっています。
 マンガ的な目の表現を追求するなら、眼球を球状にするのをあきらめるか、頭部自体をもっと極端にデフォルメする必要がありそうですね。「マンガとリアルの中間」と言うのが私の志向する方向なので、私の目指す方向とは合いませんが。
 
 正面からのサンプル画像はこんな感じ。
 

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 眼球の構造の都合で、ちょっと寄り目気味になりました。
 瞳が目の中央になるように眼球を外側に動かすと眼球が顔の側面からはみ出るので~顔の幅を変えるか、眼球を更に小さくする必要があるのですが。どちらにせよ、目頭部分が更に落ち込む事になるので、それだけで顔の印象が変わっちゃうんですよね。顔の幅が変われば、もっと印象が変わる事になりますが。
 
 そして、今回、新規に追加したのが瞳の縮小モーフ、と言う事でサンプル画像。
 

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 サンプル画像ので、瞳の縮小が 0.5 設定ですので、更に小さく出来ますが。
 これは驚いた表情とかに利用できるかな、と思って追加したモーフなのですが、キャラによって瞳の大きさを変えたい場合にも利用できそうです。
 
 
 最後に、Toon 版ではなく、標準マテリアル版のサンプル画像。
 

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 こんな感じで、標準マテリアル(SSS適用)でも一応使用出来るようにはなっています。
 
 因みに、サンプル画像はすべてサブデビ(Subdivision Levels:1)有効にて、レンダリングしてあります。
 
 この改造版を正式に Ver.3 扱いにするかどうかは、幾つかサンプル作品を作ってから決めたいかな、と。
 コレを Ver.3 としたら、モーフ・キャラズ(Omi とか Brigitte とか)も再編集しないといけないしなぁ。あぁ、やる事が一杯(笑)
  

STORY of HDG(第7話)Pixiv投稿しました。

「STORY of HDG」の第7話まとめ版、Pixivへ投稿しました。
 第7話はサブタイトルが二人なので、表紙画像用にキャラを二人分(瑠菜と佳奈)作らないといけないので~余計に時間が掛かりました。変な縛り作っちゃったかな~(笑)
 デザインは決まってたんだから、Poserフィギュアを先に作っとけば良かったんだけどね。まぁ、他の作業との兼ね合いとか何とか。

 

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 第8話は現在、5回分目を打ち込み中。
 コレがいつ上がるのかは、私にも分かりませ~ん。

 

「第7話・瑠菜 ルーカスと古寺 佳奈」/「motokami_C」の小説 [pixiv] https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8205282

STORY of HDG(第7話.15)

第7話・瑠菜 ルーカス(ルナ ルーカス)と古寺 佳奈(コデラ カナ)

**** 7-15 ****


「まぁ、お金の事は単純に時間給って分けでもないから。作業内容次第でって事で、その都度判断でいいんじゃない? 井上さんもあまり堅苦しく考えないで。会社の方は最終的な責任を全部、あなた達に押しつけたりはしないから。」

「はい…では、取り敢えずそう言う事で、いいです。すいません、なんだか我が儘言ってるみたいで。」

 維月は緒美と立花先生へ向かって、軽く頭を下げる。

「いいのよ。ソフト絡みは、わたし達は上級生だけど、専門外だからフォローしてあげられそうにないし。」

 緒美が恐縮気味にそう言うと、立花先生が言葉をつなげる。

「それに関しては、本社のスタッフが必要なフォローを出来るように話は通して置くから。取り敢えず、中間試験期間が明けたら、一ヶ月ほど本社の開発から人が来る予定だから、先ずはその人達からレクチャーを受けて貰う事になるかしらね。あぁ、それまでに、必要な機材の手配とかも、しておかないといけないわね…。」

「ともあれ、協力してくれる人が見つかって良かったわ。今日は日曜日なのに、来て貰ってありがとう、城ノ内さん、井上さん。今日の所は、これで終わりってことで。また、詳しい事は試験期間が終わってからにしましょう。明日からは部活も休止期間になるし。」

 と、緒美がここで切り上げようとすると、樹里が言葉を返した。

「あの、佳奈ちゃん達は今日、何時頃までの予定ですか?」

「あぁ~、試験期間前だし、四時頃には切り上げる積もりだけど?」

 樹里の問い掛けに答えたのは、恵である。

「わたしはこの後、特に用事もないので。佳奈ちゃん達を待ってる間、その…仕様書とか、差し支えなかったら見せていただけないかと。」

「あぁ、それなら、わたしも。瑠菜さんから話には聞いていて、ちょっと興味有ったんです。」

 維月も樹里に同調して、そう申し出るのだった。それを聞いて、緒美が視線を立花先生へと向けると、立花先生は静かに頷いた。
 緒美は黙って席を立つと、仕様書を保管してある書庫の前へと移動し、中から二冊の仕様書ファイルを取り出した。二冊の内一方は、立花先生が使用している、付箋等が貼り付けられた物である。

「どうぞ。このファイルは持ち出し禁止だから、ここで読んでね。」

 長机の上に二冊のファイルを並べ、緒美は樹里と維月の方へと押し出す。

「なるほど、これですか。」

「確かに、瑠菜さんの言ってた通り、凄いボリューム。」

 樹里と維月は口々に感想を漏らすのだった。

「それは全体の仕様書だから、制御関連の記述は少ないと思うけど。」

「いえ、制御する対処がどういう物か分かってないと、どう制御していいか分からないじゃないですか。だから、一通り理解はしておかないと。」

 そう言いながら、早速、樹里は仕様書の頁(ページ)をめくり出す。それは、維月も同様だった。

「開発の方に、ソフトの設計仕様書が有るはずだから、今度、そっちも送って貰えるよう、手配しておくわ。」

「それはそれで、お願いします、先生。」

 立花先生の提案に、樹里は仕様書の記述を目で追いながら答えた。その時、ふと、維月が顔を上げ、立花先生に問い掛けた。

「そう言えば、さっき、試験明けたら一ヶ月ほどっておっしゃってましたけど…そうすると、日程は夏休みに食い込む予定ですか?」

 その問いには、元の席に戻り、座り直した緒美が答える。

「あぁ、うん。七月いっぱいは今度搬入される LMF のテストになると思うの。八月の最終週にもテストの予定が入ってるから、休めるのは八月中の三週だけになっちゃうけど、あなた達は帰省の予定とか、大丈夫かしら?」

 今度は樹里も仕様書から顔を上げ、言った。

「帰省の予定は未だ決めてなかったんですけど。寧ろ、夏休み中、寮に残ってても大丈夫なんですか?」

「寮の方には、予定を出しておけば大丈夫よ。毎年、部活の都合とか、なんだかんだで半数ぐらいの人が寮に残ってるみたいだし。去年は、わたし達もお盆の前後二週間ほど帰省しただけで、あとは毎日部活やってたものね。」

 さらりと、そう答える恵に対して、維月が思わず突っ込みを入れる。

「夏休み、潰れるのが前提なんですか?」

「そこは御相談、って事よ。夏休みをフルに休みたいって向きなら、本社の応援とか相応の手当を考えないといけないから、遠慮しないで言ってね。別に、夏止み中の活動を無理強いする気はないから、ご実家とも相談しておいて。中間試験が終わったら、なるべく早く予定を出して貰えると、助かるわ。」

 半分冗談で言った事に、立花先生からは極めて真面目に回答をされ、恐縮する維月だった。

「先生、今のは維月さんの冗談ですから。」

 と、雰囲気を察した樹里が、フォローを入れる。

「あら、そう? でも、先輩も学校も会社も、休み無しで働け!とは言わないし、そうならないように監督や調整するのがわたしの役目だから。休暇返上でも時間外作業でも、必要であるならやって貰って構わないけど、それが過ぎるようなら止めるわよ、覚えておいてね。」

 立花先生は優しげな笑顔で、そう言い、結んだ。


 こうして兵器開発部に瑠菜と佳奈が参加し、それに樹里と維月が合流する事になったのである。
 この後、前期中間試験が終わり二週間ほど経って、LMF が天神ヶ﨑高校へ搬入され、それに Ruby が搭載される事となる。その作業に先駆けて、本社開発部から Ruby と LMF それぞれのソフト担当者が派遣され、LMF のオペレーションや Ruby の搭載作業などについて、樹里と維月に対してレクチャーが行われた。
 当初は自信なさげな発言をしていた樹里だったが、維月も含めて二人ともオペレーションに限れば実務には支障ない能力を認められ、必要に応じて本社からフォローを受けられる条件で、一年生でありながら樹里が天神ヶ﨑高校兵器開発部側のソフト担当責任者に確定する。維月は当初の希望通り、樹里のアシスタントと言う事で、正式な入部は見送られたのだった。


 一方、直美から CAD の講習を受けていた瑠菜と佳奈であるが。CAD の操作に関しては直美の指導により、ほぼ習得したものの、製図については授業よりも先行して学んでいる事もあり、急激な上達は難しい状況だった。教えている直美自身も学生であり経験豊富というわけでもなかったので、指導には難渋する場面も多分に見られたのだった。
 加えて、夏休み中には緒美と直美の二人が『自家用航空操縦士免許』を取得するため、三週間の合宿講習に出掛ける事が決まっており、留守を預かる恵一人では二人の CAD 製図を指導するのは難しい、と言う局面が訪れたのだった。と言うのも、恵は緒美や直美に比べて、CAD 製図があまり得意ではなかったのである。
 因みに、何故『自家用航空機操縦士』の資格が必要となるのか、についてなのだが。HDG の飛行能力付与は当初から存在した計画なのだが、その能力試験の実施にはチェイス機による飛行状況の確認や、事故が起きた際の迅速な対応が不可欠だと、本社側が指摘した事に『自家用航空機操縦士』資格取得の案件は端を発する。飛行試験の都度、『飛行機部』に協力を求める、と言う方法も考えられたのだが、機材は『飛行機部』から借用するにしても、操縦は『兵器開発部』自前でも出来るようになっておいた方がいいだろうと言う事で、夏休みの時点で免許取得の条件として法令に定められた「十七歳」に達している緒美と直美が操縦要員として選ばれた、と言うのが、まぁ、大まかな経緯である。
 そのような事情で上級生二人が不在となる上、折から提出される図面に不備が散見されていた事もあり、それを見かねた実松課長と、現役時代から実松課長とは昵懇(じっこん)であった前園先生が、瑠菜と佳奈に対する二週間に渡る CAD 製図特訓の講師を務める事になる。


 こうして『兵器開発部』の人員が補強された事により、緒美のアイデアや仕様書の内容が次々と図面化されて、本社へ届けられるようになったのである。それに呼応するような本社技術陣の努力と労力を得て、HDG の開発と試作機製作は進展を続け、年が明けて二月の末、遂に HDG-A01 試作機が天神ヶ﨑高校へと搬入される事となるのだった。
 しかし、試作機が搬入されて以降、緒美達は HDG-A01 のテスト・ドライバー担当者の人選と、ディフェンス・フィールド・ジェネレーターのデザインについて頭を悩ませ続ける事になる訳なのだが、そのれら課題の解決には、茜が入学してくる四月を待たねばならなかったのは、既に語られた通りである。



- 第7話・了 -


STORY of HDG(第7話.14)

第7話・瑠菜 ルーカス(ルナ ルーカス)と古寺 佳奈(コデラ カナ)

**** 7-14 ****


「確かに、麻里…姉さんは、天野重工の開発部に勤めてますけど。お仕事の内容までは知らないので…そう言えば、ここ数年、ろくに実家にも帰ってきてなかったんですけど。 そう言うお仕事、してたんですね。」

 維月はそう所感を漏らすと、軽く息を吐いた。

「聞いた話だと、Ruby の開発は天野重工と三ツ橋電機、JED の三社協力でハードの設計をやって、ソフトの方は三社独自に味付けをやってるらしいんだけど。三社とも進捗状況とか詳細は社外秘って協定で進めてる案件だそうだから、まぁ、ご家族が知らなくても不思議はないと言うか、寧ろ知ってたら大問題って言うか。発注元は政府らしいから、ある意味、国家機密級のプロジェクトらしいのよね。」

「そんな物騒な物が、どうして学校(ここ)に有ったりするんですか?」

 立花先生の発言に、真っ先に反応したのは直美である。

「噂だけど、他の二社はソフトの開発の方が、あまり思わしくないらしいのよ。あなた達に Ruby の教育を手伝ってもらうってのは、天野重工(うち)独自のアプローチだけど、その発案者は井上主任らしいわ。あと、こんな所に、国家機密級の開発物件があるとは誰も思わないだろう、って言う目論見も有るらしいけど。まぁ、本当の所は、重役以上の人しか知らないだろうし、怖くて誰も本当の事なんて聞けないわ。」

「そこまで聞くと、その井上主任って相当に凄い人みたいですけど…井上さんのお姉さんって事は、そこそこ若い人なんじゃ?」

 恵は直美とは違う視点で立花先生に問い掛けるが、それには回答したのは維月だった。

「あ、うちは五人姉妹でわたしが一番下で、その麻里姉(ねえ)が長女なんです。歳はわたしとは一回り以上離れてますから。」

「と言うことは、大体、先生と同年代?ですか。」

 維月の説明を聞いて、緒美が立花先生に問い掛ける。

「年齢的にはわたしより一つ下だって。学年で言えば、同じらしいけど。」

「麻里姉(ねえ)は二月生まれなので。」

「あれ、それじゃ先生と入社は同期なんじゃ…。」

 直美の素直な疑問に、立花先生は苦笑いをしつつ答えた。

「わたしは一般大学卒だけど、井上主任はあなた達の先輩。天神ヶ﨑(ここ)の OG だから、会社的にはわたしの四年先輩なのよ。天神ヶ﨑(ここ)の特課の卒業生は、年下の先輩に…あなた達の側から言えば、年上の後輩や部下が出来る可能性が他社(よそ)よりも高いから、まぁ、楽しみにと言うか、覚悟しておきなさい。」

 立花先生の眼鏡をクイッと上げる仕草に、二年生一同が引き気味の雰囲気が漂う中、樹里が普通のトーンで立花先生に問い掛ける。

Ruby って可成り高機能は汎用 AI のようですけど、そもそも、政府は何のために Ruby を開発してるんですか?」

「それこそ、機密中の機密なんでしょ? 少なくとも、わたしは知らないし、Ruby 自身も知らないでしょ。ねぇ、Ruby。」

「ハイ。最終的な目的はわたしも聞いていません。当面の仕事は、ここのセキュリティ管理と、近々納入される LMF に搭載されて、その機体管理を行う事です。」

「わたしは、大体見当がつくけどね、政府の考えている事。」

 緒美は吐き捨てるようにそう言うと、静かに息を吐いた。

「緒美ちゃん、その見当って言うのが当たっているにせよ外れてるにせよ、どっちにしても誰にも言っちゃダメよ。」

「分かってます。それ程、迂闊(うかつ)じゃありません。」

 緒美の返答は静かだったが、それであるが故に、怒りのような、嘆きのようなニュアンスが、その場の全員に伝わった。無感情な素振(そぶり)をする事はあっても、緒美はあからさまに不機嫌な態度をとる事は滅多になかっただけに、緒美のその発言は、その場の雰囲気を重苦しくさせていた。
 自分の傍で立ったまま様子を見ていた瑠菜と佳奈の所在無さ気な様子に気がついて、直美は席を立ち、二人に声を掛けた。

「じゃ、わたし達は CAD 講習、今日の分を始めようか。」

 三人は隣の CAD 室へと向かうが、その場を離れる際に、佳奈が樹里に向かっていつもの調子で言うのだった。

「じゃぁ、樹里リン。また、あとでね~。」

「あ、うん。」

 二人は、互いに胸の前で小さく手を振り合う。
 直美達三人が部室を出るのを見送って、恵は微笑んで言った。

「古寺さんのマイペース振りは、貴重ね。」

「はい。中学の時から、なんて言うか…救われるような気持ちになる時があります。一緒にいると。」

 再び笑顔になり、緒美が口を開く。

「変な雰囲気にしちゃって、ごめんなさいね。 さて、二人とも細々(こまごま)と説明しなくても、もう随分と理解してくれてる雰囲気だから聞くけど。入部して、わたし達の活動に協力していただけるかしら?」

 緒美の問い掛けに最初に答えたのは樹里だった。

「正直言うと、兵器とかの開発に興味はないんですけど。わたしは将来的には Ruby のような汎用 AI の開発に参加したいって思ってたので、そう言った意味で、Ruby には凄く興味があります。ただ、それだけ高度なものに自分がついて行けるかどうか、それはちょっと分かりませんし、自信もありませんけど。」

「メカの方だって、実質的には本社の大人が設計してるの、わたし達はアイデアの取り纏めをやってるだけと言っても良いくらいだから、その辺りは心配しないで。」

「そう言う事でしたら、やってみたいと思います。」

「そう、よかったわ。井上さんはどうかしら?」

 樹里の協力を取り付けた緒美は、続いて維月に問い掛けるのだったが、当の維月はと言うと、何だか浮かない表情で黙っていた。
 そして、少し間を置いて、維月が口を開いた。

「申し訳ありませんが…少し考えさせてください。」

「どうして?…って聞いてもいいかしら?」

「はぁ…身内が絡んでいるとなると…わたしは、あまり関わらない方が良いような気がして。もしもですけど、麻里姉(ねえ)に迷惑が掛かったりすると嫌ですし…只、樹里さん一人だと作業的に大変になりそうでもあるので、入部はしないけど樹里さんのアシスタント程度で良ければ関わらせてください。勿論、秘密保持については入学時の誓約通り守りますから。」

「身内の事とは線を引いておきたい、と…分かるような、分からないようなだけど、うちの活動に参加すると、バイト料的な話もあるんだけど?」

「いいです、お金とか。それ貰っちゃったら、それこそ線引きになりませんからっ。」

「どうしましょう?先生。」

 緒美は判断に困って、立花先生へ水を向けてみる。

 

- to be continued …-

 

※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。
※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。